組織力強化:自分を育てる・組織を育てる:大切な3つのポイント

小川芳夫

小川芳夫

テーマ:ファシリテーション

このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。
特に20代30代の、これから自己育成に関心をお持ちの方々、伸びしろのある世代の方々にとって、参考にしていただけるような内容を書きたいと思い、「自分を育てる・組織を育てる」というテーマで書きます。

コロナ禍の時代になり、ジョブ型・成果主義への動きがあります。このコラムの導入部分として、ジョブ型・成果主義への動きの実例をいくつか見てみましょう。

『雇用制度、在宅前提に「ジョブ型」や在宅専門の採用』

2020年6月8日の日経電子版の 『雇用制度、在宅前提に「ジョブ型」や在宅専門の採用』 という記事は下記2点を指摘しています。

  • 国内企業の多くは労働法制の制約もあり労働時間に応じて賃金を支払う仕組みが長く定着していた。しかし、会社でない場所で働く社員を時間で管理するのが難しく、労働基準法で定められた残業代支払いルールに抵触する恐れもあった。
  • こうした問題を解決するため、企業は職務定義書(ジョブディスクリプション)で社員の職務を明示して、その達成度合いなどをみる「ジョブ型」雇用の導入を進めている。


『三菱重工が成果型評価 まず4万人対象 若手つなぎ留め』

2020年10月20日の日経朝刊記事 『三菱重工が成果型評価 まず4万人対象 若手つなぎ留め』 から抜粋します。
『三菱重工業は国内グループ従業員4万人を対象に人事評価制度を見直すことで検討に入った。2021年10月以降、役割や成果に応じて昇給する新たな仕組みとする。長年、年功序列や終身雇用を維持してきたが、世代交代への対応や優秀な若手を獲得するため成果ベースに移行する。伝統的な製造企業でも人事制度改革が本格化してきた。』

優秀な若手をつなぎ留めるため、獲得するため、という理由に着目すべきだ、と私は考えます。

『三井住友海上、賞与の差 課長級で2倍 来年から一部ジョブ型』

2020年11月4日の日経朝刊記事 『三井住友海上、賞与の差 課長級で2倍 来年から一部ジョブ型』 から抜粋します。
『資産運用、データサイエンティスト、保険数理などの専門職は22年4月から完全ジョブ型雇用を導入する。在籍年数にとらわれずに年俸を設定し、中途採用を強化する。
専門職以外の社員では21年4月から人事制度が成果重視になる。上司が期待する行動や成果を明示し、本人と合意した上で考課の基準とする。』

年功要素が残る金融業界でも、成果重視に切り替える動きが出てきたということで、この傾向は強まりそうですね。

マネジャーも従業員も慣れていないので、最初は混乱するかもしれません。個人個人としては、「求められている◯◯できる能力」を磨くことが喫緊の課題になった、と私は考えます。

『シニアも成果主義 カシオ給与変動、明治安田は管理職に』

2021年2月5日の日経記事『シニアも成果主義 カシオ給与変動、明治安田は管理職に』から抜粋します。
『働き方の多様化で定年がキャリアのゴールではなくなるなか、シニア人材にも競争を促し生産性の底上げを狙う企業が出はじめた。カシオ計算機は50歳以上の社員限定で副業を全面解禁し、60歳以上のシニア社員を対象に成果主義を導入した。システム開発のTISなどでも同様の取り組みが進む。シニア人材は労働力人口の3割を占め、各社とも活用を急ぐ。』

記事では、カシオ計算機、TIS、SCSK、明治安田生命、JR西日本、味の素AGF、NTNの事例が紹介されています。

『みずほ総合研究所の堀江奈保子主席研究員の試算では再雇用などで70歳まで働く人が増えた場合、企業の人件費は2040年に65~69歳だけで19年比3割多い6.7兆円に膨らむ。クレイア・コンサルティングの嘉山央基コンサルタントは「戦略的な人材活用に切り替えなければ企業の生産性は落ち、競争力も損なわれる」と指摘する。』と記事を閉めています。

年齢に関係なく、ジョブ型・成果主義の傾向が強まっています。

日本のビジネスパーソンだけでなく、他国のビジネスパーソンにも求められている能力も変わってきそうです。(参照:コロナ禍の変化に対応する:2021年のスキルを考える)2021年は働き方の転換点になるかもしれません。


導入部分が長くなってしまいました。
ジョブ型・成果主義への流れに備えるべきなのでしょうね。自分を育てるべきです。その延長線上として、あなたが所属する組織を育てるべきです。

東京の西日暮里に私立開成中学校・高等学校があります。進学校として有名な学校です。2020年1月に、当時校長だった柳沢先生のお話を拝聴する機会がありました。
テーマは「人を育てる〜これからの日本に必要なこと〜」でした。

拝聴したお話をもとに、私の視点で「自分を育てる・組織を育てる」を書いてみたいと思います。

このコラムは次の3つの章で構成します。10分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。

ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。


1. マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段階説をご存知ですか?

マズロー。アブラハム・ハロルド・マズロー(Abraham Harold Maslow)といい、アメリカの心理学者です。
ウィキペディア を参照しながら、マズローの欲求5段階説を簡単に説明します。

まず、マズローは仮定として、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である。」としました。その上で、下記の第1段階から第5段階を主張しました。第1段階が土台にあり、その上に第2段階、その次に第3段階、といった具合に、積み重なっていきます。

第1段階:生理の欲求

生命を維持するための本能的な欲求です。
食欲、睡眠欲、排泄欲、などの欲求です。

第2段階:安全の欲求

安心・安全な暮らしの欲求です。
病気にかかりたくない、事故に遭いたくない、などの欲求です。

第3段階:社会的欲求

友人や家庭、社会から受け入れられたいという欲求です。
第1段階の生理の欲求と、第2段階の安全の欲求が十分に満たされると、この欲求が現れるそうです。
自分が社会に必要とされている、果たせる社会的役割があるという感覚です。情緒的な人間関係や、他者に受け入れられている、どこかに所属しているという感覚といえます。
この欲求が満たされない状態が続くと、孤独感や社会的不安を感じやすくなります。

第4段階:承認(尊重)欲求

他者から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求です。尊敬されたい、認められたいという欲求です。
マズローは第4段階を、低いレベルと高いレベルに分けました。

  • 低いレベルの尊重欲求:他者からの尊敬、名声、注目などを得ることによって満たされる。
  • 高いレベルの尊重欲求:自己尊重感、技術や能力の習得、自己信頼感、自律性などを得ることによって満たされる。他人からの評価よりも、自分自身の評価が重視される。


外的部分を満たしたい第3段階までとは異なり、内的な心を満たしたい欲求です。
この第4段階の欲求が妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じます。

第5段階:自己実現欲求

自分の世界観・人生観に基づいて、「あるべき自分」になりたいと願う欲求です。
第5段階だけはこれまでの欲求とは質的に異なり、潜在的な自分の可能性の探求、自己啓発行動、創造性の発揮などを含み、自己実現の欲求に突き動かされている状態です。
マズローは最初の4欲求を「欠乏欲求」、最後の1つを「存在欲求」とまとめています。


2. 「人を育てる〜これからの日本に必要なこと〜」を拝聴して考えたこと

柳沢先生は、中学生・高校生に代表される若者を育てるという視点で語っていました。
私は、柳沢先生の話の殆どが、ビジネスパーソンにとっても当てはまる、と思います。

多様性を認める

少子高齢化が進んでいる日本、今よりもっと多様化しないと、日本は生きていけないと仰っていました。
いろいろな国、いろいろな文化、いろいろな考え方、いろいろなXXX、と付き合っていく必要があるということです。
そのためには、活力や豊かな気持ちを育むことが必要とのことでした。

今よりもっとインクルージョンを大切にする必要があるとも言える、と私は考えます。
インクルーションについては、『組織力強化:職場の多様性とは?:今考えるべき3つの視点』というコラムで、職場にはインクルージョンが必要であることをわかりやすく説明しています。
インクルージョン。あなたは準備ができていますか?既に実践していますか?

柳沢先生は、多様性を認める教育が必要だと仰っていました。
人間は社会的動物です。マズローの5段階欲求の第4段階の承認欲求(他者から価値ある存在と認められたい)が満たされることが大切なのだと思います。
ビジネスの世界であれば、多様性を認め合う職場である必要がある、多様性を認め合う人である必要がある、ということだと思います。


自己肯定感と自信を高める

若者の自己認識について、他国との比較を教えてくださいました。
日本の若者は、自己肯定感と自信が、他国と比較してかなり低いそうです。特に20歳〜24歳が低い。
これでは、多様化する中で、自己肯定して自信を持った他国の人たちと、生きていくのは楽ではないでしょう。

「日本は苦手なことを何とか克服して伸ばそうとする。外国は得意分野を伸ばそうとする。日本は同調圧力が強い社会なので、皆と同じようにして目立たないようにする傾向がある」と仰っていました。
その通りだと思います。萎縮しちゃうんですよね。皆と同じようにして目立たないようにしていたら、多様にならないのです。自分を隠す必要はないのです。

自己肯定感と自信を持てるようにするには・持てるようになるには、自分が社会の中で求められていると感じられること、居場所があること、これが必要です。否定されない安心安全な場で、自分の意見を自由闊達に言い、自分の意見が受け入れられること、これが必要です。

マズローでいうと、第3段階の社会的欲求(他者と関わりたい、集団に帰属したい)と第4段階の承認欲求(他者から価値ある存在と認められたい)が満たされることが大切ということだと思います。

垂直比較で褒める

柳沢先生は、「垂直比較で褒める」という表現をしていました。
誰かと比べる「水平比較」ではなく、自分で自主的に自律的に目標を決め、そこに到達する体験を通して、達成感と成功体験を得ることが大切だと仰っていました。自分が以前できなかったことが、今はできる、コレを自分で自分を褒める、ということです。どんな目標(到達点)でもOKだそうです。

達成感と成功体験を得ることが目標なのであれば、チャレンジすればできるような到達点であることが大切です。できるだけ頻繁に達成感と成功体験を得ることがキーポイントである、と私は思います。
これは、ビジネス変革やデジタル変革(DX)を実現する際にも当てはまるキーポイントなのです。

人は、自分より弱い者にはNOと言う傾向があり、自分より強い者にはYESと言ってしまいがち

「人は、自分より弱い者にはNOと言う傾向があり、自分より強い者にはYESと言ってしまいがち」との事。
もし、あなたが自分もそういう傾向があるな、と思ったら、そのバイアスを意識して注意するだけでも、変わることができるかもしれません。つまり、そうしてしまう危険性がある、ということを意識して、予防しようとするか否かは大きな違いなのです。

一つの提案はYes Andです。何かの意見・アイデアを言った時、「いいねそれ。じゃあさらに…」と繋げてくれたらどうでしょうか?「あなたの意見が受け入れられ議論の展開に役に立っているよ」と言ってもらっているのと同じ意味があります。

Yes Andの対語はYes Butです。「いいねそれ。でもさぁ…」となったらどうでしょう。「あなたの意見は受け入れられないよ」と言っていることになるのです。

はじめに個がある、そして個と個を紡ぐ

柳沢先生の話で一番共感したのは、「最初に個がある」というお話しでした。
個と個を紡ぐことで多様性を認め合う。

ビジネスパーソンの観点で言うと、個々にスキルを研鑽し個々がとんがる
そして個々の多様性を認め合う必要があるのだと思います。

組織には、専門性の高いスタッフが集まっていて、個々人の専門性は、ある領域では主任や課長などのリーダーよりもスタッフの方が専門性が高い、という状況になる必要があると思うのです。あなたが所属するチームはどうですか?既にそういうチームになっているかもしれませんね。
まず、自分がコレと思うものを研鑽することが良い、と私は思います。

量の変化は質の変化をもたらす

また、「量の変化は質の変化をもたらす」というお話にも共感しました。
知識の量を増やすには、まずは知識を吸収し理解する段階があり、教え合うこと(吸収・理解した知識を発信すること)で知識は定着し、さらに次の段階では知識は創造につながる、とおっしゃっていました。

ビジネスパーソンの観点では、まずはスキルを学ぶ段階、次にそこそこ定着したスキルを実際のリアルな仕事で試す段階、次にスキルを自分のものにする段階、最後に組織内のチームで協働して何か新しいことを創造する段階と進化していく、ということなのだと思いました。

ある領域で部門内においては一流のスキルを持っているとんがった人がいるとします。
その人のようになりたいと思い、学び教えを乞う、そういう人もとんがった人だと思います。

マズローでいうと、第4段階の承認欲求(他者から価値ある存在と認められたい)が満たされ、さらに第5段階の自己実現(自分の能力を発揮して創造的活動をしたい)が満たされるよう努力することが大切なのでしょう。


3. 自分を育てる・組織を育てる

この章では、このコラムのテーマである「自分を育てる・組織を育てる」について掘り下げて考えます。

2章でのキーポイントは下記の3点でした。

  • 多様性を認める
  • 自己肯定感と自信を高める
  • はじめに個がある、そして個と個を紡ぐ


冒頭書いたように、雇用は「ジョブ型」に変わり、成果で評価されるようになることが予想されます。
2章では、「組織には、専門性の高いスタッフが集まっていて、個々人の専門性は、ある領域では主任や課長などのリーダーよりもスタッフの方が専門性が高い、という状況になる必要がある」ということを書きました。

専門性の高いスタッフで構成されるチームを、うまくチームビルディングして、チームとして協働し成果を出せるようになることが肝心だと思います。どんなに優れた人でも、一人でできることは限られていますから。

『組織力強化:コロナ禍の職場のチームを再構築する:大切な3つのポイント』というコラムでは、コロナ禍の現状に合ったかたちで、再びチームビルディングすることが必要であり、特に大切なことは心理的な安心安全だと考える、と書きました。


安心安全で自分が受け入れられていると思える職場

「安心安全で自分が受け入れられていると思える職場」対語は「不安危険で自分のことを受け入れてくれないと思ってしまう職場」でしょうか。後者は完全にブラックな職場といえるので論外だとして、直線を書いて「不安危険」を左端において、「安心安全」を右端においたら、あなたの職場はどの辺ですか?左端でもないし右端でもないし、中間のどこかに位置するのではないかと思います。

ここでのポイントは次の3つです。

  • 否定されない安心安全な場
  • 前向きな話し合い
  • アイデアを紡ぎ合わせようとしている

話し合いの場で、これらのポイントを実現するためには、ファシリテーションが役立ちます。

柳沢先生は、「人は、自分より弱い者にはNOと言う傾向があり、自分より強い者にはYESと言ってしまいがち」と仰っていました。

自分より立場の弱い者に、NOと言ってしまう、Yes Butと言ってしまう、そんな危険性があるということを意識するか否かで変わってきます。
多様な意見を尊重し受け入れましょう。


Yes ANDです。これが習慣として身につくまでには、強く意識することが必要です。
話し言葉やメールなどの文章で「◯◯ですが、△△」などと「が」で繋いでいる人は多いです。その「が」、本当にそこにBUTは必要ですか?
「いいねそれ。でもさぁ…」というニュアンスを醸し出してしまいます。そうしたいのならOKです。でも、本心はそうでないとしたら、本心でないことを伝えてしまっているのです。「◯◯を否定する必要は本当にあるのか」ちょっと立ち止まって見直すことを癖にすることも良いのではないか、と私は思います。
(これは私が実践していることです)

前向きな話し合いをする環境を作り出すのに Yes AND は役立ちます。
また、アイデアとアイデアを紡ぎ合わせて、新たなアイデアを創造するための触媒として、ファシリテーションは役立ちます。



ファシリタティブなリーダーシップが求められている、組織力を最大化できるファシリタティブなリーダーが求められている

このコラムのテーマは「自分を育てる・組織を育てる」です。

今まで述べてきたことをまとめると、次の2点に集約されます。

  • 個々人は、組織の中で役立つスキルを身に着けることが大切
  • 組織としては、個々人を受け入れる安心安全な職場であることが大切


個々の人は、自分がコレと思うものを研鑽することが良い、と私は思っています。ファシリテーションのスキルを研鑽したい人もいるでしょうし、プロジェクト・マネージメントかもしれないし、データサイエンスなどの技術的なスキルかもしれません。なんでも良いと思います。大切なのは「そうなりたいと思う強い思い」だ、と私は思います。

柳沢先生が仰る「垂直比較で褒める」です。誰かと比べるのではなく、自分で自主的に自律的に到達点を決め、そこに到達する体験を通して、達成感と成功体験を得ることで、その強い思いを持続させてください。できるだけ頻繁に達成感と成功体験を得ることがキーポイントである、と私は思います。

「そうなりたいと思う強い思い」を持って努力している個を認め、ときには支援する、そんな組織であって欲しいです。

さて、組織として、組織力を最大化するためには、ファシリタティブなリーダーを育てる必要があると思います。特にコロナ禍でオンラインを多用する時には。

ファシリタティブ (facilitative) は、「物事の進行などを促進する」という意味の形容詞です。
ファシリタティブなリーダーは、ファシリテーションを中核に置きながら組織をリードできるリーダーと言えます。

リーダーとは、役割や職責であり、具体的には主任、課長、部長などです。このコラムではリーダーをこのように定義します。

リーダーシップとは、職場のチームで目標に向かって協働し、目標を達成することを成し遂げる力です。目標を達成するよう働きかける力とも言えます。このコラムではリーダーシップをこのように定義します。
リーダーシップは、リーダーの職責を担う人だけに求められる能力ではなく、チームの目標を達成するために活動している従業員一人ひとりに必要な力といえます。

従業員一人ひとりがファシリタティブなリーダーシップを持つことができれば、組織力を強くすることができる、と私は考えています。

コロナ禍になり、テレワークをする人が増えています。オンライン会議が増えてきました。

私の経験から言うと、ファシリテーターなしでオンラインの会議を成功させることはできません。
ここでの「オンライン会議」とは、オンラインで議論し意思決定し、さらに誰が何をいつまでに何の役割を持って実施するのかを合意形成し、そして今後どのように実施状況を追跡するのかを合意することです。単純な情報伝達の場ではありません。
もし、ファシリテーターなしで上記のオンライン会議が成功したとしたら、それは偶然だと思います。多分、再現性がないでしょう。つまり、次回も成功するかどうかは分からない、ということです。例えば、難しい課題を議論するオンライン会議を成功させることはむずかしいと思うのです。

「ファシリテーター型リーダーの時代 (ISBN978-4833417419)」という書籍を書いたフラン・リース (Fran Rees) が、前書きで言っている文章を引用します。20年以上前に書かれた内容が、コロナ禍の今でも生きています。

『ファシリテーターは、とてもやりがいのある仕事だ。なぜなら、成果を生み出す源泉ともいうべき信頼と協力の人間関係をつくる役割を担っているからだ。高度化し、専門化し、技術革新の目まぐるしい現代社会では、ファシリテーターはなくてはならない存在である。企業などの組織に属する人たちは、ファシリテーターの助けを得て、協力し合い、新たな改革をし、一致団結して、今という時代が突きつけてくる課題に立ち向かっている。
(中略)
組織に属している人たちが力を合わせて、問題を解決し、計画を立案し、決定を下し、資金や人材といった資源を手に入れようとするときに必要不可欠なのが、科学でありアートでもあるファシリテーションだ。ファシリテーションとはリーダーシップの一形態だといえる。実に有益なリーダーシップであり、絶対に必要なリーダーシップである。
協力関係というものは、能力のあるプロフェッショナルや従業員がただ寄り集まっただけで自然に生まれてくるものではない(たとえ当事者が心からそうしたいと願ったとしても)。何人かの人がグループという集団を形成して、一緒に計画し、決定し、改革し、実行し、責任を負おうとする場があれば、そこにはファシリテーターというリーダーが必要になる。それは、ファシリテーターが集団の士気を鼓舞し、その持てる力を引き出し、一人の力では不可能なことを達成させるからである。


共に学び研鑽し、自分を育て、そして組織が育つ

組織として学び・育成を支援する体制の1つの選択肢として、「◯◯のスキルを身につけたい・研鑽したい」という自分と同じ志向の人を見つけ、その人たちとコミュニティーを作って、お互いに刺激しあいながら、学び研鑽するというアプローチがあります。おススメです。

私は会社員時代に、そういったコミュニティーを立ち上げリードすることをやっていたことがあります。勤務時間の中でコミュニティー活動ができる組織にいたという幸運もあったと思います。その活動は好評でした。教材は、既に社内にある場合もあるでしょうし、自律的に動いている人なら「自分たちのレベルに合ったもの」を見つけることができると思います。

一方、身に着けるべきスキルがわかっている社会人は28%しかいない、という調査もあります。何をしたら良いのか分からないという場合は、私のコラム 『働き方:コロナ禍の今コロナ後に備える:大切な3つのポイント』で紹介している、「次の自分を考える戦略会議」というワークショップを開催するのも良いと思います。

こうした活動を体験することで、組織が育っていくのだと思います。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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小川芳夫プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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