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高齢者の便秘について

佐藤浩明

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テーマ:加齢に伴う変化の特徴

高齢者の便秘について

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘高齢者の便秘について’のお話です。
 高齢者にとって便秘は非常に頻度の高い健康問題です。特に、認知機能が中等度に障害された場合には便意がなくなり、ADLが寝たきりに準じるようになれば便座に座り難くなるため、便秘の頻度が増すと考えられます。便秘は、認知機能やADLが保たれている場合にもしばしば問題となります。そして「認知機能は正常~中等度の障害」「ADLは自立~便座に介助で移動可能」程度の高齢者の便秘には、特に多くの対応が必要となります。今回は「高齢者の便秘をどう診るか」について考えます。
 高齢者は主に2つの病態によって便秘を生じます。
 第一に、加齢により腸管運動機能が低下して蠕動運動が衰え便秘となります(排便回数減少型)。そして、腸の内容物が停滞して腸管全体の動きが悪くなり便秘(大腸通過遅延型)となります。
 第二に、加齢により排便時に生ずる肛門周囲の筋肉の一連の動き(直腸内の便が腸管壁を伸展して直腸筋の収縮と内肛門括約筋の弛緩が起こり,随意的に外肛門括約筋が弛緩して肛門挙筋が収縮する)が障害され便秘となります(排便困難型)。つまり高齢者では、直腸に便が到達して腹圧をかけても、排便反射が起こりにくいため便秘となり(機能性便排出障害)、残便感が強くなります。そして、長期臥床や寝たきりでは上記の2つが助長されるため便秘が非常に多くなるのです。
 便秘は一般に女性に多い愁訴ですが、高齢になると男性でも多くなることを認識しておきます。2013年国民生活基礎調査によれば便秘の有訴率(人口1,000人対)は37.4(男性では26.0、女性では48.7)で、女性に多いと報告されています。一方、年齢階級別では、20歳代から50歳代では男性に比べて女性で多く、60歳代以上では男性も増加し、80歳代では女性よりも男性で多くなります。高齢者は日常診療で排便について、その羞恥心などから必ずしも話題にしないかもしれません。しかし、機会を捉えて耳を傾けると「便が残っている感じがしてスッキリしない」と言う高齢者や、中には「毎日、肛門に指を入れて便を掻き出している」などと言う方も経験します。その様な高齢者のQOLを高めるべく、医師として便秘への介入を試みたいところです。
 実際のところ、外来へも便秘を主訴に受診なされる方は結構多い印象があります。大半の方は当初は市販薬を服用してそれでも良くならずに受診なさる方が多い様に思われます。大抵の市販薬は刺激性の下剤と呼ばれるどちらかというとたまっている便を無理矢理押し出そうとするもので服用により腹痛を起こすことも多々ある様です。医療機関で処方出来る下剤には何種類かありますので患者さんそれぞれにあったような薬剤を選択することも可能ですので一度、かかりつけの医師にご相談してみては如何でしょうか?

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佐藤浩明
専門家

佐藤浩明(内科医)

さとうクリニック内科・消化器科

患者さんに寄り添う医療体制で、「経鼻内視鏡検査」に取り組み、内科・消化器疾患の徹底した検査と治療を行います。信条の「人と、地域と向き合う医療」という姿勢を守り、より高い専門性をもって地域に貢献します。

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