セレンの効果
セレンは体内で合成できない必須微量元素ですが、ふだんはあまり意識しない栄養素です。しかし食事の偏りや基礎疾患のある方には不足しやすく、重篤な欠乏症を発症することもあるので注意が必要です。
血清セレン値が低下しやすい方
慢性腎臓病・透析患者さん
静脈栄養・経腸栄養剤・治療乳等を使用している患者さん
拡張型心筋症
C型慢性肝炎・肝硬変
セレンの役割
セレンは食事摂取によりヒトの体内に取り込まれ、動物性からはセレノシステイン、植物性からセレノメチオニンとしてたんぱく質から摂取されます。セレンはヒトの体内で多くはアミノ酸成分として25 種類ものたんぱく質に含有され、強力な抗酸化酵素(グルタチオンペルオキシダーゼ)、甲状腺ホルモンであるチロキシン(T3)をトリヨードサイロニン(T3)に変換する酵素(ヨードチロニン脱ヨウ素化酵素)、DNA 合成に関与する酵素(チオレドキシン還元酵素)などとして重要な役割を担っているのです。そのため不足すると様ざまな欠乏症を発症します。
欠乏症状
爪の白色化
皮膚炎
皮膚の乾燥と薄片化
脱毛
心筋症
不整脈
筋肉痛
筋力低下
歩行障害
大球性貧血
甲状腺ホルモンT₃ 低値
などの症状が出現し、長期的には動脈硬化、発癌、免疫力低下の原因になるのです。
透析中の方で、鉄や亜鉛は十分なのにエリスロポエチン製剤が反応しにくい(ESA抵抗性)貧血のある場合はセレンを確認してみましょう。
透析患者におけるセレン欠乏症の臨床的意義
日本透析医学会雑誌 (1340-3451)54巻5号 Page191-201(2021.05)