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小学5年からクラスメートとうまく関係がとれなくなって、学校に行けなくなった少女

2018年10月30日

テーマ:不登校

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

小学5年からクラスメートとうまく関係がとれなくなって、学校に行けなくなった少女。

最初は両親といろんな相談機関を回ったけれど、めぼしい対策はなく、家で過ごすことが中心になってしまいました。
家では絵をかいたり、パソコン、ゲームをしたりして1日を過ごしていましたが当然生活のリズムは不規則になってきて、両親も途方に暮れる毎日を、中学3年まで続けていました。
そんな中、少女はなんとかしたい思いは消えていなかったので、ネットでたまたま私の働いている所のホームページにたどり着いたようです。
県外に住んでいたので、通ってくるには車で4時間かかります。
ひとりで来るのは距離もそうですけど、不特定多数の人に出会うのが怖くて車で、ということになります。
往復8時間ですから、行きかえりにトイレに行きたくなっても、パーキングで降りられなく苦労したこともありました。
それでも、最初の出会いが良かったのか、ほぼ毎週通ってくれるようになりました。
出会ってから現在まで7年になり、今では目標をもって元気で大学に通っています。

一人っ子特有の世界観を持ってわがままなところは多少ありますが、大人に反発することはなく、基本は明るく、陽気で素直な、それでいてこうだと思えば突っ走ってしまう、よくいえば芯をしっかりしている面を持っている娘だなというのが、関わっていくうちに感じられるようになっていきました。
ただそれが、思春期を迎えてくると、大勢の中では自分のペースを保つのは難しくなってきます。
友達との関係、親との関係、大人との関係、自分の目的、したいこととしなければならないことなど、考えなければいけないこと、行動しなければ何も始まらないことなどがこころの中に渦巻いて、自分自身が何を考えてどうしていけばだんだんとわからなくなってひとりの世界に入り込んでいったようです。
それら、からまったことをひとつひとつ、ゆっくりゆっくり対話を通して、話したり聞いたり、できることから行動していくことを始めていきました。

まずは、身体の元気さを取り戻すことです。
身体的な病気はないにしても、考えていることが多いということは、当然何かをすることは先送りになります。
そうなると身体もこころも疲れますし、ストレスも溜まってきて、気持ち(感情)のコントロールがうまくいかなくなるのは、子どもも大人も変わりません。
入力したものは出力しなければなりません。
ためる一方(入力)で、消化もせず、発散もせず、置いておくとすっきりはしませんし、気持ち悪い感覚が常につきまといます。
睡眠・食に置き換えたら少しはわかりやすいかもしれません。
こころと身体はとても近い関係にあります。
眠くなってぐっすり寝れば元気な感覚を持ってすっきり起きられます。
お腹がすいて食事を楽しんで美味しく食べれば、身体は喜んで消化もするし、必要な栄養を身体に送り込んで、それ以外は排泄します。
そういう感覚の時は、こころも脳もすっきりとさえます。
希望らしきものが湧いてきて、何かしてもいいかな、なにかしたいなという気分になっていきやすいものです。

そういう考えを彼女に説明し、まず自分の部屋や家の中を中心でいいから、少しでも心地よくなるように居場所の点検や基本の生活リズムの立て直しをしていきました。
知らず知らずのうちに部屋もきれいになっていったようです。
今までは無理やりにマンションから一歩でも出るように強要されていたことが、不思議なことに、マンションから出ると誰かに合うといった恐怖が薄らぎ出られるようになります。
というより、買い物や、本屋や電気さんに行きたいという思いが強くなって、出てみたら意外と平気だったと彼女は言います。

最初は常識につき動かされ、学校は行ってあたりまえ、仕事につくには勉強しなければいけない、遅れたら生きていけなくなるなどといっていた親も、姫路へ彼女を送ってくる長い道中で、彼女のしんどさを感じ取ったり、少しずつの変化や、なにげない会話などをしている中で、親自身も変化していったようです。
大人も言っていることとすることの矛盾はあります。
それに気づいていても、なかなか修正できないのも大人です。

「学校」という場所は違いましたが、彼女はそういった出来事から、身体を動かす(運動)ことを入れたり、これくらいは知っておかないとということで学科の学習を再開したり、姫路で同じような悩みを抱えた仲間と、音楽(バンド)を皮切りに、無邪気な遊びやスポーツ、季節ごとのさまざまなイベントに参加したりする中で、目的が漠然とですが定まり、そのための目標を段階ごとに相談しながら立てて実行し、県外の大学に入りました。

しかし新しい生活に希望を持って一人暮らしに挑んだのですが、少し年上で入学したせいか、友だちができにくく、おまけに学部内容の勘違いで再び行けなくなりアパートから出にくくなりました。
少し間隔のあいていた相談を再開し、私の職場にある若者のための活動場所として日中使用していた空間の一室を彼女の下宿先にして、希望していた内容の学部に挑戦し、入学しました。
まだまだひとりではクリアできなかった課題を見直し、実行できるための仕掛けをいろんな大人の力、仲間の力を借りて、今では「生きているのが楽しい」「明日が面白い」といってその日その日を生きています。
次は先の見通しができる力を養っていくことが課題になっています。

この記事を書いたプロ

須田泰司

日本臨床心理士資格認定協会の認定プロ

須田泰司(京口カウンセリングセンター)

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