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自分の強みを活かしたストレスケアプラン:エコマップから学ぶ

2024年4月1日

テーマ:働く人のメンタルヘルス対策

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

自分の強みを活かしたストレスケアプラン:エコマップから学ぶ
セルフケア・メンタルケア・ストレスケアの重要性は分かっていても、中々取り組めない方は多いと思います。
何か新しいことに取り組もうと考えると、どうしても億劫さや「後でいいや」と考えてしまいますよね。
ですが今までどうにか出来ていた事実を思い出すと、「新しい何か」は本当に必要でしょうか。
今回は、既にご自身が持っているものや強みを活かしたストレスケアプランの立て方をご紹介します。

1.ストレスケアに「特別な何か」は必要ない

①ストレス源の多くは「慣れない何か」

人がストレスを感じる理由はたくさんあります。
例えばホームズ(Holmes,TH)の「社会再適応評価尺度」では、

◆配偶者の死(100)
◆個人の怪我や病気(53)
◆解雇・失業(47)
◆個人的な輝かしい成功(28)
◆生活条件の変化(25)
◆住所変更(20)
◆クリスマス(12)
※()内はストレス強度

が、人がストレスを感じる出来事として挙げられています。
配偶者や身近な人の死が大きなストレスなのは当然ですが、実はクリスマスまでストレスなのです。
つまり「日常」「いつも」「慣れているもの」ではない何かは、それだけで人にとってストレスを感じさせる理由になるのです。

②自分を守るのは馴染みがある慣れた習慣

ストレスケアやメンタルケアというと、例えばヨガを始めたりセラピーを受けたりするような「特別ななにか」を想像する方も多いです。
もちろんそうした取り組みには大きな効果が期待できます。
しかし「慣れないこと」は、それだけでストレスを感じさせます。

ストレスとは「精神的な緊張・刺激」を差します。
ですから全てのストレスがメンタルヘルスにとって害ということではありません。

◆ユーストレス…快ストレス。体に良い効果を示すストレス
◆ディストレス…不快なストレス。ストレスがうまく処理できず心身に負担がかかる状態

の2つに分かれます。

クリスマスも「快ストレス」になる人と「不快なストレス」になる人がいます。
ストレスケアのために新しい何かに取り組もうとすることが快ストレスになるなら是非やってみましょう。
しかし不安や負荷を感じるようなら、あえて手を出す必要はありません。
その場合のストレスケアは「慣れて馴染みがある習慣」を活用しましょう。

③ストレスケアは組み合わせが大事

どんなものがストレスケアになるか、は、個人ごとの好き嫌いや相性が大きく作用します。
皆でワイワイお酒を飲むことでスッキリ出来る人もいれば、お酒が苦手だったり、大人数で集まることが好きではない人にとってはストレスケアどころか別のストレスを生みます。

更に個人の中にある「ストレスケアに使える要素」も、ストレス源やストレス状態との組み合わせによって発揮される効果が変わります。
例えば過労で神経過敏になって夜よく眠れない状態になってしまったとき。お酒を飲んで酔っ払って寝てしまおう、と思うかもしれませんが、アルコールは睡眠の質を下げるだけです。それを知らずに寝酒の習慣がついてしまうと「飲んでも眠れないなんて自分は大きな病気かもしれない」と違う不安を抱え込む危険があります。

2.エコマップを応用し自分の強みを活かした「ケアマップ」を作ろう

①エコマップとは

エコマップという用語を聞いたことがあるでしょうか。主に福祉の現場で活用しています。
対象者を中心として、その人を取り巻く人物・環境・要素を図化したものです。

「エコマップとは、援助者が、利用者を支援するために利用者、家族、社会資源の関係性を図にしたもの。生態地図ともいわれる。1975年にアン・ハートマン(Ann Hartman)が考案した。
主に介護、障害、医療、教育の分野で、支援記録を作成するために使われる」
(wikipedia)


自分にとっては慣れ過ぎて「当たり前」と思っていたような要素や条件を描きだすことで、新たな発見があります。

②ケアマップの作り方

今回はこのエコマップの考え方を応用し、自分自身のストレス対処に活用できる「ケアマップ」を作ってみましょう。

ケアマップのルールをご説明します。

【書き方】
1.紙とペンを用意します。中心に「自分」を置きます
2.周囲に「毎日の生活」に登場する人物・場所・作業・役割・条件・環境を書き込みます
3.今自分がストレスに感じている問題に赤丸を付けます
4.赤丸要素のストレスが高まった時、それを軽減してくれる要素に青丸をつけます


一旦ここまで書いてみます。

3.問題解決への手がかりを探る

①一番の問題は何か

最初に書いたご自身のケアマップを眺めてみましょう。
赤丸がついた要素は、恐らく「丸ごと全部ストレス」ではないのではないでしょうか。
本当に100%ストレスで問題だと感じているなら逆に話は簡単です。
例えば職場に赤丸がついた場合、100%ストレス源でしかなければ、取る対策は「転職」です。悩むよりも転職活動を開始しましょう。

しかし職場にストレスを感じていたとしても、
◆ずっとやりたい仕事が今やっと任せてもらえるようになった
◆生活を考えても今の職場が最善だと思う
◆今転職するのは仲間への裏切りのように感じてしまう
などの理由があるはずです。

何が問題の核なのか、を今一度考えてみましょう。

②どうすれば軽減・消滅・解決できるか

問題の核を見極められたら、次はそれをどうすれば弱めることが出来るか、を考えます。
見極めた問題の核は、どんな時に強まりますか?

例えば職場に対して感じているストレスの原因が「上司」だったとします。
上司の何もかもが嫌(ということも往々にしてあり得ますが)というわけではなく、上司が何かをしたときに急激に拒否感・不満・憤りが高まることがある、と気づきました。

その時の対処方法はいくつかあります。
1.上司と話し合う
2.職場の同僚と一緒に対策を考える
3.拒否感・不満・憤りから来る精神的ストレスに対処する

今回のケアマップの主眼は3です。

もう一度先ほど描いたケアマップを広げてみましょう。
3に活用出来そうな人物・環境・条件・モノはありませんか?

③マップ上の配置を変える

ケアマップの中に、自分のメンタルを宥めたり和らげたり穏やかにしてくれそうな要素が見つかった、とします。
それをストレス源となる要素の近くへ配置しましょう。

例えば上司の言動でストレスが急騰したとき。
メンタルケアに役立ってくれそうな要素が「家族」だとすると、家に帰るまで我慢しなければいけないかもしれません。
しかし「家族の写真」「ペットの写真」を見ることで気持ちが和らぐとしたら、どうでしょうか。家に帰るまで不満や拒否感を堪え続ける必要はなくなります。

例えば休憩時間に家族にLINEを送ったり、ペットの写真や動画を見ることで一時的なケアが可能です。
更に「家族と今の生活を守るためには、あの上司とも上手に付き合っていくほうが得策だ」と考える余裕が生まれれば、上記の「上司と話し合う」方法を考えられるようになります。

4.事例で考えよう

①ケアマップを作る

それでは実際にケアマップを作ってみましょう。
以下の事例を使用します。

≪事例≫
作成者:Rさん(32歳、女性、既婚、東京都在住)
・結婚3年目
・去年から夫がうつ病で休職半年
・自分も仕事をしながら夫を支える。家事のほとんどはRさんが担当
・土曜日は仕事が休みだが、夫の通院に同行している
・趣味はドラマを見ること
・親しい友人はいるが、最近はSNSでやり取りをする程度


②何が問題か?

Rさんの一番の心配事は休職中の夫の状態です。
6ヶ月経って、最初の頃よりは安定してきているのでRさんが常に一緒でなければいけない状態も減ってきましたが、そうなると今度は「仕事はいつ頃復帰するのか」という悩みが出て来ました。しかし最初より安定しているとはいえ、仕事の話を切り出せるほど余裕があるようには見えません。

「夫」に赤丸を付けました。

③ストレスケアに役立ちそうな要素は?

Rさんの問題の中心には「夫」がいますが、夫の全部が問題なわけではありません。今一番ストレスになっているのは「夫自身が自分の仕事を今後どうしようと考えているのか分からない」ことです。
毎日の生活自体には大きな問題はありませんが、「夫の復職」を連想させるきっかけが何かあると、急に胸がどきどきして体が緊張し落ち着いて思考を巡らすことが出来なくなります。そうするとつい夫に「いつになったら復職するのは早く決めなくちゃいけないんじゃないの?」と、問い詰めるようなことを言いそうになってしまいます。そうした自分自身に対してもストレスを感じて落ち込みます。

まずは自分の緊張度を下げて、落ち着いて話が出来る状態を取り戻すことが「ストレスケア」の目的です。
Rさんはスマートフォンを持って夫とは別の部屋へ行き、仲の良い友人にLINEをしました。友人はRさんの家庭状況を知っているので優しい返事を返してくれました。
『辛い時に話を聞いてくれる友達がいる』ということを思い出せたことで、Rさんの緊張度が下がっていきました。

「友人(SNS)」が役に立ちそうです。

④マップ上の配置を変える

今回は時間帯的にすぐに友人から返事をもらえましたが、常に友人にLINEをするのも憚られます。どうしても我慢出来ないくらい辛い時のために「友人」を取っておくとして、もっと日常的に気軽に活用できるケア要素がないか探してみました。

そして思い返してみると、最近は忙しくてほとんど見ていなかった好きなドラマがあったことを思い出しました。久しぶりに一人でそのドラマを見ていたら、気が付けば先ほどの緊張は消えて、将来を焦る気持ちも無くなっていました。
夫に対しても「自分が好きにテレビを見ることを許してくれている」と考えることが出来、不必要に責める感情も無くなりました。

好きな物に集中することで気持ちが落ち着き余裕が生まれることを知ったので、次に復職について話題が出た時は「あとでドラマを見て気持ちを安定させれば大丈夫」と考えて勇気をもって夫に「今後どうしようか」と相談することを決意出来ます。

問題(夫)の近くに、「友人」と合わせて「趣味(ドラマ)」も配置しました。



5.ケアマップ作成時の注意点

①時間の経過による変化を考慮する

「今現在」の生活に注目してケアマップを作成しますが、その時に「今一番重要だけど○ヶ月後には確実に無くなる」ことが分かっているなら、それほど重視しなくても大丈夫です。
また逆もあります。○ヶ月後には今の問題を解消・軽減できる何かが得られる予定があるかもしれません。
その場合は、自分に負荷がかかる期間をどう過ごすか、を考えましょう。

②第三者からの影響はどれくらいか?

自分に直結する要素を書き入れた後は、間接的に自分に影響を与えそうな要素についても考慮しましょう。
特に第三者(人物)は要注意です。

例えばRさんの場合、Rさん夫のお母さんが遊びに来てくれるなら自分にも夫にもプラス要素ですが、お兄さんが遊びに来るとと夫のメンタルが大きく減退する、という場合。
予めお母さんに相談し、夫の状態が安定するまではお兄さんと距離をとることを認めてもらうことで、Rさん自身の不安も軽減できます。

③犯人捜しをしない

犯人、または原因を探し始めると、解決からどんどん遠ざかります。
特に特定の人物が問題の根本だ、と考えてしまうと、その人へのネガティブ感情に支配されて解決策を考えよう、メンタルをケアしよう、という思考に戻れなくなります。
もし100%その人だけが問題で、その人と距離をとることで問題が完全に永遠に解決する、という場合なら離れましょう。しかし中々そうしたケースはありません。
犯人捜しよりもストレスケア方法を探し、解決方法を考えるほうへ思考をシフトしましょう。

④興味関心が高いものは強味になる

生活上の関連要素を洗い出す中で、自然と自分が「好きなもの・興味があるもの」とそうでないものが分かれます。
この「好きなもの・興味があるもの」は、一見問題と関係ないとしても、自分にとっては強味になります。

例えばRさんが会社で上司に必要以上に強く叱責されて落ち込んだ日があったとします。暗い気分のまま家に帰ったら、その日は夫がRさんの好物を作って待っていてくれました。
一見仕事と関係ないようですが、Rさんの気持ちはぐっと楽になれました。
自分の好きなものや興味を持てるものを大事にして、増やしましょう。

6.出来上がったケアマップの使い方

①自分一人で取りかかれることから始める

効果が強いと考えられる組み合わせが見つかったとしても、他者の協力が必要だったり、実行できるために待機期間があるというケースもあるでしょう。
まずは今すぐ自分一人でできることから試してみてください。

②あとから更新しよう

一度出来上がったケアマップも、あとからどんどん更新しましょう。
「この組み合わせがいいかな」と思う要素同士も、実行してみたらそれほど効果が無かった、ということもあり得ます。
また生活していれば新しい要素や取り組みが増えていくことも多いです。新しい要素はどんどん追加していきましょう。不要になったら削除しましょう。

③精神的な余裕が生まれたら新しい要素を追加する

ストレスケアやメンタルケアの第一の目的は「精神的な安定と余裕を得る」ことです。
安定して余裕が生まれたらOK=完了、ということではなく、その余裕を活用して次の段階へ進むことが目的です。
冒頭で書いたような、特別なセラピーを受けたり、新しい目標を立てたりすることや、公的支援の利用申請をする、といった取組みが可能になります。
余裕が出来たときに新しい要素を追加するのはストレスにはなりにくいです。

7.まとめ

今の生活や自分自身を構成している要素には、無意識の信頼や愛着があります。
慣れているからこそ、場合によっては不足感や不満も感じてしまいます。
そして「もっと新しい何かが無ければ問題は解決しないのでは」と考えて焦ってしまいます。
しかし新しい環境や取り組みは「新しい」というだけでストレスです。ケアの必要性を感じているほど精神的に余裕がない時に新しいものを生活に取り入れるのは、ディストレス=不快ストレスになる可能性がとても大きいです。
それよりも慣れ親しんだ今の生活の中にある要素を振り返り、見直し、使い方を変えてみることで、今までにはなかったような効果が生まれるほうを試してみましょう。

そうして生活やメンタルを最適化した後で、必要ならば新しい要素を取り入れて、状況の好転化を目指しましょう。

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この記事を書いたプロ

西岡惠美子

精神障害者とケアする人を支えるライフカウンセラー

西岡惠美子(惠然庵(けいぜんあん))

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惠然庵(けいぜんあん)

担当西岡惠美子(にしおかえみこ)

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