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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

大腸がん検診陽性例では10ヶ月以内の検査が大事?

2017年5月29日

テーマ:がん予防

コラムカテゴリ:医療・病院

大腸がん検診陽性例では10ヶ月以内の検査が大事?

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は「大腸がん検診陽性例では10ヶ月以内の検査が大事?」という報告です。
 免疫学的便潜血検査(FIT)陽性患者に対するフォローアップ大腸内視鏡検査の実施時期を明らかにする検討が、米国の研究者らにより行われた。その結果、8~30日に実施群と比べて10ヵ月以降実施群は、大腸がんリスクが有意に高く、診断時に進行大腸がんであるケースが有意に多いことが示された。FITは大腸がんスクリーニングで用いられる一般的な検査法で、陽性の場合は大腸内視鏡検査のフォローアップを受けることが必要とされている。しかしフォローアップ実施までの期間にはばらつきがあり、そのことが腫瘍の進行と結び付いている可能性が示唆されていた。
研究グループは、FIT陽性後の大腸内視鏡検査までの期間を評価し、同期間と大腸がんリスクとの関連、および診断時のステージ進行との関連を評価した。被験者は、大腸がんスクリーニング適格、FIT陽性でフォローアップ大腸内視鏡検査を受けた患者50~75歳の7万124例であった。
 対象被験者7万124例は、年齢中央値61歳、男性が52.7%であった。このうち、全大腸がんを有したケースは2,191例、進行大腸がんは601例で認められた。全大腸がんリスクについて、フォローアップ大腸内視鏡検査を8~30日の間に実施した群と比較して、2ヵ月後実施群、3ヵ月後実施群、4~6ヵ月後実施群、7~9ヵ月後実施群はいずれも有意な差は認められなかった。しかし、10~12ヵ月後実施群は、全大腸がんリスク、進行大腸がんリスクともに有意に高かった。全大腸がんリスクの危険率は1.48倍、進行大腸がんリスクの危険率は1.97倍であった。また、12ヵ月超実施群では、さらなるリスクの上昇が認められた。全大腸がんリスクは1,000患者当たり症例数が76例、危険率は2.25倍であり、進行大腸がんは同31例、危険率は3.22倍であった。なお、結果について著者は、「さらなる研究を重ね、今回示された関連は因果関係があるのかを調べることが必要である」と述べている。
 福島市でも6月から市民健診が始まります。その際に大腸がん検診として便潜血検査を行っていますが、たまに検査が陽性でも大腸内視鏡検査を受けられない方がおられます。これらの方の大部分はご高齢で検査の施行が大変だろうと思われる方なので私自身も無理には検査を勧めないこともあります。しかし、基本的に便潜血陽性の結果が出た際にはなるべく早めの時期に内視鏡検査を受けて頂くよう強く勧めています。
 今回の報告は便潜血陽性だった際に10ヶ月以上の期間を空けてしまう危険に言及しておりますので、やはり早めの検査が大事であろうということを今一度認識する必要がありそうですね!

17.5.28 あべのハルカス
 クリニック10年記念旅行での一コマ。あべのハルカスからの通天閣&大阪城。今では大阪万博のモニュメントとなっている太陽の塔!

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