PM2.5やオゾンで甚大な健康被害?
高齢糖尿病では低血糖に要注意?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は「高齢糖尿病では低血糖に要注意?」という報告です。
糖尿病の薬物治療が進歩する一方で、患者の高齢化などを背景とした低血糖リスクの増大が憂慮されている。日本糖尿病学会は薬物治療ガイドラインの確立や患者指導の充実に役立てる目的で、糖尿病治療に関連した重症低血糖の実態調査を実施し、兵庫医科大学病院病院長の難波教授が報告を行った。2型糖尿病においては94%がインスリン、血糖降下薬のスルホニル尿素(SU)薬の使用例だった。
対象は2014年4月1日〜15年3月31日の1年間に当該施設で治療した全糖尿病患者の実態と個々の重症低血糖症例の背景や治療内容についてデータ登録を依頼した。重症低血糖の定義は「自己のみでは対処できない低血糖症状があり、発症・発見・受診時の血糖値が60mg/dL未満であることが明らかにされている」ものとした。
定期受診中の糖尿病患者の総数は34万6,939例で、うちインスリン依存型の1型は6.2%だった。インスリン使用例は30.7%、SU薬使用例は20.5%だった。重症低血糖による年間受診数は6.5例で、その32.3%が60〜74歳、42.7%が75歳以上の高齢者だった。1年間で入院を必要とした例数は4例。うち16.2%が1型、72.2%が2型で、インスリン使用2例、SU薬使用1例だった。糖尿病の病型は1型240例(30%)、2型480例(60%)、年齢は1型54歳、2型77歳で2型が有意に高齢であった。
重症低血糖発生時点のHbA1cは1型7.5%、2型6.8%であり、2型で有意に低かった。2型では7.0%未満に重症低血糖が集中していることも分かった。重症低血糖に影響した因子は食事の内容・タイミングの不適合(40%)、薬剤の過量もしくは誤投与(27%)、具合の悪いとされるシックディ(11%)などであった。これに関して同氏は「大半が医療者による患者への適切な指導とその遵守で回避可能と考えられた」と述べた。2型糖尿病患者の使用薬剤で最も多かったのはインスリンの292例(60.8%)で、次いでSU薬(インスリン未使用)159例(33.1%)と94%がインスリンもしくはSU薬の使用例だった。年齢はインスリン使用群74歳、SU薬使用群81歳、HbA1cはそれぞれ7.1%、6.3%であり、SU薬群で有意に高齢、HbA1c低値だった。また、SU薬を使用している糖尿病患者の約半数が比較的重症の腎症を合併していた。「腎症を合併する高齢糖尿病患者においては、血糖コントロールの基準の緩和や処方薬剤の見直しを図ることや、きめ細かい指導を行うことが重要」と同氏は指摘した。
近年の糖尿病治療においては厳重な血糖コントロールのみに力点が置かれるのではなく、患者さん自身の状況に応じた血糖コントロールが重要視されるようになりました。年齢に関係なく一律に血糖コントロールの指標であるHbA1c値の目標を定めるのではなく、年齢や認知症の有無、さらには患者さん本人の日常生活の状態などを考慮して目指すべきHbA1c値を決めることが重要と考えられています。この最大の理由は糖尿病においては将来における合併症の進行抑制には血糖をコントロールすることは当然大事ではありますが、さらに致死的な合併症を起こさなくするためには低血糖を来さないことがさらに大事であるということが近年の大規模臨床研究で明らかになってきたことが影響しているのです。
昨夕の大阪 天保山からの夕焼け。暫くぶりに綺麗な夕日が観られました!