感情をモニタリングする
ネガティブかポジティブかは関係なく、感情とはその場の状況に応じて自動的に湧き上がってくるものです。
ポジティブなものだけ拾い上げて、ネガティブなもの(自分に不都合なもの)は全部消去する、ような便利な機能は人間にはついていません。
自然に沸き上がり、強力で、あとまで残るネガティブな感情をどのように取り扱えばいいのか、を、考えてみました。
1.ネガティブ感情の種類
ネガティブな感情とは、どんなものがあるでしょうか。
- 怒り、緊張、不安・恐怖
- 苛立ち、焦り、妬み
- 悲しみ、孤独感、失望、喪失
- 罪悪感、羞恥
- 無力感
など、挙げればきりがないでしょう。
そしてどれも一度は感じたことがある身近なものだと思います。
大きなものではなくても、些細なネガティブ感情は、常に心のどこかで感じてしまいます。
2.ネガティブ感情の特徴
こうした感情が沸き上がること自体はコントロール出来ません。
感情は、感情の発露⇒感情への認知(自分がどう解釈するか)⇒反応⇒行動、と繋がっていきます。
ポジティブな感情や、どちらでもない中立的な感情は、強く感じることがあったとしても、ほとんど自分の中だけで消費してしまいます。気がつけば消えてなくなっていることも多いでしょう。
それに対してネガティブな感情は、「何としても解決しなければならない問題」に姿を変えます。
たとえば、友人に約束を反故にされたことへ「怒り」を感じた時。
この場合の怒りを「友人が自分を蔑ろにしている」と考えた(認知した)とします。
自分はそんな存在ではない、ということを相手に主張しなければ、という考えにいたり(反応)、
その友人に対して、怒りとセットになった主張行動、「抗議」をするに至ります。
抗議することが、「自分を蔑ろにした友人の行動を正すための解決方法だ」と認識しているからです。
同じケースでも、怒りではなく「孤独感」を感じる人もいるでしょう。
楽しみにしていた約束が無くなった残念さだけでなく、「自分は他者から大切にされない、価値がない人間だ」という認知が湧き上がってきます。
こんな孤独感を感じてしまうくらいなら、いっそのこと今後誰とも付き合わなければいい、と考え(反応)、
この友人が埋め合わせのために再度予定を立て直そうと提案しても受け入れないことを選択し、更に孤独感を募らせるかもしれません。
3.ネガティブ感情の役割・メリット
「解決しなければならない問題に姿を変える」のがネガティブ感情の特徴だとすると、まさにそれが役割だと言えます。
- 怒り、緊張、不安・恐怖 ⇒ 身の危険から自分を守る
- 苛立ち、焦り、妬み ⇒ 予定通り進まない状況へのアラート
- 悲しみ、孤独感、失望、喪失 ⇒ 環境が変化することへの準備
- 罪悪感、羞恥 ⇒ 周囲との調和を重視する
- 無力感 ⇒ やり方・達成目的の見直し
が、それぞれの役割だと言えます。
どんなに頑張ってもこちらの努力を評価してくれない親、上司、教師。
評価されたい、という目的が果たされないことで無力感に襲われたら、「自分には価値がない」と考えるのではなく、努力の仕方や、目的(親・上司・教師から評価されたい)が間違っているのでは、と考え直すことで、努力するエネルギーを違うことへ向けることが出来るかもしれません。
4.ネガティブ感情の影響・デメリット
では逆に、ネガティブ感情が沸いてきたことで、どんな影響が出てしまうでしょうか。
大きく分けて2つあります。
①自分自身への影響
まずは体への影響です。怒りや緊張、不安などは急激な血圧の上昇を招き、頻発することで循環器系の疾患へつながるリスクがあります。
交感神経が優位になることでリラックス出来ず、緊張状態が続き、睡眠の質を下げます。続けば日中の集中力が低下したり、頭痛などの不調が常態化します。
孤独感や罪悪感により、自分に対する価値を見出せなくなり、やる気が起きなくなっていくかもしれません。
②周囲への影響
上述した「怒り」から「抗議行動」を選択した事例のように、問題解決の方法が他者との関係を悪化させる事態を招くことがあります。
妬みを募らせることで、妬む相手は何もしていないのに良好な関係が築けず、相手のメンタルヘルスを損なうかもしれません。
不安や恐怖が高まりすぎて行動が制限され、必要な場(仕事、学校、冠婚葬祭)に赴くことが出来ず、関係者の負担が増える可能性もあります。
5.ネガティブ感情の取り扱い方
その役割と影響を見てきたところで、では、勝手に沸き上がってくるネガティブ感情をどう取り扱えばいいか、を考えましょう。
ネガティブな感情を強く感じているとき、自分がその感情に覆われて圧倒されているように感じることはありませんか?
ネガティブ感情、という無限の空間に取り込まれて、回りが何も見えなくなっているような感覚です。
そうなってしまうと、感情⇒認知の言うがままになってしまいます。
認知の仕方がそれほど自他に大きな影響を与えるものでないなら、それでも問題ないかもしれません。
しかし、圧倒され、振り回されては、解決方法など思い浮かぶはずがありません。
ネガティブ感情は、「外から見る」ことが必要です。
ネガティブな感情が沸いてきて、それを厄介に感じている自分もまとめて「外から観察」しましょう。
外から見ることで、全体像が見えます。どんな大きさか、形か、色か、質量か。
何より「外から見る」ということは、感情に覆われない、ということです。
感情はどんなに強くても、自分自身より大きく無限なものではない、と認識することが出来ます。
それによって、解決方法が見えてきます。
6.取扱いに必要なスキルは?
この時に必要なスキルが「マインドフルネス」です。
ネガティブ感情に覆われて身動きが取れていない時は、「もしも~だったら」「あのとき~していれば」のように、「今、現在、この瞬間」ではない時系列に思考が囚われています。
マインドフルネスは、今この瞬間の自分に立ち戻る手法です。
静かでリラックスできる場所へ移動しましょう。
椅子に座るか、体を横たえて、力を抜いて自分が「楽だ」と感じる体勢をとります。
目を閉じて、周囲を感じましょう。音、匂い、感触、温度など。
他のことを考えそうになったら、自分の呼吸について考えましょう。
鼻から吸ってますか? 口ですか? どちらで吐き出してますか?
吸った時、膨らむのは胸ですか、腹ですか? 吸って吐く間は短いですか、ゆっくりですか?
今の自分を時間をかけて感じましょう。
静かな場所で、落ち着いて呼吸を整えることが出来ている状況を実感しましょう。
焦らなくても慌てなくても、自分が損なわれることはない、と理解しましょう。
そして、自分がさっきまで感じていたネガティブ感情を外から観察します。
少し前に自分が感じていた感情を、第三者になって観察します。
外から見たからといって、消えてなくなるわけでも心地よくなるわけでもありません。
その代わり、「これ(ネガティブ感情)をどうしようか」と、手に取ることが出来ます。
そこまで来たら、自分なりの対処方法を検討出来る準備が出来た、と言えるでしょう。
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ネガティブ感情をどう解釈するか(認知)、は、人によって様々です。
今まで生きてきた中で経験したこと、影響を受けたもの、成功・失敗体験などが影響しますから、一朝一夕に変えられるものではありません。
すぐに変えなくては、と思うと、それもまた「無力感」という別のネガティブ感情を招き寄せてしまいます。
第一歩としては、自分がどんな認知の仕方をしているのか、を、「観察」によって知るところから始めましょう。