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【住宅購入】住宅ローン金利が上昇したら

2023年1月6日 公開 / 2024年2月5日更新

テーマ:金利上昇 住宅ローン

コラムカテゴリ:お金・保険

 2022年3月20日
住宅ローンの金利が上昇したら
                                 竹下昌成

最近、住宅ローン金利上昇のニュースがありました。一般的な対応としては下記の2つ。
1.固定金利へ借り換え
2.月額返済額を減らすタイプの繰り上げ返済
ホントにそれで良いでしょうか?僕は不十分だと考えています。

住宅ローン単体で消極的に考えるとそうなりますが、もう少し大きなスケールで積極的に考えるべきです。そして、一人一人が「自分は世の中がこうなると考えるからこうする」という明確な意図をもって選択をすべきだと思います。

1.住宅ローンのおさらい

 住宅ローンは大きく2種類です。固定金利と変動金利。固定は借入期間中の金利が一定です。代表的な商品はフラット35。変動は借入期間中の金利が変動する可能性があります。代表的な商品は民間金融機関の住宅ローン変動金利。ある一定期間だけ固定金利という固定金利選択型もあります。これは変動金利の一種ですね。
 銀行の事業者への貸出能力・審査能力が弱体化し、貸しやすい住宅ローンは大激戦区になりました。その結果として金利低下競争に陥っています。さすがにもう底なので今度はオマケ競争です。住宅ローンには「団体信用生命保険」、略して「団信」が付帯します。以前は死亡と高度障害のみが対象の保険でしたが、今はガンや3大疾病、8大疾病など幅広くカバーできるものもあります。また、経済力はあっても健康状態だけが基準外の人のために「ワイド団信」という健康引き受け基準の緩い団信も登場しています。どちらも通常の金利に0.1%~0.3%程度の上乗せで選択可能です。

 今回は金利が上昇したらどうするか?という話なので当然に変動金利で利用している場合の対応策を考えることになります。

 

①金利の決まり方

金利は2種類存在します。「基準金利」と「実際の借入金利」(以下、借入金利)です。基準金利から利用者に応じた「優遇幅(キャンペーン金利)」を差し引いたものが借入金利」です。ここ数年でも借入金利はどんどん低下しています。しかし、実は基準金利は変化していません。変わっているのは「優遇幅」です。優遇幅が拡がることによって実借入金利が低くなっているだけです。「優遇幅」のルールについてもう一つ。「優遇幅」は最初が勝負です。借入時の優遇幅が借入期間中ずっと続きます。
例えば、多くの銀行の基準金利は2.475%です。そこから2%優遇して借入金利は0.475%となっているわけです。基準金利が3.475%になれば借入金利も連動して1%上昇し1.475%になります。

②金利変動のルール

本来は、半年毎に金利が変動するルールです。しかし、この金利状況なので動いていません。そして、急激に金利上昇した場合も緩和措置として次の5年間の返済額は上限1.25倍までなどと決まっています。その場合の細かい注意点としては、返済額の上限はあっても元金と利息の割合が変わりますので「返済しても元金があまり減らない」という事態になります。それでも「5年間の猶予期間で体勢を立て直せ」、ってことです。

「おお、それは大変」というわけで、それを回避するために変動金利から固定金利に変更や、毎月の返済額を減らすタイプの繰り上げ返済をアドバイスするのが一般的です。
確かに住宅ローンだけ見ているとそうなりますよね。


2.全体的に考えると

 「住宅ローン金利が上がる=金利が上がる時」ってどんな時でしょうか?
本来であれば景気が良くなっている時です。行き過ぎた景気過熱を抑えるために金利を上げます。金利を上げればカネを借りる人が減って投資が抑えられるのが基本です。「バブルを抑えるために金利を上げるイメージ」が分かりやすいでしょう。そして、景気が良くなれば収入も上がるハズです。それだと住宅ローンの金利が上がって返済額が上昇しても問題ないですね。問題なのは返済額だけ上がって収入が上がらないという日本の現状です。
 収入が上がらないから住宅ローン返済額を抑えるという発想になります。
ちょっと落ち着いてほかのことも考えてみましょう。

①そもそもインフレになるなら借入は残しておくべき

 インフレはモノの値段が上がることですね。逆に言うとお金の価値が下落すること。
50年前に比べて消費者物価指数は4.2倍です。当時1万円で買えたモノが今は4.2万円ということになります。もちろんモノによって違うので一概には言えませんし、さすがに収入もその頃よりは絶対額としては大きくなっています。でも、今は1,000万円で買えるマンションが4,200万円になっているかもしれないということです。
一方、借入はどうでしょう?住宅ローン残高1,000万円だったとしてインフレがすすむと急に2,000万円にはならないですね。そのまま1,000万円でスライドするだけです。
インフレ下では負債は逆に作用するということは覚えておきましょう。

②各種投資は利回りが上がっているハズだからそっちに回せば良い

 住宅ローン金利が上がって返済額が上昇しても収入が増えているとは限りません。しかし、パーセントで決定する投資運用商品は金利上昇して利回りが上がっているハズです。やみくもに返済するよりは他の投資商品の動向も確認してみましょう。借りるのは大変ですが返済はいつでもできます。また、手元資金がなくなってしまうと別のリスクに対応できなくなります。例えば、学費、入院、介護、家の修繕、転職で無収入など。そのリスクを負ってまで繰り上げ返済すべきか慎重に考えましょう。

③団信も減ってしまうのでもったいない

 冒頭で説明した通り住宅ローンには団信がついてきます。晩婚化もあり40歳を超えてから住宅ローンを組んでいる人も多いでしょう。40歳で返済開始して35年返済だと75歳で完済。損得と確率で考えると高齢になると団信適用確率が上がり得をする可能性が高くなります。高齢の生命保険はレアアイテム。できるだけ有効活用したいところです。

3.もう少し細かく考えても急ぐ必要はない

①まずは試算してみる

おおざっぱに言うと最近の借入だと優遇幅は大きいし、ある程度前の借入だと残高が減っているのでインパクトは薄いでしょう。住宅金融支援機構のHPなどを利用して試算してみましょう。現在の借入金利を10年毎に1%上昇させるとか、5年毎に0.5%上昇させるとかいろいろ試してみてください。後から出てくる極端な金利で試算してもおもしろいと思います。
難しい、自信がない場合は近所のFPにでも確認されてください。ただし詳しいFPです。

②みんな耐えられる?

住宅ローンの金利が上がるのは基準金利が上がる時でした。もし、既存の世の中全ての変動住宅ローンを一斉に基準金利を上昇させるとどうなるでしょう?上げ幅にもよりますが耐えられない家庭が続出するでしょう。アメリカのサブプライムショックのように消費も落ち込みかねません。今の日本の景気状況でこれは難しいと思います。
 なので、やるとすると新規の貸出だけ優遇幅を小幅に縮小するところからではないでしょうか。それでも、優遇幅が縮小すると住宅が売れにくくなりますから景気への影響は相当なものになります。ただでさえ、物件価格は高騰しています。材料費、人件費、運搬費・・・。これに加えて金利まで上昇すると消費者への負担はかなりのものになります。超低金利に慣れ過ぎた面もあるでしょう。「今までが金利が低過ぎたんだよと言われても・・・」、ですよね。
こんな感じなので現実的には当面は金利をいじるのは難しいだろうと予想しています。

③心配な人は

「そうは言っても不安だ」、という人は固定金利に切り替えるのも一手です。ただし、借り換えによって当初の優遇幅はリセットされます。いったん固定金利に借り換えたけど、しばらくしてやっぱり変動金利に戻したいと言っても、その時点での優遇幅しか適用されません。変動金利から固定金利に変更する場合は「もういじらない」くらいの意思で実行されてください。
ついでですが、固定金利から固定金利への借り換えも可能です。しばらく前に固定金利を借りていて放置している方は迷わず借り換えを検討されてください。


4.今やるべきこと

住宅ローンの金利引き下げ交渉です。言い変えると優遇幅の拡大交渉です。
先ほどご説明した通り、住宅ローンは基準金利から個人個人に合わせた金利優遇を受けています。また、借入をした時代によって幅が違います。現在は優遇幅が史上最大の時期です。少しでも優遇幅を拡げておくと基準金利が上昇する局面でも拡げた優遇幅は維持したままで上昇します。これは別に金利が上がりそうな時だけ行うものではありません。定期的に根気よく銀行に交渉しましょう。ただし、転職や減収などのタイミングで行くとヤブヘビになりかねませんので安定しているタイミングで動かれることをオススメします。借り換えと違って手数料もわずかです。

  ホントにそれだけでいいの?とお感じになるかもしれません。
先ほど、金利の決まり方で「例えば、多くの銀行の基準金利は2.475%です。そこから2%優遇して借入金利は0.475%となっているわけです。基準金利が3.475%になれば借入金利も連動して1%上昇し1.475%になります。」と書きました。
もう少し続けて考えてみます。
基準金利が2%上昇すると基準金利は4.475%、借入金利は2.475%です。
基準金利が3%上昇すると基準金利は5.475%、借入金利は3.475%となります。
・・・この時の固定金利はいくらになっているでしょうか?
変動が5.475%なら固定なら7%程度でしょう。これはいわゆるバブル期並みの金利水準です。ここまで上がる可能性は低い、もし上がるならなおさら「2の全体で考える」で対応を準備すべきではないでしょうか。

いかがでしょうか。似たような話だと家計が分かりやすいかもしれません。
「どうしたら家計がラクになるか?」節約ばかりを考える人が意外と多いです。
でも、正解は「収入を増やすか、支出を減らすか、その組み合わせ」です。当然ですね。

そもそも、身の丈に合わない家を買った、余裕をもって住宅ローンを組んでいないのが原因とも言えます。今から家を検討されている人もご注意ください。
今後の経済がどちらに動いても良いように勉強し、対応できるようにしておくこと。家にしてもローンにしても、自分がそれを選択した理由を忘れないようにしておくことだと思います。

この記事を書いたプロ

竹下昌成

不動産投資の経験豊富なお金のプロ

竹下昌成(竹下FP事務所)

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