生前に建てるお墓「寿陵」

能島孝志

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子が親より先に他界する、
あるいは弟が兄より先に逝去するなど、
本来の順番が逆転してしまうことを「逆縁」といい、
あまり良い意味では使われません。

それに対して、生前に自分の死後の供養をすることは
「逆修」と呼ばれ、仏教的に功徳のあることだとされています。
(ただし、辞書によっては、真理から遠ざかること
という意味もあることが記載されている)

逆修は、あらかじめ自分のお墓や位牌をつくり、
死後の冥福を祈ることを指すので、
「寿陵」は逆修にあたります。

実際に、寿陵のことを「逆修墓」ということもあり、
生前につくる位牌は「逆修牌」と呼ばれたりもします。

ちなみに逆修牌の対義語は順修牌で、
これは亡くなった時につくられる位牌のことになります。

逆修という考え方は、灌頂(かんじょう)経や
地蔵菩薩本願経などに書かれているもののようで、
日本では古くから行われていたらしい。

京都や奈良などの古寺に行くと、
“逆修”と刻まれた苔むした石塔が現存しており、
今でも目にすることができます。

逆修墓や逆修牌の場合のように、
仏教に帰依する人が自分の墓石や位牌をつくる場合は、
生前に戒名や法名をつけてもらい、
それを朱書きすることになりますが、
この生前戒名は逆修とは呼ばないようです。

戒名は仏門に入った証として与えられる名であり、
キリスト教の洗礼名(クリスチャン・ネーム)と同じ意味合いなのです。

だから、戒名をつけることは逆修ではなく
順修ということになるのでしょう。

ちなみに、戒名はブッディスト・ネームと英訳されます。

では、どうして寿陵で戒名を朱書きにするようになったのでしょうか?

説として有力なのは、
秦の始皇帝が「不老長寿」を願ったことから
由来しているというものであります。

秦の始皇帝は寿陵を建てたことでもよく知られていますが、
当時は不老長寿の薬の成分に水銀が用いられており、
棺の内側などに塗られていたといいます。

その水銀の原料である「丹砂」は朱色で、
それが戒名の朱書きにも
つながっているのではないかというのであります。

日本石材工業新聞(平成21年12月5日号) 
これからの墓「寿陵」林ひろみ氏著より

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