第39回ペアレントセミナー「良好な家族関係が未来の幸せを作る」 ありがとう<後編>

長谷川満

長谷川満

テーマ:教育・人権講演会

 前編からお読みになりたい方は→http://mbp-japan.com/hyogo/hasegawa/column/52303/



 6、家族仲良くする
  (許し合う、笑い合う、かたいことは言わない)

 ある所にケンカばかりしている家族がありました。
 夫婦ゲンカ、親子ゲンカ、嫁姑の争い・・
 毎日毎日、気が休まる暇がありませんでした。
 そのことに頭を悩ませていたその家のご主人は、家族仲の良い隣のお家に「家族仲良くするにはどうすればいいのか」を勇気を出して聞きにいかれました。
 すると隣のご主人はこんなふうに言いました。

 「お宅は善人様ばかりだからケンカになるのでしょう。うちは悪人ばかりですからケンカになりません。」

 それを聞いたご主人は最初「なんて嫌みなことを言うのだろう。聞きに来て損をした。」と思われたのですが、そのとき奥の方でパリーンと茶碗が割れるような音がしました。
 すると「大丈夫かえ?怪我はなかったかえ?」とお姑さんの声がしました。
 「おかあさん、すみません。おかあさんのお茶碗を割ってしまいました。」
 「なんのなんの。そんな所に茶碗を置いといたわしが悪いのじゃ。」
 「いえいえ、足下を良く見ていなかった私が悪いのです・・。本当に申し訳ありません。」
 「いや、そんな所に茶碗を置きっぱなしにしておいた儂が悪い。本当にすまなんだ。」
 「いえいえ、私が悪いのです。私がもうちょっと気をつけていれば・・」

 その会話を聞いて、話を聞きに来たご主人は「なんと我が家と違うことか!」と驚かれました。
 自分の家であれば何か失敗があればすぐに相手のせいにして責めるばかりである。
 ところがお隣は「私が悪かった」と自分の悪かった点を認め・・
 私が悪かった・・、私が悪い・・、悪人? 悪人!
 そうか!
 悪人とは「自分が悪かった」と自分の非を素直に認める人のことだったのか。
 そして善人とは「自分は正しい」「自分は間違っていない」と自分の正しさを主張する者のことではないか。
 だから「悪人」ばかりのお隣のお家はケンカにならず、「善人」ばかりの我が家はケンカが絶えないのかと気がつかれたということです。

 おしまい。


 どうでしょう?
 皆さん、このお話をお聞きになられてどんな感想をもたれたでしょうか。
 よく人と争い、いつも不満ばかりを口にしている人の口癖というのがあります。

 「私、間違ってる?」

 「私の言っていることはおかしいですか。おかしくないでしょ。私は正しいですよね。相手が間違っていますよね。」という意味の「私、間違ってる?」です。(みなさん、心当たりがあるのか「ああ、言ってしまってるわ。」という顔をしておられる方が多かったです。)



 ところで我が家、長谷川家には家訓がありまして、ちょっと紹介させていただきます。

 「家では正しいことは言うな。楽しいことを言え。」

 というものなんですが、正しいことというのは人を窮屈にさせます。
 「~すべき」「~しなければいけない」という義務の言葉や、「~してはいけない」という禁止の言葉を言われたら、なんか家でゆっくりできないでしょ。
 そんな家、嫌でしょ。
 だから、長谷川家では正しいことは極力言わないように気をつけるようにしています。
 正しいことって正しいって思ってるから遠慮なく主張しがちだし、そこになんか思いやりとか優しさが抜け落ちがちなんですよね。やっぱり家って「正しい」より「あったかい」方がいいように思います。
 


 今年のお正月に、京都で働いている長女(30)と広島で働いている長男(26)に「この家に生まれてお父さんお母さんに育ててもらってよかったと思うことってある?」と聞いてみたんです。
 すると二人別々の時に聞いたのに、なんと!二人ともがまったく同じ答えでした。

 一つは「家族仲がよかったこと」。
 もう一つは「自由があったこと」。

 ここで皆さんに紹介したい作文があります。


    「お母さん ありがとう」 
                 神奈川県 小学2年生  藤田 真矢 
 
 犬のトレーニングの先生としてがんばっているお母さんは、いつも「かっこいい」と思います。
 お母さんのおしごとを見るのが大好きで、いつも「今日、お手伝いしてくれるかな?」といってくれるのを楽しみにしています。教室でアシスタントをさせてもらえるからです。クッキーを使っておすわりやふせなど、トレーニングのお手つだいです。
 それはワクワクドキドキする、とってもすてきな時間なんです。

 家には二ひき犬がいます。二ひきともほご犬です。
 お母さんが「お友だちをつれてきたよ」と車からおりてきた時、不安そうにシッポを下げていました。でも今では家に帰ると、よろこんで出むかえてくれたり、私にとってかわいい家ぞくです。

 私と弟はようしえんぐみで、生後2週間でお母さんのところに来ました。
 弟が来た時、うれしくて、うれしくて、弟のまわりをぐるぐる回ってとびはねていました。ミルクを作ったり、だっこをしたりするおせわが好きなので「ちいママ」とよばれています。
 私はお母さんの子どもになって、とてもしあわせです。
 毎日、いそがしくはたらいてるお母さんですが、私の話を聞いてくれたり、いろいろな話をしてくれるので楽しいです。
 
 お母さんがつかれている時、弟のめんどうをみたり、犬のおさんぽのお手つだいをしたりします。お手つだいがおわると「ありがとう」と言ってギュッとだきしめてくれます。「お母さん、あったかい」「これからもっともっと、たすけてあげたい」という気持ちでいっぱいになります。

 「お母さんと私」「弟と私」一人一人が大切に思い合って、なかよく、しあわせに、楽しくすごしていけるように毎日おいのりしています。
 私たちのためにがんばっているお母さんにたくさんの「ありがとう」を言いたいです。
 そしてこれからも、いっぱい、いっぱいギュッしてね。

                         (読売新聞より抜粋)


 この子とこのお母さんは血はつながっていないんですね。
 養子縁組でお母さんのところにやって来てくれた子なんです。
 でもこの子はお母さんにいっぱい愛されて、いっぱい抱きしめてもらって、お母さんの愛に包まれて育てられたんですね。
 お母さんの愛がこの子の中で育っていって、今度はこの子が「お母さんの力になりたい」「お母さんを助けてあげたい」と思うようになった。
 この子はこんなふうに言っています。

 「お母さんと私」「弟と私」一人一人が大切に思い合って、なかよく、しあわせに、楽しくすごしていけるように毎日おいのりしています。
 
 こんな純粋で美しいお祈りがあるでしょうか。
 僕はこの作文に書かれてあるのは「愛」だと思うんです。
 愛とは何か?
 それがこの作文を読むと感じられる。
 そんなふうに思います。

 この子はまた作文の中で
 「私はお母さんの子どもになって、とてもしあわせです。」
 と言っています。
 こう言えるこの子も、こう言ってもらえるお母さんも本当に幸せだと思います。
 子育てとは結局、この言葉に集約されるんですね。

 「お母さんの子どもになって幸せです」

 子どもにそう言ってもらえたら、それでその子育ては100点満点です。
 
 私たちは何かしら欠落を抱えています。
 でも愛に出会って、愛に触れた時、私たちのその欠落した部分は愛で満たされるのだと思います。
 そして欠落があったからこそ、愛で満たされたことを知ることが出来るのだと思います。

 今日、皆さんに聞いていただく曲は秦基博さんの「 アイ 」という曲です。

 (歌詞をみてもらいながら曲を聴いていただきました)

 この歌詞の中で歌われている「 アイ 」、これは「愛」という意味でももちろんあるのですが、英語で「私は」という時のアイ( I )も意味しているんですね。だから冒頭の「目に見えないからアイなんて信じない」という歌詞は、愛を知る前は「自分さえ信じられなかったけれど、愛に出会って自分を信じられるようになった」という意味も込められています。
 この「 アイ 」には出アイという意味もあって、人に出会うことによって、愛に出会うことによって人は変わるんだという、そういう色んな意味の「 アイ 」であるわけです。だからカタカナで書かれてあるわけです。

 最後7、子どもの話を聴くのところでも「愛」についてお話ししました。

 「愛」という字は「受」という字の中に「心」があります。
 「話を聴いてくれた」「理解してくれた」「信じてくれた」「待ってくれた」
 そんな受け入れる愛こそが本物の愛であるように思います。


 セミナーの終わりには一人一人それぞれ違う詩をBEGINの「島人ぬ宝」の曲にのせてプレゼントしました。




 
 参加して下さった皆さん、本当にありがとうございました。
 次回はこの「子どもを幸せに育てる親学講座」シリーズの完結編です。
 またお会い出来るのを楽しみにしています。

 (秦基博さんの「 アイ 」が聴ける<後編>完全版はコチラ→http://hasegawa-mitsuru.seesaa.net/article/422460656.html

 次回予告:11月8日(日)午後2時開場、2:20~3:50 加古川総合庁舎1階「かこむ」




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長谷川満
専門家

長谷川満(家庭教師)

家庭教師システム学院

発達障がいや不登校の子の意欲を引き出すには自己肯定感を高める必要があります。その子のありのままを受容し、信頼関係を築き、成功体験と褒め言葉で自信と意欲を引き出します。

長谷川満プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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