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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

高齢者の肥満に減量は必要か?

2017年3月23日

テーマ:医療マメ知識

コラムカテゴリ:医療・病院

コラムキーワード: 糖尿病 食事糖尿病 症状糖尿病 予防

高齢者の肥満に減量は必要か?

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は「高齢者の肥満に減量は必要か?」というお話です。
 先日、開催された日本病態栄養学会において名古屋大学老年学科の研究者は高齢者の肥満管理に関して「サルコペニア(加齢や疾患により筋肉量が減少している状態)・フレイル(加齢による心身活力低下状態)予防を考慮し、特別なり理由がない限りは積極的な減量は勧められない」と報告した。
 近年、高齢者の肥満に着目した様々な研究が報告されている。65歳以上を対象とした32件の研究解析では総死亡の危険は体格指数(BMI)32程度であれば上昇しないとの報告や、65-79歳を11年間追跡した日本の研究でもBMI 30までは死亡の相対リスクの上昇は見られなかったと報告されている。また、75歳以上の集団では糖尿病と関節疾患の発症リスクはBMIが高い群ほど上昇するが、急性心筋梗塞や脳卒中に関しては変化がなく、骨粗鬆症はむしろBMI30以上の群でリスクが低いことも報告されている。これらの研究を踏まえて同研究者は「高齢者の至適BMIは何を重視するかで異なる可能性がある」と指摘し、日本の高齢者の肥満管理について次のような見解を示した。
1.BMI 25-29.9(肥満1度)では糖尿病などの代謝異常や関節疾患の併存などの特別な理由がない限り、積極的な減量は勧められない。
2.BMI 30以上(肥満2度)では減量によるメリットがデメリットを上回ると考えられるケースでは2-6kg/年程度の減少にとどめることを目標に摂取カロリーを緩徐に減らす。
3.減量の際には食事・運動療法の併用を原則とする。なお、既に要介護状態の高齢者や消耗性疾患が存在する例では減量するメリットは乏しい。
「ADL障害や併存症の有無など個々の患者の状態を把握した上でQOLを最大限に考慮した体重管理を行うことが肝要」と同研究者は指摘している。超高齢化社会を迎えた日本において高齢者の肥満に関しては非高齢者と同様に減量を勧めるという対応は必要ないということの様です。実際、当クリニックでも特別な理由がない限り、ご高齢の方への積極的な減量は勧めておらず、それ以上は体重が増えないように心がけて下さいとお話しています。
       
17.3.22 ドック結果
 昨日は私自身のドックでした。日頃の運動のお蔭か、年々体脂肪率や腹囲は落ちて来ているようです!

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