東洋人の埋葬方法

能島孝志

能島孝志


中国や朝鮮半島(それに日本の沖縄地方)の埋葬方法には、
儒教や風水思想、あるいは道教の考えが強く残っているので、
今でも土葬が多く、土饅頭(どまんじゅう)型や亀甲型のお墓をつくります。

儒教では、ご先祖をお祀りする「先祖祭祀」と、
父母に仕える「孝(親孝行)」が生活の基本にあり、
身体を大切にする考えがあります。

例えば「両親からもらった身体を傷つけないことが孝の始まり」とか、
「孝行とは両親につかえることに始まり、
…ご先祖様を念(おも)うこと」と儒教の経典にあり、
遺体を焼くなどもってのほかで、
遺体を保存できる土葬が伝統的な葬法となっています。

風水では、亡き両親のお骨を通じて
子孫に繁栄と幸せがもたらされる、という考え方から、
遺体(特にお骨)を大切にします。

道教では「不老長生」を願い、
「丹砂(たんさ)・朱沙(しゅさ)・辰沙(しんしゃ)」など
水銀を原料とする不老不死の仙薬がつくられました。

このため古代中国では人骨やお棺の内側に
「朱」を塗って「不死」を願う習慣が生まれました。

また遺体保存のため木炭を棺のまわりに詰めます。
以前、中国の長沙で発掘されて話題になった
「馬王堆墓(まおうたいぼ)」の棺と槨(かく・棺の外箱)のあいだに
木炭がぎっしり詰められていて、婦人の遺体の保存もよく、
2000年あまり前の皮膚に弾力さえ残っていたそうです。

なお、日本の古墳にも棺の内側や石室の壁に朱を塗ったり、
木炭を詰めた遺跡が数多くありますが、
それは古代中国のこうした影響を受けたものです。

また、古代中国では塚墓(ちょうぼ)の上に植樹する習慣がありました。
植える樹は「松柏(しょうはく)」とあり、松と柏でした。

この習慣は早くから日本に伝わっていて、
日本の文献にもでていますし、
戦前まで日本海側では、海岸の松林が、
古くから墓石のない墓地だったところとして残っています。

※日本人のお墓(小畠宏允著・日本石材産業協会発行)より

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