家族ケアをする人のレスパイト(福祉サービス編)

テーマ:社会保障制度・障害者支援

家族ケアをする人のレスパイト(福祉サービス編)
「レスパイト」をご存じでしょうか。
言葉の意味では「休息」「一休み」です。
福祉の世界では、介護対象者を施設で一時預かりすることで、その間在宅でケアを請け負っている人にゆっくり休息を取ってもらう、という意味で使います。

高齢者介護に限らず在宅で家族のケアをしている人には等しくレスパイトが必要です。
特に家族の精神障害のケアをしている人のレスパイトについて考えてみました。

1.一般的なレスパイトサービス

原則65歳以上の要介護認定を受けた人には、介護保険サービスの「デイサービス」が利用出来ます。
これは日中介護施設で対象者を預かってくれるサービスです。または「ショートステイ」といって宿泊込みで短期間預かってくれることもあります。
目的としては対象者のリハビリテーションですが、その間自宅では介護の必要が無いため、ケアする人は休息をとることが出来ます。

ただし、これは高齢者対象です。
64歳以下のうつ病等の精神障害者は対象外です。
精神障害者を対象とした直接的なレスパイトサービスはありませんが、精神障害者の家族にもレスパイトは必要だと考えています。

2.レスパイトサービスに代わるサービスは?

介護保険のように「レスパイト」と名がついた支援はありませんが(もしもあったら申し訳ありません。私の勉強不足です)、それに代わるサービスはあります。

要は、精神障害者を一人にせず、家族が付きっきりにもならずにいられる時間を作ることが必要なのです。
本人の回復度合いに拠りますが、該当するのは以下のようなものです。

①生活介護

常時介護を必要とする障がい者が主に昼間において施設などで入浴、排泄、食事の介護や創作活動、生産活動の機会の提供などを受けることを指します。
生活介護は、障がい者が自立した日常生活や社会生活を営むことを目的に行われています。(介護ワーカー)

精神障害で生活介護が「常時必要」となると、障害者手帳では1級相当と思われます。入院している方が多いかもしれませんが、在宅でケアするとしたら活用を検討出来るでしょう。

②自立訓練:生活訓練

自立した日常生活や社会生活がおくれるよう、生活能力の維持・向上のための訓練や助言などの支援を提供するサービスです(ココルポート)


地域生活を営む上で、生活能力の維持・向上等の必要がある知的障害者・精神障害者が対象です。
施設へ通所して、コミュニケーションや生活リズムを整えるための活動を行います。

③デイケア

精神障害のある方が、社会参加、社会復帰、復学、就労などを目的に様々なグループ活動を行う通所施設です。 スポーツ、創作活動、料理実習、パソコン学習、ミーティングなど様々なプログラムを行います。
精神科リハビリテーション治療の一種とされ、精神疾患の再発防止に効果があり、健康保険の適用が認められています(埼玉県HP)


④地域活動支援センターⅠ型

地域において自立した日常生活や社会生活を営むことができるように、利用者に創作的活動や生産活動の機会を提供し、社会との交流の促進を図るとともに、日常生活に必要な便宜の供与を適切かつ効果的に行う施設です(社会福祉法人 三鷹授恵会)


Ⅰ型には社会福祉士・精神保健福祉士がスタッフとして勤務しています。
リハビリや就労準備のような目的は強くなく、まずは家の外に出る習慣をつける、他の人と交流を持つ、などの過ごし方をする人が多いです。

⑤障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的として、全国に設置されています(厚生労働省)


居住地、またはすでに働いている方は就労場所によって担当のセンターが決まっていますので、HPで検索するか市の障害福祉課に問い合わせると教えてくれます。
訓練や就労支援だけでなく、週末に独自のイベントを実施したり、長くお世話をしてもらえます。

⑥就労移行支援事業所

学校のように通いながら就職に向けたサポートを受けることができる場所です。
個別の支援計画に沿って、他の利用者と一緒に就職に役立つ知識や必要なスキルを学ぶこと、就職の準備をすること、就労支援員に就職や体調に関する相談することなど、必要なサポートを受けることができます(リタリコワークス)


NPO等だけでなく近年は一般企業が開設している事業所もありますので種類は豊富です。
ただし最大24か月まで、という利用期間の制限があります。

⑦ハロートレーニング(公的職業訓練)

雇用保険を受給している求職者の方を主な対象とする『公共職業訓練』と雇用保険を受給できない求職者の方を主な対象とする『求職者支援訓練』があります。
これから働こうとする方、また働いている方がキャリアアップや希望する就職を実現するためのツールとして活用できます。就職に必要な職業スキルや知識を習得するために、無料で受けられます(厚生労働省)


学校へ通わなければ行けない、卒業後は就労へ続くことを考えると、かなり状態が安定して意欲的になっている方が対象になるでしょう。
そこまで回復している方であれば家族も特段レスパイトを必要とはしていないかもしれませんが、将来への選択肢の一つとすることが出来るでしょう。

本人の状態によってサービスが変わる

全てを同時に利用する、ということはおそらく無いと思います。回復度によって活用するサービスが移り変わっていく、と考えていただくほうが分かりやすいかもしれません。

例えば「一通りの身の回りのことは自分でできるけど、まだ仕事に復帰する意欲はない」場合。
日中家にいるだけでは退屈したり、場合によっては症状が後退しそうだから外へ出たい、という時には「④地域活動支援センター」の活用がちょうどいいでしょう。

3.利用方法

①・②・④・⑤・⑥については、障害者総合支援法に基づく支援ですので、「障害支援区分」の認定を受ける必要があります。
そして「サービス等利用計画」を提出し、それに沿って個別のサービス利用を検討することになりますので、まずはお住まいの市町村の障害福祉課へお問い合わせください。

③は病院で実施されるリハビリテーションケアです。現在通院中の病院へお問い合わせください。聞くまでもなく主治医から案内されている方が多いかもしれません。

⑦の窓口はハローワークです。これもお住まいの地域によって管轄が決まっておりますので、管轄のハローワークへお問い合わせください。

4.福祉は「全ての人のためのもの」

福祉、と聞くと、ごく一部の人だけが利用する・出来るもの、というイメージを持っている方は多いと思います。
ですが実際は「全ての人のためのもの」です。
どのタイミングで利用するか、の違いだけです。

福祉サービスに頼るのは甘えでは、自分たちの力不足では、とは決して思わず、話を聞くだけでも、一度窓口を訪ねてみてください。
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次回は「公的サービス以外でレスパイトするには?」を考えてみたいと思います。

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西岡惠美子プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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