「お彼岸」のお墓参りのマナーと作法について

能島孝志

能島孝志


昔から私たち日本人には、
故人の命日やお盆、お彼岸に
お墓参りをする習慣があります。
今年もまた秋のお彼岸が近づき、
多くの人がお墓参りをする時期になりました。

本来、お墓参りには
決まった時期があるわけではなく、
いつお参りをしても構わないのですが、
「お盆」と「お彼岸」に関しては、
もともと仏教に由来する行事です。 

彼岸というのは、「到彼岸(とうひがん)」を略したものです。
これは古代インドの言葉、サンスクリット語の「パーラミター」(波羅蜜多)を訳した言葉で、
文字通り彼岸へ到達するという意味です。
彼岸とは悟りの世界を意味し、
煩悩と迷いに満ちたこちら側の岸「此岸(しがん)」に対して、
あちら側の岸「彼岸(ひがん)」、
つまり極楽浄土のことを指しているのです。

では、どうしたら極楽浄土の岸へ渡れるのでしょうか?
仏教には『六波羅蜜(ろくはらみつ)』という教えがあります。

1.[布施] 他人へ施しをすること
2.[持戒] 戒を守り、反省すること
3.[忍辱] 不平不満を言わず耐え忍ぶこと
4.[精進] 精進努力すること
5.[禅定] 心を安定させること
6.[智慧] 真実を見る智慧を働かせること

こうした徳目は本来なら毎日心がけるべきなのでしょうが、
日頃は忙しくてなかなか実行できないのではないでしょうか。
そこで、せめて春と秋、年に2回くらいは実践しようというのが、お彼岸法要の意味です。
お彼岸には、ご先祖様のお墓にお参りし感謝と冥福を祈るとともに、
六波羅蜜の教えを実行したいものです。

お墓参りの作法については、
仏教ではお線香をあげ、
神道では榊やお神酒などをお供えします。
また、キリスト教では
白いお花(カーネーション、百合など)を供えるなど、
宗旨・宗派によって様々ですが、
ここでは一般的なものをご紹介いたします。

1. お墓参りに準備するもの

■掃除用具:タワシ、ぞうきん・タオル、
スポンジ、歯ブラシ、軍手、ゴミ袋、※手桶、
※バケツ、※ほうき、※ちりとりなど。

※印については、墓地や霊園で借りられる場合もあります。

■お供え物:生花、お水(飲み水)、
湯飲み、おはぎや彼岸団子などのお供物、
お供物を置くための半紙など。

2. お墓参りの前に

お寺に墓所がある場合には、
お墓参りの前に先ず本堂のご本尊様にお参りをし、
ご住職にご挨拶をしましょう。

3. お墓のお掃除

自分の家のお墓の前に着いたら、
お掃除をする前に先ずは一礼し、両手を合わせて合掌します。

①先ず始めに、枯れた花、ローソク・線香の
燃えかすなどを取り除きます。
花立、線香立が取り外しができるものならば、
取り外して洗ってください。

②墓所内の雑草を抜き、
墓所の周りをほうきできれいに掃きゴミも拾います。

③次に、墓石にきれいなお水をかけて、
スポンジや柔らかいタワシを用いて汚れを落とします。
文字を彫ってある部分のお掃除には、歯ブラシを使うと便利ですが、
ペイントがはげ落ちないようにやさしく汚れを落としましょう。
洗い終わったら、きれいな布で水分を拭き取ってください。

4. お参りの作法

①お掃除が終わったら、
花立にお水を入れお花を飾り、
水鉢にきれいなお水(飲み水)を入れます。

②次に、おはぎ、彼岸団子や、故人の好きだった
お菓子・果物などを半紙や懐紙の上にお供えします。

③そして、ローソクに火を灯し、
そこから線香に火をつけてお参りの準備をします。
お参りの順番は故人と縁の深い者からとなります。

※線香はローソクの火から束のまま火をつけてから、
人数分に分けてお供えするのが一般的です。

④お線香を手向け、合掌礼拝の前に
墓石の上から手桶のきれいなお水をたっぷりとかけます。

⑤合掌して、先祖や故人の冥福を祈ります。
また、近況の報告をしたり、
お経を唱えることができれば、お経を唱えても良いでしょう。

5. 後始末はきちんと

お参りが終わったら、お花だけを残し、
お供えはカラスなどに荒らされないように
持ち帰るようにしましょう。
また、古くなって朽ちた卒塔婆は、
菩提寺にお願いして、お焚きあげをしてもらいます。

忙しい現代社会においては、
先祖を供養し、故人を敬うことが
大切なことだと分かってはいてもなかなか出来ないものです。
しかし、せめてお盆、お彼岸くらいは
家族揃ってお墓参りに行き、故人を偲びたいものです。
                      
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能島孝志
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能島孝志(1級お墓ディレクター)

株式会社第一石材

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