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「発達障害」という診断を受けた少年の苦労

須田泰司

須田泰司

テーマ:人間関係

発達障害という診断を受けた中学生がいます。
特別支援学級という学級に所属し、専属の先生の基いろいろな学習を個別的に習っていきます。
その中で交流学級という名称で、一般に通ってきている同級生と授業を共にする時間があります。
中には、自分だけ特別ではなくみんなと同じように学校生活を送りたいという思いを子どもが主張し、保護者も同じ思いを持っていることは少なくありません。
みんなと同じように学ばせたいという思いは教師の方にあっても、しかしみんなと同じに過ごすにはスピード・リズムがずれることも否めなく集団行動が難しく悩ましい事態になることもありますし別々に学ぶことを説得されることもよくあります。
今回の彼もそうです。
表裏なく真面目に受け取った出来事をからかわれ悔しい苦い思いをしてきた経験から、できるだけ自分を制御して人とトラブルを起こさないように意識して日々を過ごしていても、同じ中学生ですから他の中学生も虫の居所が悪いことがあったりしてついちょっかいをかけられ、偶発的にトラブルになってしまうこともあります。
そんな時、彼の行動の方が表面的には目立ち注意の矛先は彼になってしまいやり玉にあがってしまいます。
親に連れられ、相手に土下座をしてまで謝ったことも数回あります。
流れの深層は、見る角度で、解釈する人間の価値観で違ってきます。
「○○くんが叩いた」「でも△△くんが先に嫌なことを言った、何度も言わないでと言ったのに!」「でも手を出したのは○○くんだ」「そうだ、そうだ○○くんが悪い!」。
この年代なら日常茶飯事で、こんなことをしながら加減や人の感じ方などを覚えていくのだろうと思います。
これをたわいのないこと、ほっておけばいいといったら、大きな批判が返ってくる現代かもしれません。
その彼がセンターの門をたたき、NPO法人「京口スコラ」に学校に行きながら通ってくるようになりました。
スコラでは、彼のスピード・リズム、興味の窓口に照準を合わせ、幅のある年齢層の人間関係の中に入って活動を重ねるうちに、次第に自分の信頼できる人がいる所、安心して活動できる場所として、今では大きな基地のひとつになっていきました。
高校年齢になったら家を出て、スコラを基点に生活していくんだと思うようにもなっています。
その大きな要因のひとつに、彼に関心を持ち、いろいろ世話や遊びや新しいことを一緒にする少し年上の兄ちゃん・姉ちゃん的な存在があります。
気に入られようと、来所したら一目散にスタッフや仲間を見つけ出そうとするし、見つけてもらおうと存在をアピールしたりてんやわんやです。
邪気がないから可愛がられます。
こんなエピソードがありました、皆が持っているスマホがうらやましくもあり、とある日、鼻の穴を膨らませて得意げな顔でカバンからおもむろに取り出したのは“受話器”。
おー!とみながスマホかと見ると、とたんに大爆笑!
なんと家の固定電話機の子機を持って来ている。しかも懸命にボタンをプッシュして兄ちゃん・姉ちゃんにかけようとするが、かからないことに???が彼の頭を飛び交う。
なんと健気に、懸命に好奇心いっぱいに生きていることか。
こんなことをしながらコミュニケーションの知恵を拡げていくのでしょう。
これからも彼の歴史にはいろんな体験・体感が思い出として刻まれていくのだろう。

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須田泰司
専門家

須田泰司(スクールカウンセラー)

京口カウンセリングセンター

各年代でおこるさまざまな、こころを中心とした悩みに、じっくり耳を傾け、具体的に対応していく機能を備えています。専門的な人材を配し、利用者の状態を客観的に把握し、見立て・方針を具体的に提案します。

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