精神障害者の就労について考える
家族、特に夫・父、または妻・母など、家族の主な収入源になっている働き手がうつ病などの精神疾患になったとき、何をしたらいいのか分からずパニックになります。
そして思わず励ましたり否定してしまって、追い詰められた本人とケンカになってしまったりする。
「働いている家族が精神疾患になったら」まずは何をしたらいいのか、をまとめました。
1.本人の話を聞く
いきなり診断結果をもって報告に来る人も少ないでしょう。
最初は「眠れない」「会社に行けない」「死にたい」という言葉から始まることが多いです。
ですので、すぐに「何の病気だろう」と考えず、話を聞きましょう。
きっとやっとの思いで口を開いてくれたのだと思いますから、その機会を逃さず聞きましょう。
ひたすら聞く、何を置いても聞く。質問しなくていいし意見も言わなくていいから聞けるだけ聞く。結論なんて出なくていいから本人が納得できるまで聞きましょう。
カウンセラーに話すのと家族に話すのとでは本人にとっての意味はまるで違います。
自分の辛さを受け入れてほしい、存在意義を確認したい、孤独じゃないと思いたくて必死ですから、聞けるだけ全部聞きましょう。
2.休養について相談する
どんな状況か、何があったか、どう考えているか、何が辛いのか。
それらを聞いた後は、まずは休養することについて相談しましょう。
いきなり休職を決める必要はありません。長期間の休養のためには医師の診断書が必要になる職場がほとんどですから、病院へ行く必要がありますし。
2,3日、週末だけで足らなければ有給取って、好きなことだけする「完全休養」を取ってもらいましょう。
これは元気になるための休養ではありません。
最低限の判断力を取り戻すための緊急対応です。
3.一緒に病院へ行く
3日後、病院に行くかどうか、の相談が出来るくらいまで回復したら、一緒に精神科または心療内科を受診しましょう。
心療内科は初診が取りづらいですから、すぐに受診出来ないかもしれません。
しかし今後しばらく通い続けることになりますから、通いやすさも考慮しましょう。
どうしても通院しづらい、または主治医と合わない場合は転院も全然OKだと思います。
しかし転院は本人の負担が非常に大きいです。
少し待期期間があるかもしれませんが、長い目で見て病院を探しましょう。
ある程度の規模の会社であれば、勤務先に産業医が常駐、または定期的に訪問して相談出来る環境が整っていますので、そちらに相談するのも一つの方法です。
産業医は主治医にはなれませんが、医師としての見解を伝えてくれるので心強いです。
4.現時点で使える支援制度をチェックする
病院を受診した結果一定期間の休養が妥当と判断された場合は、会社と相談したうえで休職することになるでしょう。
その場合、以下について確認しましょう。
①勤務先の就業規則
休職時の手続き方法や、どれくらいの期間休職できるのか、会社独自のサポートはあるのか、などが記載されています。
または人事総務部など、担当部署に問い合わせましょう。
②傷病手当金の申請
体調不良で3日以上欠勤が続いた場合、4日目以降から傷病手当金の支給対象となります。
これは過去12か月間の平均給与の2/3を受給できる制度です。
最大1年6カ月受給出来ます。受給中に退職しても働けない状態が続いていれば満期まで受給出来ます。
会社の制度と混同されることがありますが、これは加入している健康保険組合の制度です。
なので自営業や個人事業主のように国民健康保険に加入している場合は該当しませんのでご注意ください。
③自立支援制度(精神通院医療)の申請
障害者総合支援法という法律で規定されている、長期にわたって通院が必要な精神疾患の場合、受診料+薬代の自己負担が1割または一定金額にまで抑えられる制度です。
世帯収入によって上限は異なりますが、通院する病院と薬局が決まり、数カ月通うことが想定されたら申請しましょう。
申請先は市町村です。
5.更に長期にわたった場合
①精神障害者保健福祉手帳
初診から6カ月以上経過すると申請出来ます。
1~3級まで3つの等級があり、一緒に提出する主治医の診断書によって判断されます。
手帳を保有することで、税制上の優遇や携帯電話の通話料の割引、公営住宅に優先的に入居出来たり各種割引が適用されます。
また、将来的に障害者雇用枠を利用して就業する場合にも活用出来ます。
②障害年金(基礎/厚生)
初診から1年6カ月以上経過すると申請できます。
受給にあたってはかなり煩雑な手続きが必要です。
まずは年金事務所に相談することになりますが、個人、家族だけでは対応しきれない時は社会保険労務士に相談することをおすすめいたします。
③退職後の年金保険料の減免
休職だけでは回復出来ない(職場が原因だと、連絡を取り続けたりいつか戻らなければいけないと思うことが悪影響を及ぼすこともあります)時は退職もあり得るでしょう。
その時は年金や健康保険の変更手続きが必要になります。
健康保険料は前年の収入をもとに保険料が計算されますが、国民年金は固定(月額16,520円)です。この負担が重くて未納になってしまうケースも少なくありません。
ただし、将来的に障害年金を申請する可能性があるなら、未納期間があると受給資格に該当しなくなる恐れがあります。
退職して収入が減った、病気があってすぐには転職出来ない、という事情を市町村の年金課に相談して、減額(全額・1/2、3/4)または免除、猶予等の手続きを行いましょう。
6.対応時のポイント
家族が病気になった、という状況は誰にとっても驚きだしショックだし慌てます。
だからこそ、以下のポイントにご注意いただきたいです。
あわてない
本人・自分の不安をあおらない
分からないことや辛くなったら専門家を頼る(医師、カウンセラー、役所、弁護士など)
一般論<本人の訴えで、本人の話を重視する
自分(家族)のせいだ、と考えない
一般的なニュースとして精神疾患について知っているのと、ごく身近な人がその病気になるのとでは自分にとっての意味合いが全く違います。
だからショックやストレスを感じても慌てなくて大丈夫。それが普通の反応です。
困ったことがあれば一人で抱え込まず、専門家に相談しましょう。
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