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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

下肢筋肉量低下でインスリン抵抗性上昇?

2018年1月26日

テーマ:糖尿病関連の報告

コラムカテゴリ:医療・病院

コラムキーワード: 糖尿病 食事糖尿病 症状糖尿病 予防

下肢筋肉量低下でインスリン抵抗性上昇?

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘下肢筋肉量低下でインスリン抵抗性上昇?’という報告です。

 2型糖尿病患者において、体脂肪率の増加と同じく、下肢の骨格筋量の低下もまたインスリン抵抗性を引き起こす重要な因子であることが示されたと、久留米大学内分泌代謝内科の研究者が第21回日本病態栄養学会で報告した。

 2型糖尿病の原因の一部であるメタボリックシンドロームの診断基準の必須項目として、ウエスト周囲長が定められているが、注目すべき点はウエストだけでない。同氏は「メタボ患者には脚が細い方が非常に多いことに気付いた」と述べ、内臓脂肪の蓄積だけでなく、下肢の骨格筋量の低下とインスリン抵抗性や心血管病との関連を調べた。

 同氏らは198人の2型糖尿病患者(DM群:平均年齢56.9歳、平均体格指数(BMI) 23.2)の体組成を測定し、年齢、性およびBMIをマッチさせた健常者(C群)と比較した。その結果、下肢骨格筋量はC群が7.1kgであったのに対し、DM群では6.1kgと有意に少なかった。一方、上肢骨格筋量では有意差が認められなかった。体脂肪量や体脂肪率においても両群に有意差は認められなかった。

 また、2型糖尿病患者において体組成と糖尿病罹病期間、運動習慣との関連も検討した。罹病期間については、下肢骨格筋率は上肢骨格筋率や体脂肪率よりも強い相関が認められた。また、下肢骨格筋率は運動習慣に対しても強い相関を示した。さらに、2型糖尿病患者において下肢骨格筋率の減少と心血管病のリスク因子数の増加との間に有意な関連が認められた。

 同氏らは体組成とインスリン抵抗性の関連についても検討を行った。健常者および2型糖尿病患者を対象にインスリン感受性と体組成との関連を調べたところ、下肢骨格筋率の低下は体脂肪量や体脂肪率の増加と同等、もしくはそれ以上にインスリン感受性の低下と強い関連を示すことが明らかになった。

 これらの結果を踏まえ、同氏は「日本人の2型糖尿病患者における下肢筋肉の割合の低下は、インスリン抵抗性の重要な原因であると考えられる。糖尿病患者においては、もちろん体脂肪率を下げることも大切だが、同時に下肢骨格筋を鍛えるトレーニングを取り入れれば、血糖コントロールのみならず生命予後や心血管病の予防にもつながる」と結論した。

今回の報告では糖尿病ではカロリー制限でただ減量すれば良いのではなく、脂肪を減らすとともに筋肉量も増やすことが血糖コントロールには大事であるということを改めて実証したということに意義があるものと思われます。糖尿病治療の基本は言うまでもなく食事と運動ですが、ただ運動するだけではなく筋肉量のことも考慮に入れることが大事な様です!

18.1.26 氷柱

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