泳いでいるから、仕事をしているとは限らない
ガチャガチャには、妙な商売がある。
欲しいものがある。
お金を入れる。
ハンドルを回す。
カプセルが出てくる。
……違う。
もう一回。
……また違う。
機械は何も約束していない。
こちらだけが、次回に期待している。
売り切れない商品。売り切る気もない。
普通の買い物なら、
欲しいものを選んで、お金を払う。
ところが、ガチャガチャは違う。
欲しいものが決まっている。
…でも、選べない。
お金は受け取ってくれる。
…なのに、欲しい商品を渡してくれるとは限らない。
ずいぶん自由な販売方式。
買う前に商品を選ぶのではなく、
買ったあとに商品を確認する。
レジを通過してから、中身との面談。
それでも、欲しいものがあると回してしまう。
一回目で出なかった。
「まあ、そんなこともある」
二回目も出なかった。
「次こそは」
三回目も出なかった。
……次こそは、どこから来るのだろう。
執念に、追加料金。
最初は、欲しいものを手に入れるため。
ところが、
何度か回しているうちに、
目的が変わってくる。
ここまで使ったんだから。
あと一回くらい。
もう少しで出そうな気がする。
……気がするだけなのに、妙に説得力がある。
カプセルの中身は、
こちらの事情を知らない。
何回レバーを回したかのか、
いくら使ったのか関係ない。
それなのに、
こちらは過去の投資を背負って、
次のハンドルに手をかける。
カプセルを買っていたはずが、
途中から執念に課金している。
ガチャガチャの機械は、
ただ回されているだけ。
機械は無言。
こちらは勝手に熱演中。
当たった瞬間、会計が黙る。
そして、ついに出た。
欲しかったもの。
うれしい。
ようやく手に入った。
ところが、
少し落ち着くと、
別の考えが浮かんでくる。
これまで、
いくら使ったんだろう。
最初から普通に買えていたら、
いくらだったんだろう。
……やめよう。
せっかくの喜びに、
電卓を持ち込むのは無粋。
欲しかったものは手に入った。
お財布には、別の思い出が残った。
それでも、次に新しいガチャガチャを見つけると足が止まる。
今度は、欲しいものがある。
今度こそ、一回で出るかもしれない。
……この前も、そう思った。
希望だけ、毎回新品。
外れた記憶はある。
使った金額も、たぶん覚えている。
それでも、次の一回には期待する。
機械は昨日と同じ。希望だけ、毎回新品。
そして、ハンドルを回す。
カプセルが出てくる。
……違う。
記憶はある。
反省も、たぶんある。
とはいえ、ハンドルを回す手には伝わっていない。
理性は欠席。
物欲が単独で暴走中。



