【第3部】社会保険適用拡大への対策
はじめに
第1部で解説した全東信の破綻を受け、企業の資金繰り支援に対する「安全性」への要求が高まっています。その中で、カード会社を活用した決済ソリューションとして普及しているのが、BPSP(Business Payment Solution Provider:請求書カード払い)です。
BPSPは、買い手企業(バイヤー)が請求をクレジットカードで支払い、BPSP事業者が売り手企業(サプライヤー)へ現金で振り込むことで、支払いを数ヶ月先延ばしにする仕組みです。
第2部では、このBPSPの概要と市場規模や今後のマーケット予測などについて解説します。
BPSP(Business Payment Service Provider)の仕組み
BPSPとは、企業間(BtoB)取引において、買い手企業(バイヤー)の支払をクレジットカードで決済し、BPSP事業者が売り手企業(サプライヤー)へ銀行振込で立替払いを行う仕組みです。これによって、売り手企業(サプライヤー)は期日通り(または早期)に現金を受け取れる一方、買い手企業(バイヤー)はカードの引き落とし日まで支払いを先延ばしにすることができます。
BPSPの現在の市場規模と成長の背景
国内のBtoB決済市場(約1,000兆円規模)におけるキャッシュレス化・デジタル化は、BtoC市場に比べて遅れていました。しかし、近年の法律や制度改正により、市場環境は大きく変わりました。
民間企業の調査によると、スモールビジネスにおける資金繰り改善と業務効率化ニーズを背景に、2024年度の国内請求書カード払い(BPSP)の市場規模は約1,100億円に到達しました。さらに2026年度予測では市場規模約6,900億円と、急成長を遂げる見込みです。
この背景には、以下の3つの要因が考えられます。
1.インボイス制度および電子帳簿保存法
請求管理・経費精算のSaaS導入が進み、システム連携が容易になったこと
2.政府主導による「紙手形・小切手」の2026年度全面廃止方針
従来の手形決済を見直すタイミングと、早期資金化ニーズが企業側にマッチしたこと
3.サプライヤー(売り手)側のメリット
自社がカード加盟店にならなくとも、手数料を支払うことなく売掛金を早期に回収できること
ここで、BPSPの概要や留意点などを表にまとめます。水準はあくまで目安です。
| 項目 | 一般的な水準や条件 | 経営への影響や留意点 |
|---|---|---|
| 決済手数料率 | 3.0% 〜 6.0% 程度 | 手数料は買い手側が全額負担。低価格化が進む一方、恒常的に利用すると年間コストは増加 |
| 支払い延長期間 | 約30〜60日間 | キャッシュアウト(現金の流出)を先延ばしできるため、キャッシュフロー維持には有効 |
| 法人カード枠への影響 | カード利用限度額の設定 | 高額なBtoB決済が重なると、他の設備投資や広告費枠に影響 |
今後のマーケット規模予測
今後のBPSP市場は、さらに右肩上がりの拡大が予想されています。
クレジットカード市場全体の拡大に伴い、法人カードを活用したBtoB決済の割合も大幅に増加。2028年度には、BPSP市場単体で1兆円の大台を突破することが予測されています。
また、2030年までに国内BtoB決済全体のデジタル化・キャッシュレス比率は68%を超えるとみられており、BPSPは「一時的な資金調達」ではなく、企業の標準的な「支払いインフラ」として定着する可能性があります。
まとめ
BPSP市場は、全東信のような「独自のクローズドな立替スキーム」とは異なり、クレジットカードブランド会社のシステムの一部を活用する決済インフラとして成長しています。市場規模の拡大は、それが多くの金融機関や企業から、「健全なインフラ」として認められている証拠でもあります。
第3部では、全東信の財務リスクとBPSPの仕組みの違いを解説します。



