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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

高齢者はウォーキングで死亡率低下?

2017年11月5日

テーマ:運動の効用

コラムカテゴリ:医療・病院

コラムキーワード: 糖尿病 食事糖尿病 症状糖尿病 予防

高齢者はウォーキングで死亡率低下?

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘高齢者はウォーキングで死亡率低下?’という報告です。
 健康には中等度以上の運動が推奨されるが、高齢者において最も一般的な運動であるウオーキングと死亡の関係を調べた研究はほとんどない。米国がん協会の研究者らは、高齢者を対象とした大規模研究で運動と死亡の関係を検討。その結果、推奨度以下のわずかなウオーキングでも死亡リスクを低下させることを報告した。中等度以上の身体活動は心血管疾患(CVD)や2型糖尿病、脳卒中、幾つかのがん、死亡のリスクを低下させる。このため、米国スポーツ医学会と米国心臓協会が発行する身体活動ガイドラインでは週に中等度の運動で150分以上、激しい運動で75分以上を行うことを推奨しているが、米国でこれを満たす運動を行っている高齢者は65~74歳で42%、75歳以上で28%程度に過ぎない。
 今回の研究では、米国の大規模研究において、ウオーキング単独、あるいは他の中等度または激しい身体活動と合わせ場合の全死亡との関連を検討した。男性の5.8%、女性の6.6%は中等度または激しい身体活動を行っておらず(不活発群)、それ以外の参加者(活発群)のうち男性では96.2%、女性では95.4%がなんらかの形でウオーキングを行っており、男性の46.9%、女性の49.3%はウオーキングのみ行っていた。同氏らは、全ての解析で2時間/週未満のウオーキングを対照群とし、全死亡の危険率を求めた。
 その結果、全死亡の危険率は不活発群で1.26倍に上昇していた。一方、推奨レベルの1~2倍(2~6時間/週)に当たるウオーキングのみを実施していた場合の全死亡の危険率は0.80倍であった。また、いずれかの運動で推奨レベルの1~2倍に当たる身体活動を行っていた場合の危険率は0.77倍で、ウオーキング単独とほぼ同様だった。さらに死因別に検証すると、呼吸器系疾患死亡で最も強い逆相関の関連があり、6時間/週超のウオーキングで35%のリスク低下が認められた。なお、2~6時間/週のウオーキングによるリスク低下は、CVD死亡20%、がん死亡10%だった。ウオーキングは推奨レベル以下でも全死亡のリスク低下に関連し、推奨レベル以上のウオーキングはさらにリスクを低下させた。
 そこで、同氏らは「医師は患者に対し、特に高齢になったとき、推奨量未満であっても健康や長寿のために歩くよう促すべき」と提言。ウオーキングはシンプル、無料でなんの訓練も設備も必要としない"理想的な運動"である。「今回の研究は、ウオーキングが寿命を延伸し、公衆衛生を有意に改善する可能性を示した」としている。
 今までは中等度以上のそれなりの運動をしないと効果は少ない様に考えられていましたが、ご高齢の方はウォーキング程度の比較的軽度な運動でも死亡率低下に貢献するということが実証された様です。

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