良いお墓が出来るかどうかの分かれ目(7)見積書の内容が同じであっても、同じお墓ではない。

能島孝志

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テーマ:石材店の選び方

(1)お墓は一般消費者には極めて分かりにくい商品である
(2)情報収集の手段は?
(3)お墓のポータルサイトとは?
(4)どんな墓地を選ぶかも重要?
(5)自社のことを悪く言う業者はいない!
(6)台湾の地震から考えるお墓の施工


〜上記のコラムからの続きです〜

消費者がお墓を購入するにあたり、一番知りたいのは「値段」です。


お墓に使用する石のことや、構造・デザイン・施工方法など、
知っておくべきことは数多くあるのですが、先ずは値段なのです。


これは、何もお墓だけに限ったことではありません。


お家やマンションを買う時だって、クルマを買う時でも一緒です。


こんな家が欲しい、高層マンションに住みたい、レクサスが欲しいなど、
想うところはたくさんあっても、やはり先立つものはお金です。


墓石など高額商品の契約

お墓も、お家やクルマと同じように高額商品なだけに、
身の回りの日用品をポンと買うような訳にはいきません。

それだけに、まずは見積りが欲しいとなるのです。
お墓も同じく、消費者がまず要求するのは見積書です。


しかし、一般の消費者は過去にお墓の見積書など見たこともありません。


お家やマンションなどの不動産売買に伴う見積書や契約書は、
宅地建物取引業法に沿ったもので、宅地建物取引士の元で作成されますが、
墓石の販売には何の資格も必要がなく、契約書すらない場合もあります。

見積書の内容も、「青みかげ石、9寸2重台墓石工事一式」150万円(税込)、
というような、石の種類も工法も何も分からない簡素なものもあります。

また、石の種類から等級、石の特性、墓石に加え付属品の有無、
外柵の形状から工法までが詳しく明記されている見積書もありますが、
見積書に記載されている内容のすべてを理解できる消費者はごく僅かです。


大半の方が大まかな部分と金額だけで判断をされます。


例えば、A社の見積書は「大島石特級・9寸神戸型2重台墓石」180万円、
B社は「大島石特級・9寸神戸型2重台墓石」150万円となっているとします。

これだけを見る限りでは、多くの消費者は「A社はB社より30万円も高い!」
「これならB社で買う方が得なのでは…」と思われるでしょう。

それは、多くの消費者は「お墓はどこで買っても同じ、違うのは値段だけ」
というふうに考えているので、そういう答えが出るのかも知れません。


お墓はどこで買っても同じじゃありません!

カローラとクラウンとでは値段が違います。


もちろん、カローラの方が安くてクラウンの方が高い。


だから「カローラを買う方が得!」とい考え方はあまりしないですよね!


それは、クルマの値段の違いについては世間で認知されているからです。
そして、用途や目的、好みにより車種を選ばれるのです。


お墓の見積りも、見積書に書かれてあることが同じように見えても、
細部にわたって捉えていくと、実際には大きく内容が異なるのです。


さきほどの「大島石特級・9寸神戸型2重台墓石」の見積りを例に挙げますと、


①「大島石特級」とひとくちに言っても、数多くの採石丁場があり、
 それぞれの丁場によっても、採掘時期によっても品質が異なります。
 
 牛肉に「黒毛和牛」と表示されていても、「神戸牛」なのか「米沢牛」なのか、
 「近江牛」なのかによって、味も違うし値段も違うのと同じです。


②大島石の墓石は日本国内だけでつくられているわけではなく、
 中国の石材加工工場に原石を送り製品化された墓石を輸入したものもあります。

 むしろ、大島石の墓石に関しては中国でつくられたものの方が圧倒的に多いのです。

 国内加工か中国加工によって、値段が異なりますので確認が必要です。
 (もちろん、値段の差だけではなく、品質も大きく異なりますが…)


③国内加工だからと言って、すべてが良い製品というわけではありません。
 墓石は人の手でつくり上げるものだけに、職人の腕の良し悪しで品質が異なります。


④見積書には「9寸神戸型2重台墓石」とだけ記載されていたとしても、
 各部材に意匠加工を施しているかどうかで値段が変わる(特に国内加工)ので、
 設計図を確認し、細部に渡って比較をしてみる必要があります。


⑤外柵(巻石)に使用する石種や形状によっても大きく価格が違ってきます。
 見積書や設計図をよく確認し、石の使用量や構造も比べてみる必要があります。


⑥墓石に彫刻する文字も、書家直筆の文字を使用している石材店もあれば、
 コンピュータ文字を使用している石材店があります(今ではこちらが多い)。

 また、文字彫刻も技術レベルの高い字彫り職人が彫ったものから、
 中国での字彫りや全自動字彫りロボットでの彫刻まで様々です。


⑦墓地での施工方法によっても、掛かるコストが大きく違ってくるため、
 基礎工事や部材の接着方法、免震施工などの内容も違ってきます。 


ここに挙げさせて頂いた①~⑦は、ほんのごく一部であって、
実際にお墓が出来上がった際には、もっと色々な部分で違いが出てきます。


※このことでさらに詳しくはコチラをご覧ください。 
 お墓には当たり外れがある 


このように、同じように見える見積書であっても実は大きく違うのです。


一生に一度の大きな買い物であるお墓選びを、見積書に記載されてある、
ごく一部の記載内容と値段だけで判断するのは、かなりの危険があります。


        ~つづく~


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能島孝志(1級お墓ディレクター)

株式会社第一石材

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