福岡の偉人:福岡市 舞台に立ち続けた芸人・木村進

さぁ、今週も金曜日になりました。
福岡を語る上で、忘れてはいけない人がいます。
誰よりも注目を集めたのに、
本人は、その場所を望んでいなかった女性。
“日本一の美人”
そう呼ばれたことで、
人生が大きく変わってしまった人物。
今回紹介するのは、北九州市出身の女性。
末弘ヒロ子(すえひろ ひろこ/1893年~1963年)
日本初の全国美人コンテストで1位となり、
世間を騒がせた女性のお話です。
小倉市長の娘として生まれた“お嬢様”
末弘ヒロ子は、1893(明治26)年、
福岡県小倉市(現在の北九州市)で生まれました。
父は、小倉市長を務めた末弘直方。
舞踊、茶道、華道、琴、ピアノ。
当時の上流家庭の娘として、教養を身につけながら育てられました。
しかも、地元では
「小倉小町」と呼ばれるほどの美少女。
今でいう“有名人”に近い存在だったのかもしれません。
ですが、ヒロ子自身は前へ出たがる人物ではなかったこと。
むしろ、静かな令嬢として生きていた女性でした。
知らない間に、日本一になっていた
1908(明治41)年。
アメリカの新聞社「シカゴ・トリビューン」が企画した世界美人コンテスト。
この日本予選として、時事新報社が「全国美人写真審査」を開催。
これが、日本初の一般女性向け全国ミスコンと言われています。
応募総数は約7000人。
その中で全国1位になったのが、
16歳の末弘ヒロ子でした。
…ですが、本人は応募を知りませんでした。
写真館を営んでいた義兄が、
本人に無断で写真を応募していたのです。
突然、自分の写真が新聞に載り、
全国から「日本一の美人」と呼ばれる。
現代なら、祝福されたかもしれません。
ですが明治時代は違いました。
“美人すぎた”ことで退学になった
当時、ヒロ子が通っていたのは学習院女学部。
院長は、乃木将軍として知られる
乃木希典 でした。
学校側は、
「女学生が容姿を世間にさらすのは好ましくない」
として問題視。
しかも当時の女性像は、
「良妻賢母」
女性は慎み深くあるべき、
前へ出るべきではない。
そんな価値観が当たり前だった時代です。
結果、ヒロ子は諭旨退学となりました。
本人は応募すらしていない。
それでも、 “日本一の美人になった”
という事実だけで、
学校にいられなくなってしまったのです。
時代が、まだ追いついていなかった
この出来事は、全国で大きな議論になりました。
「美しいことは悪いことなのか」
「本人に責任はあるのか」
新聞も巻き込みながら、
世論が揺れたと言われています。
でも、ヒロ子本人は、
表立って反論しませんでした。
静かに学校を去り、
その後、野津侯爵家へ嫁ぎます。
目立ち続ける人生を選ばなかった。
そこに、
彼女の人柄が出ている気がします。
“時代に選ばれてしまった人”
末弘ヒロ子の人生。
日本初の全国美人コンテストで1位を取った人。
歴史に名を残す事例となる成功物語。
ですが、
時代が変わる瞬間、
本人の意思とは関係なく、
“象徴”にされてしまう人がいる。
に近い。
本人は望んでいない。
でも周囲が、勝手に“日本一”にした。
そして社会は、
女性はどうあるべきか
美しさを表に出していいのか
女性教育とは何か
を巡って騒ぎ始めた。
つまり彼女は、
“行動して時代を変えた人”
というより、
“存在そのものが時代を揺らした人”
だったのかもしれません。
編集後記
今の時代は、目立つことが価値だと思いがち。
フォロワー数。
再生回数。
「いいね」の数。
人の注目を集めたものが広がり、
面白おかしく消費され、
それがお金にも変わっていく時代です。
でも、末弘ヒロ子が生きた明治は逆。
“見られること”は、
女性にとって傷にもなった。
しかも彼女は、
自分から前へ出たわけじゃない。
義兄が写真を応募し、
新聞社が話題にし、
世間が「日本一の美人」として騒いだ。
周囲が勝手に価値を見つけ、
勝手に広げ、
勝手に有名にした。
・・・そして、人生が変わった。
今も昔も同じことが起こっている
これは、今のSNS社会にも少し似ています。
勝手に撮られる。
勝手に拡散される。
勝手に評価される。
勝手に炎上する。
本人の意思を全く考慮もせず、
“世間のおもちゃ”になってしまうことがある。
しかも怖いのは、
広げた側は責任を取らないこと。
拡散した人は次へ行く。
騒いだ人も忘れていく。
でも、人生を変えられた本人だけは、
その後を生き続けなければならない。
だから末弘ヒロ子は、
単なる“昔の美人”ではないのです。
他人の好奇心によって、
人生を変えられてしまった女性。
そしてそれは、
100年以上経った今も、
形を変えて繰り返されています。
私たちは便利さと引き換えに、
“何かを見て消費するスピード”だけを、
先に手に入れてしまっているのではないでしょうか。


