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90歳を過ぎても娘なんだと思った日

テーマ:実家片づけ

今年94歳になる母は、90歳を過ぎた頃から会うたびに、

「もういつ死んでもいいんだ」

と言うようになりました。

でも、ひとつだけ心残りがあるそうです。

それは、自分の実家のことでした。

そのたびに私は、

「お兄ちゃんたちに任せておけば大丈夫だよ」

と伝えていました。

先日、新潟へ帰省した際、母から

「実家の片付けを少し手伝ってくれないか」

と頼まれました。

今まで母のことは、同居している兄夫婦や近くに住む姉に任せきりでした。

だから今回は、少しでも親孝行ができればと思い、快く引き受けました。

実家へ行ってみると、家の中は思っていた以上にきれいでした。

10年以上空き家になっているとは思えないほどです。

処分したい額や荷物を車に積み込みながら、不思議に思いました。

なぜ、こんなにもきれいな状態が保たれているのだろうと。

すると、90歳になる叔母がやって来ました。

約束をしていたわけではありません。

草取りをしに来たのです。

母も叔母も夢中になって草を取り、ご近所から見える場所をきれいに整えていました。

私は最初、

「もう十分きれいなのに」

と思っていました。

でも草取りをしながら気づいたのです。

この庭は、頻繁に手入れされているということに。

家の中も同じでした。

誰も住んでいない家なのに、掃除が行き届いている。

近くに住む娘たちが、時々集まっては掃除をし、草を取り、この家を守ってきたのです。

母は7人兄妹の長女です。

今も近くに住む姉妹たちが、長年にわたり実家を気にかけてきました。

私にとっては94歳の母であり、90歳の叔母です。

でも、その家から見れば違います。

あの家にとっては、今でも「娘たち」なのです。

今回、母は嬉しそうに話してくれました。

車がないと運べない荷物を片付けられたこと。

自宅に持ち帰れば、自分の手で少しずつ処分できること。

兄夫婦に迷惑をかけずに済むこと。

母にとっては、「自分で何とかしたい」という思いが叶った一日だったのでしょう。

いつもなら昼寝をする母ですが、

「嬉しくて昼寝できなかった」

と笑っていました。

帰る前に、一枚だけ写真を撮りました。

長年その家の壁に掛かっていた額です。

処分することになりましたが、私の中では「この家といえばこの額」という存在でした。

母だけではありません。

私にも寂しさは残ります。

住む人がいない以上、いつかは手放す時が来ます。

それは分かっています。

でも、実家というのは単なる建物ではありません。

そこで暮らした時間や家族の思い出が詰まった場所です。

だからこそ、

片付けなくてはと思う気持ちと、

手放したくない気持ちが、

同時に存在するのだと思います。

実家の片付けが進まないのは、物が多いからだけではないのかもしれません。

そこにある思い出や家族の歴史と向き合う時間が必要だから。

94歳の母と90歳の叔母を見ながら、そんなことを考えました。

親もまた、誰かの子どもです。

そして90歳を過ぎても、娘は娘なのだと感じた一日でした。

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小曽根加代
専門家

小曽根加代(実家片付け・生前整理サポート)

くらとと

言い出しにくい実家の片付けを、親子それぞれの想いに配慮しながら調整します。仕業や専門業者とも連携し、止まりがちな話を無理なく現実的に進め、生前整理や空き家対策まで一貫してサポートします。

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