幸せとは今この瞬間に感謝の灯をともすこと
駅で、
新幹線の運転士さんを待っている子どもがいた。
車掌さんのような帽子をかぶって、
背筋を伸ばして、
じっと立っている。
そして、
運転を終えて出てきた運転士さんと向かい合う。
運転士さん、敬礼。
子どもも敬礼。
……なんだか、めっちゃ完璧。
まだ乗ってないのに
その子は、
新幹線に乗るお客さんとして
待っているわけではない。
完全に職員側。
帽子までかぶっている。
姿勢もいい。
敬礼までできる。
「本日の勤務、お疲れさまでした」
そんな声が聞こえてきそうだった。
とはいえ、
5歳ぐらいのお子さんです。
乗客ですらありません。
なのに、
もう仕事をしている。
しかも、
誰にも採用されていない。
制服も支給されていない。
研修も受けていない。
履歴書すら出していない。
それなのに、
本人の中では、もう現場。
……この勢い、
大人になると急に消える。
憧れると、真似したくなる
子どもって、
憧れたものをそのまま真似する。
帽子をかぶる。
姿勢を真似る。
言葉を真似る。
そして、
その仕事をしているつもりになる。
大人になると、
そこまで素直に真似しない。
「こういう仕事、いいな」
と思っても、
「いや、私には無理」
とか、
「今さらねぇ」
とか、
「経験がないし」
とか。
そのあたりから、
やらない正論と言い訳会議が全力開催。
自分の中で、
本人不在の検討委員会。
メリット。
デメリット。
リスク。
そして、
費用対効果。
着地は将来性。
……始めた経験はこれまで一度もない。
なのに、
検討だけは一人前。
考えているうちに、
憧れはどこかへ行く。
子どもは、
そんな面倒な会議を開かない。
やりたい。
だから、やる。
自分の「やりたいこと」に忠実。
……まぁ、
倫理観や大人の常識などは、
横に置きますが。
できない理由だけ、上手くなる
仕事をしていると、
いつの間にか、
「これは私の仕事じゃない」
「そこまでやらなくていい」
「前例がない」
そんな言葉が増えていく。
もちろん、
全部を真似すればいいわけじゃない。
でも、
最初はきっと、
「やってみたい」
だったはず。
それが、
経験を積むほど、
「できない理由」
を探すほうが上手になる。
しかも、
大人の「できない理由」は、
年々よくできてくる。
ちゃんと根拠がある。
ちゃんと説明できる。
ちゃんと周りも納得する。
そして、
何も始めていないのに、
判断だけは終わっている。
……すごい。
ここまで来ると、
才能かもしれない。
子どもは、帽子をかぶる
子どもは、
憧れたら帽子をかぶる。
そして、
敬礼する。
大人は、
憧れたら検討する。
検討して、
また検討して、
最後に、
「今回は見送ります」
……人生で一度も経験したことがない。
失敗すらしたことがない。
なのに、検討だけ終了。
あの子のほうが、
よっぽど仕事が早い。



