食欲とホルモン
人工甘味料はダイエット目的で幅広く使われており、また人工甘味料を砂糖の代替品として使用することで摂取エネルギーの節減や摂取後の血糖値の上昇を抑制する効果が期待されています。米国糖尿病学会と米国心臓病学会の共同声明では、砂糖の代わりに人工甘味料を使用することで肥満・糖尿病の予防や治療に有用な可能性が指摘されています。
人工甘味料は単独で摂取しても血糖値は上昇せず、インスリン値にも影響を与えないことが確認されています。一方で、疫学研究においてはダイエット清涼飲料水が糖尿病リスクを高める可能性が報告されています。ダイエット清涼飲料水を週に1カップ(237mL)以上飲む者は、飲む習慣のない者と比べて糖尿病発症の危険が1.7倍高かったという報告もあります。海外でもダイエット清涼飲料水が糖尿病発症リスクを高める可能性が報告されていますが、一方で両者に関係はないという報告もあります。これは糖尿病リスクの高い肥満者がダイエット清涼飲料水を好んで摂取している可能性もあるので、結果の解釈には注意が必要となります。
しかし、近年では人工甘味料が糖代謝へ悪影響を及ぼすという、さまざまな報告があるのです。
人工甘味料が肥満や糖尿病と関連する理由
・人工甘味料を利用している、摂取エネルギーを節減できる、といった安心感から余分に食べ過ぎてしまう
・人工甘味料は摂取しても甘味の後に血糖値が上昇しないため、エネルギーの恒常性が崩れて摂食行動が促進され、むしろ太りやすくなる
・人工甘味料の強い甘味に慣れると甘味に対する感覚が鈍くなり、より甘い糖質を多く摂取することになる
・味覚を感じる細胞は舌だけでなく、全身のさまざまな臓器に存在することも明らかになっており、たとえば腸管で甘味を感じると腸から分泌される腸管ホルモンがインスリン分泌を促進したり、腸からの糖取り込みが促進されたりすることで糖代謝に影響する
・腸内細菌叢(腸内フローラ)は代謝や炎症反応、免疫機能に影響を与えており多くの慢性疾患と関連することが示唆されており、人工甘味料による腸内細菌叢の変化が糖代謝に影響を与えることが報告されています。動物性脂肪や人工甘味料の過剰摂取が太りやすい体質に関わる腸内細菌のグループの割合を増やし、ますます太りやすくさせる悪循環を形成している
人工甘味料はダイエット目的に利用されていますが、逆に太る可能性もあるようです。摂取するときは注意しましょう。
人工甘味料と糖代謝の関連
櫻井 勝(金沢医科大学 医学部衛生学)
臨床栄養 (0485-1412)135巻5号 Page596-597(2019.10)
代謝・栄養 肥満を科学し,臨床に活かす
益崎 裕章, 小塚 智沙代, 島袋 充生
内科 (0022-1961)116巻6号 Page1198-1202(2015.12)