「これ、捨てちゃうの?」から始まった、家族の片付け。
「皆が他人事のように思っていた月日を、今日だけは協力する日として、兄に感謝の気持ちを込めて、集まりたいと思っています」
今回、遺品の片付けをご相談くださったお客様から、作業前にいただいた言葉です。
実はこのお客様との片付けの話は、以前のコラム
『何から始めればいいんだろう。』にも書いています。
コラムを読む
今回は、その続編です。
お母様が亡くなられてから、10年近く。
遺品はお兄様のお宅に置かれたままになっていました。
2階の一室は、お母様の洋服や着物などが残り、使えない状態になっていたそうです。
片付けなければと思いながらも、どこから手をつければいいのか。
誰に頼めばいいのか。
費用はいくらかかるのか。
分からないまま、年月が過ぎていきました。
家族みんなが集まった片付けの日
当日伺うと、ご兄弟だけでなく、奥様や息子さんたちも集まっていました。
すでに2階からたくさんの荷物が運び出され、リビングいっぱいに並んでいます。
今回は、買取・無料引取りをしてくださる業者さんにも同行していただきました。
洋服、着物、靴、バッグなどは種類ごとに分けて査定へ。
仏具や小型の家電、本など、引き取っていただけるものもありました。
一方、ビデオテープやカセットテープ、アルバムなど、引き取れないものもあります。
それらは自治体のルールに従って処分することになりました。
ご家族の多くはこの地域に住んでいないため、分別方法がよく分かりません。
ある程度分けていると、この家に住むお兄様から、
「それ、違うんだよ」
という声が。
そこで私は、
「せっかく今日はみなさんで集まったんです。ゴミの分別もみんなでやりましょう。これを全部、お兄さん一人に残してはダメですよ」
と声をかけました。
実際に収集日にゴミを出すのは、ここに暮らすお兄様にお願いすることになります。
だからこそ、その前の大変な分別までは、今日いるみんなで終わらせておきたい。
今日を「みんなで片付ける日」と決めたのなら、最後に一人だけへ宿題を残さない。
ご家族みんなで、引き取ってもらえないものの分別も進めました。
片付けながら、よみがえる思い出
作業を進めていると、アルバムが出てきました。
「あ、これ、うちらの結婚式の写真だ」
そんな声に、ご家族の手が止まります。
息子さんが幼い頃に載った雑誌も出てきました。
「これは捨てちゃダメなやつ」
大量の着物からは、お母様が踊りをされていた頃のことも思い出されます。
宝飾品を見つけて、
「これはお宝か?」
と盛り上がる場面も。
片付けの途中で、何度も笑い声が聞こえました。
そんな中、お客様がぽつりとおっしゃいました。
「母親のことを思い出して片付けしてますよ」
そして、
「長年、兄に押し付けちゃってたよなぁ」
とも。
作業前にいただいた、
「今日だけは協力する日として、兄に感謝の気持ちを込めて」
という言葉を思い出しました。
「もうありませんか?」から、まだ出てくる
かなり片付いたところで、
「もう大丈夫ですか? ほかにはありませんか?」
と確認しました。
すると、
「あ、そのクローゼットの中……」
リビングのクローゼットを開けると、まだお母様のものがたくさん残っていました。
下段だけではありません。
上段にも。
大きな脚立を持ってきて確認すると、
「あった、あった」
「まだある!」
次々と出てきます。
2階の家具からも、出し忘れていたものが見つかりました。
長く暮らしてきた家の片付けでは、本人たちも忘れていた場所から物が出てくることがあります。
「全部出したつもり」でも、まだある。
これも実家や遺品の片付けでは珍しいことではありません。
そして最後には、家具を残して2階の部屋はほぼ空っぽになりました。
リビングのクローゼットもきれいになり、それを見たお兄様から、
「いやー、スッキリした。こんなにあったんだなぁ」
という言葉が聞こえてきました。
片付けられなかった10年を責めるのではなく
10年近く手をつけられなかった。
それだけを聞けば、
「もっと早く片付ければよかったのに」
と思う人もいるかもしれません。
でも、実際にその場にいると、そんな単純な話ではないことが分かります。
一つひとつの物に思い出があります。
何を残すのか。
何を手放すのか。
どう処分するのか。
誰に頼めばいいのか。
そして、いくらかかるのか。
考えることがたくさんあります。
だから、「やらなければ」と思っていても動けない。
今回のお客様は、作業後にこんな言葉をくださいました。
「私のように、困っているだけで、
誰に?
お金がかかるのが心配で、
等の考えだけで、何も手付かずの方々の助けになるのであれば、私も嬉しいです」
今回、この片付けの様子をコラムで紹介することも快く了承してくださいました。
同じように困っている方の一歩につながれば。
そんなお気持ちで、ご自身の経験を紹介することを許してくださいました。
最初から全部、自分たちでやらなくてもいい
今回、くらととがすべての物を片付けたわけではありません。
ご家族が、残すものを選ぶ。
買取・無料引取りができるものは専門の業者さんへ。
処分するものは、ご家族で自治体のルールに合わせて分別する。
家具については、別の方法を検討する。
それぞれができることを分担しながら、私はその間に入り、片付けが前へ進むようお手伝いしました。
片付けたい。
でも、何から始めればいいのか分からない。
誰に相談したらいいのか分からない。
費用のことも心配。
そんなときは、最初から答えを全部持っていなくても大丈夫です。
「どうしたらいい?」から、一緒に考える。
その最初の一歩をお手伝いすることも、くらととの仕事です。
10年近く動かなかった部屋が、家族みんなが集まった一日で大きく動きました。
片付けながら思い出したのは、物のことだけではなかったのかもしれません。
家族みんなでお母様を思い出し、お兄様への「ありがとう」を行動にした一日。
そんな片付けに立ち会わせていただきました。


