【第3部】社会保険適用拡大への対策
はじめに
近年、売掛金の早期回収や支払いの先延ばしを可能にする金融サービスが次々と登場し、企業の資金調達や決済の選択肢は広がりました。
しかし、その便利なインフラの裏側には、リスクが隠されています。
今回は、企業が事業を行うにおいてベースとなる「決済業務」にスポットを当て、4部構成でコラムを掲載します。第1部では、最近起きた国内外の破綻事例を見ていきます。
全東信の破綻(2026年7月)と明らかになった実態
2026年7月、早期決済代行大手の株式会社全東信が、大阪地裁から破産手続き開始決定を受けました。東京商工リサーチおよびロイター通信の報道等によると、負債総額は申請時で約1,151億円(帝国データバンク当初発表の2025年3月期末ベースでは約1,259億円)に上り、2026年において国内最大規模の倒産となりました。
東京商工リサーチの調査等によると、同社は少なくとも20年前から粉飾を行っていたことが判明しました。実態は約605億円の債務超過であり、無価値のグループ会社を承継する際の営業権(のれん)約88億円の過大計上や、加盟店への未払い立替精算金約217億円の簿外隠蔽をしていた様子です。
この影響は、加盟店約2万店、融資を行っていた金融機関は63機関に及びました。全東信が飲食店等に入金できずに焦げ付かせた売上金は総額約53億円に上り、1店舗あたり平均約27万円の未収金(破産債権)が発生しました。
今回の倒産は、不透明な早期立替払いビジネスがはらむリスクを世に知らしめました。
英国グリーンシル・キャピタル破綻との共通点
今回の破綻は、2021年に英国で発生した金融サービス会社「グリーンシル・キャピタル(Greensill Capital)」の破綻と似ています。
グリーンシルは、従来のファクタリング業務に加え、支払企業の買掛債務を、割引して支払期日よりも前にサプライヤー(受取企業)に資金を供給する「リバースファクタリング(サプライチェーンファイナンス)」により急成長しました。グリーンシルは、定期的に債券を発行し、クレディ・スイスなどのファンドが購入することで資金を調達。更に、将来発生するかもしれない「見込みの売掛金」までも債権化して過度な資金調達を行うという、ハイリスクな取引に手を染めました。
結果として、顧客の経営悪化と、金融商品の裏付けとなる損害保険の更新拒絶が重なり、スキームは崩壊。多額の資金がショートして破綻へと追い込まれました。
この事件はクレディ・スイスの経営危機の一因となるなど、世界の金融インフラに大きな影響を与えました。
まとめ
全東信とグリーンシル・キャピタルの事例に共通するのは、「早期現金化を提供する業者が、自社の信用(融資や独自スキーム)だけでリスクを抱え込んでいる場合、その業者のスキームが破綻した瞬間にシステム全体が崩壊する」という点です。
企業が日々のキャッシュフローを安定させるためには、単に「早くお金が手に入るから」という理由だけで決済代行会社を選ぶのではなく、その資金の出所や仕組みが合理的であるかを見極める必要があります。
第2部では、新しい金融インフラとして成長している「BPSP」について詳しく見ていきます。



