神話の中の「他界」⑥

能島孝志

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~前のコラムからの続きです~

天上他界の「高天原(たかまがはら)」は神々の国で、
民族として死者の霊が「氏神様(神霊)」と考えられるようになっても、
ほとんど山上他界までしか昇らず、
天皇(皇族)以外は高天原までのぼる、という概念はなかったようです。

古代の葬儀をえがいた天若日子(あめのわかひこ)の神話を『日本書記』は
「尸(かばね)を天(あめ・高天原)に到(いた)さしむ。
便(すなわ)ち喪屋を造りて殯(もがり)す」として、
天を死者の他界としますが、これは例外で、
『古事記』では天ではなく下界の「中津国」です。

こうした背景には、高天原から天降(あまくだ)るのは
天皇系(日本民族の祖であり最初の統治者)とされた
「天孫降臨(てんそんこうりん)」思想と関係があるようです。

また、「神話」を読むときもっとも注意を要するのは天皇の問題です。

多くの学者が指摘しているように、
日本神話は天皇(と藤原氏)の正当性を
主張することを目的に編集された、ということです。

この点に注意して読むと、日本民族のさまざまな隠れた姿が浮かび上がってきます。

                     ~つづく~  

※日本人のお墓(小畠宏允著・日本石材産業協会発行)より

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