腸内細菌と病気
腸内細菌叢のバランスが崩れて異常な状態(dysbiosis)が持続すると、腸内恒常性が破綻し様々な病態の形成・増悪に関わると考えられています。
近年では消化管疾患だけではなくメタボリック症候群、自己免疫性疾患、神経変性疾患などと腸内細菌との関連性も指摘されており、また腸内細菌の機能性の研究から、腸内細菌がパーキンソン病、アルツハイマー病、肥満、2型糖尿病およびアテローム性動脈硬化症など加齢に関連した疾患を改善する可能性があると考えられています。とくに高齢者では、腸内細菌を標的とした食事療法やプロバイオティクスの摂取が健康や抗老化に有利な影響を及ぼすことが期待されています。
腸内細菌の経過
Actinobacteria門が離乳後から有意に減少し、その後にBacteroidetes門の減少、Firmicutes門の増加と多様性の増加が20歳まで起こります。その後は70歳を境にActinobacteria門の減少とProteo-bacteria門の増加を特徴とした老齢タイプの腸内細菌叢に変化していきます。腸内細菌叢は年齢とともに変わっていくのです。
加齢の影響
年齢に伴う生理機能の低下は、長期間にわたる免疫系の刺激により免疫老化を引き起こし、免疫力の低下から軽度の慢性炎症状態になり、細菌性胃腸炎やアテローム性動脈硬化症、癌、メタボリック症候群、2型糖尿病、神経変性疾患などの非消化器疾患を含む多くの加齢関連疾患に発展すると考えられています。そこで加齢関連疾患の原因となる慢性炎症を抑制することが疾患改善や予防になると考えられています。プロバイオティクスなどは炎症応答を低下させ、適応免疫応答を改善し、免疫老化を防ぐことができると期待されているのです。
またマウスの実験では、プロバイオティクス摂取により結腸の慢性的な軽度炎症を抑制することでマウスの寿命を延ばすことができたという報告もあります。
腸内細菌叢を改善することは様々な病気を予防、改善する効果があります。プロバイオティクス(腸で良い働きをしてくれる細菌や酵母 ヨーグルトや甘酒、乳酸菌飲料、ぬか漬け、味噌、キムチ、納豆など)の摂取を心がけましょう。
【老化のバイオロジー】腸内細菌と健康長寿(解説/特集)
Geriatric Medicine (0387-1088)57巻8号 Page759-763(2019.08)