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認知症の早期診断は可能か?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘認知症の早期診断は可能か?’というお話です。
川畑先生は1996年に認知症の早期発見と対応を目的に物忘れ外来を開設し、現在までに7000人に及ぶ患者さんを診察しております。その経験を通して最近感じるのは、「『認知症の早期発見・早期診断が重要』とよく言われるが、それは本当に可能なことなのだろうか」という疑念です。確かに認知機能の低下がいまだ軽微、軽度の段階で受診して来る患者さんも少なくありませんが、その段階の患者さんを安易に「認知症」と診断してよいのだろうか、過剰診断をしている可能性はないのか――とつい考えてしまうのです。今回は、認知症の早期発見・早期診断について考えてみたいと思います。
2008年から2016年の9年間に掛けて診療した患者さんについて、初診時におけるアルツハイマー型認知症重症度分類の結果によると。認知症テスト(MMSE)で24点以上を軽微、20~23点を軽度と規定すると、ほとんど全ての診療年で軽微と軽度の患者の割合は4割以下であることが分かります。MMSEですと、10~19点の中等度に進展した段階で受診する患者さんの方が、軽微ならびに軽度の段階で受診して来る場合よりも多いのです。つまり「物忘れが心配だ」「認知症ではないか」と考えて医療機関を受診する患者さんでは、既に認知機能障害が中等度に進展している場合が多いのです。認知症の早期発見・早期診断が重要といわれながら、実臨床では中等度以降にならないと受診してこないわけです。
認知症に進展している患者さんが早期の段階で受診してこない理由・原因はどこにあるのでしょうか。まず挙げられることは、早期の段階では加齢に伴う物忘れ(生理的老化)との区別がつきにくい点です。しまい忘れや置き忘れなどの物忘れ症状の視点で考えると、「生理的老化」から「軽度認知障害(MCI)」、さらに「アルツハイマー型認知症」は連続した1つの線上に位置するものです。しまい忘れや置き忘れは、アルツハイマー型認知症の初発症状としてはほぼ必発と考えてよいかと思いますが、同時に健常高齢者でもしばしば見られるものです。しまい忘れや置き忘れの状態でどこまでが生理的老化なのか、どこからアルツハイマー型認知症の部分症状なのか――の区別が実はほとんどできないのです。ですから、家族が物忘れ症状に気付いても生理的老化なのか病的なのかの判別を付け難く、安易に「歳のせい」で済ませてしまう場合が多いようです。
*八千代病院神経内科 川畑信也先生の文章を抜粋し、改変
当クリニックにも時折、家族が認知症を疑って患者さんを連れて来院なさることがあります。しかし、実は認知症症状を呈する方の一部に認知症以外の脳外科的疾患を有する方が潜んでいる可能性が否定出来ないため、原則的に一度近医の脳外科を紹介してCT検査等を施行し頂き、認知症か否かの判断をしてもらう様にしています。上記の認知症検査(MMSE)も実際施行するとなるとかなり手間ひまの掛かる検査でクリニックの外来診療の中で施行するにはなかなか手間隙のかかる検査でもあります。今後、さらなる超高齢化社会を迎える日本では認知症患者は増加の一途をたどる可能性も否定出来ません。今後は早期診断よりは認知症発症予防に向けた取り組みを本格的に考える時期に来ているのかも?知れません。