加齢と腸内細菌
腸内細菌は消化管だけではなく、中枢性の脳疾患、パーキンソン病、動脈硬化、心臓病などと関わりがあることがわかってきました。
腸内細菌をよくするには
動物性脂肪の制限
単糖類(ブドウ糖 果糖など)の制限
塩分の制限
食物繊維の補充
高脂肪な肉中心の食事をし、砂糖が多くはいった甘いものを食べ、塩分が過剰な食生活で腸内細菌をよくすることは無理なのです。現代のファーストフードに代表されるような食事では腸内細菌は悪化の一途をたどるでしょう。
腸内細菌と大腸がん
食べ物で大腸がんのリスクとして最も悪いのはソーセージのような加工肉とダイエット飲料です。逆に、根菜類や特にブロッコリーを含む野菜類がリスクを下げているということもわかってきています。ビロフィラ菌などの硫酸還元菌と加工肉との間で、何らかの反応が起きて遺伝子を損傷する硫化水素ができてくる、ことが原因といわれています。大腸がんは女性のがんによる死亡数の第1位となっており、注意が必要です。
腸内細菌と免疫
消化管の粘膜免疫には粘液中に多量に分泌される分泌型IgAが重要です。腸内細菌は発酵反応により多彩な短鎖脂肪酸を生成して宿主の免疫応答に影響していますが、なかでも酪酸はB細胞に作用してIgA分泌を亢進させることが明らかになっています。腸内細菌は免疫にも大きく影響しているのです。
腸内細菌とタンパク質
パプアニューギニアの人はサツマイモなどを食べ、タンパク質はあまり摂取していませんが身体は筋肉質です。腸内細菌叢解析の結果、土壌菌のような菌を腸内細菌として持ち、窒素を固定する菌を持っているためサツマイモからアミノ酸をつくっているということが発見されました。腸内細菌によっては、タンパク質の摂取を植物由来に移行できる可能性があるのです。
腸内細菌は消化管のみならず、さまざまな影響を全身に及ぼしています。それは日々の食生活により大きな影響を受けるのです。
今、内科医に知って欲しい腸内フローラの新常識(解説)
内藤 裕二(京都府立医科大学 大学院医学研究科生体免疫栄養学講座)
大阪府内科医会会誌 (1881-669X)30巻2号 Page110-116(2021.12)