医師は変人なのか?
笑いの研究は怒りから?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘笑いの研究は怒りから?’というお話です。
「笑い」と健康増進に関する研究を続ける福島県立医科大学大平哲也教授。最初は「怒り」と循環器疾患の関連を研究していたそうだ。しかし、「怒り」への適切な介入方法が見つからなかったことが研究テーマ転換のきっかけと話す。まだまだ「笑い」の医学的効用に関するエビデンスは不十分としながらも、大平教授が現在の実臨床で実践する「笑い」処方の工夫と、それによるベネフィットなどについて聞いた。
―「笑い」を研究されたきっかけとなった出来事を教えてください。
私はもともと「怒り」と循環器疾患との関連を研究していて、怒りをためることが血圧上昇や高血圧の発症に関係することを報告してきました。ところが、怒りをためている人に対する介入が難しいということが分かってきました。すなわち、怒りをためている人に「怒りを出してください」と頼んでも、それが困難だったのです。そこで、他の感情を出した方がよいのではないかと考えて泣く、笑うのうち日常生活で表出しやすい「笑い」に注目したのです。
―患者さんと接する際にちょっとしたユーモアや笑いを処方される機会はありますか。
基本的には患者さんの話を聞くということが一番だと思います。患者さんは普段、医師にはなかなか言えないことも多いのですが、笑い合う関係になると何でも気軽に相談してくれるようになるので、それが診断に結び付くこともあるのではないかと思います。食事療法や運動療法と同様に、その人やその人の病態に合った笑いの処方を行うことが大事で、その人の生活の中で笑いが増えるような機会を一緒に考えて行くようにしています。
―医療現場での「笑い」のエビデンス集積の課題、今後の研究のロードマップ、「笑い」の治療上の位置付けの展望を教えてください。まだまだ「笑い」の研究はエビデンスが不足していると思います。現在、前向き研究では、循環器疾患、認知症の発症との関連を検討すること、および生命予後との関連を検討する必要があると思いますのでそれを計画しています。
また、「笑い」の介入研究についても糖尿病だけでなく、メタボリックシンドロームやうつ病、軽度認知障害(MCI)等に関する研究が必要と考えていて、それを計画しています。今後は、食事療法や運動療法と同じように生活習慣に介入できる一つの分野として笑い療法が生かされることを期待しています。例えば、特定健診における特定保健指導の一つに「笑い」が活用されたら、患者さんも楽しく生活習慣改善ができるのではないでしょうか。
(取材・まとめ:m3.com編集部)
今後、大平教授の研究がさらに発展し、実際に笑いが処方出来る様になる日が楽しみです!