会社の会議:議事録は何のために作成するのか:議事録の意味を考える

小川芳夫

小川芳夫

テーマ:ファシリテーション

このコラムはビジネスパーソンの方々を対象として書いています。

コロナ禍の中、テレワークや、テレワークとオフィス出勤を合わせたハイブリッドな形での働き方が増えました。
会議をする場合、全員がオフィスの会議室に集まって対面で会議をするという形は減ったと思います。

ハイブリッドな働き方をしているチームの会議はオンライン会議になります。

このコラムでは、オンライン会議を含む会議の議事録について考えます


このコラムは次の3つの章で構成します。5分程度で読める量です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。


1. 議事録に対する誤解

あなたは、「誰が何を言ったのか」を逐一記録したものは議事録だとお考えですか?

  • Yesの方:それは録音、またはウェブ会議ツールの録音録画、または発言を文字起こししたものと何が違うのでしょうか?
  • Noの方:あなたにとって、議事録とは何ですか?


私は、「誰が何を言ったのか」を逐一記録したものは議事録ではないと考えています。例えば、録音から文字起こしをすることに意味はないと思います。

実は、ファシリテーションと出会うまでは、会議で「誰が何を言ったのか」を文字にしたものを議事録だと思っていました。入社間もない頃は議事録を作成する役割を担うことも多かったことを思い出します。そのように教えられ、特に疑問を持つこともなく「そういうものなんだ」と思っていました。

ファシリテーションと出会った今では、これは議事録ではないと考えています。
この章のタイトルのとおり、私は議事録というものを誤解していたのです。


会議と一言で言ってしまうと、いろいろな会議がありますよね。このコラムで扱う会議を少し絞り込みます。
このコラムで扱う「会議」とは、下記3つの合意形成をすることとします。

  1. 参加者全員で、課題について議論し、打ち手(TO DO)を合意形成すること
  2. 各々のTO DOについて、誰が、何を、いつまでに、何の役割を持って、実施するのか、を合意形成すること
  3. 各々のTO DOについて、今後、どのように実施状況を追跡するのか、を合意形成すること


このような会議の議事録に必要なものは、合意に至った議論のプロセスが分かりやすく表現されている情報です。

公式文書では、誰が何を言ったのかを文書として記録した情報が必要な場合があるのでしょう。一方、上記のような合意形成を目的とする会社の会議であれば、合意に至った議論のプロセスが分かりやすく表現されている情報が必要です。長い文書を読みたい人はいないでしょう。

例えば、1時間の会議だったとしましょう。これを文字起こしすると、大量の文章からなる文書になります。この情報の価値はなんでしょう。文字列検索できるくらいの利点しか思いつきません。そもそも、この情報を最初から最後まで読む人はいるのでしょうか?

とはいえ、今までの習慣から一気に「誰が何を言ったのか」を逐一記録したものをなくすことはできない、という考えもあるかもしれません。過渡的に、決定事項を箇条書きにして、その補足としてこの大量の情報をつけるというやり方もあるかもしれませんね。


2. トランスクリプト(文字起こし)

1章で書いたような文字起こしは、少し前までは人間がやる作業でした。

コロナ禍になりオンライン会議が爆発的に増え、結果として文字起こし作業に忙殺される人が増えたのかもしれません。課題(需要)があれば、それを解決するソリューションをつくることはビジネス機会になります。

コロナ禍になり、ロックダウンした国が出てきた時、オンライン会議ツールが世界中で使い始められました。英語の会話を文字にする Otter.ai というAIを活用したサービスが、特に英語圏で使われ始めました。

2020年10月6日の日経新聞に、『議事録はAIにお任せ』 という記事が載りました。この記事はAIの音声認識技術を活用した文字起こしについて書かれています。声紋登録をすることで、「誰が発言したのか」という情報も付加されるそうです。有料会員が半年で1万人を超えたそうです。

日経XTRENDが2021年5月10日に出した 『音声文字起こしサービス徹底検証 ベストな選択はこれだ!』 という記事があります。

リアル会議とオンライン会議の両方で7つのツールを比較したそうです。
『「対面会議」では4人用の会議室、「オンライン会議」ではZoomなどを利用して疑似的な会議を行い、雑談やアイデア出しの音声をどこまでテキスト化できるかを検証した。』という比較レポートです。

文字起こしは機械に任せる時代が近づいているようです。方向性としては人間がやる仕事ではなくなっていくのでしょう。

IBM Digital Makers Lab.が開発した議事録スマートスピーカー Integrated Spatial Assistant Console(ISAC) が、CES 2021 Innovation Awardを受賞したそうです。

『話者を特定して文字を書き起こせること、複数話者が同時に話した場合も分話ができること、そして、ビジネスのためのAIであるIBM Watson のSpeech to Textを活用することで、複雑な業界用語や社内用語の聞き取りも可能になります。専門用語が飛び交う会議で必死に議事録を取っている若手社員に朗報です。』とのことです。

また、議事録意外にも活用分野があるようです。『話した内容がテキスト・データとして記録されるので「会話内容のデータマイニング」ができ、また、「ガバナンスが問われる会議や業務のモニタリング」にも有効です。モニタリングの例は、保険や投資などの窓口業務で、お客様とのやり取りが適切に行われているか、監査の際に、手作業でサンプリングして調べて提出する場合、かなりの工数がかかっていますが、このソリューションを使うと、全ての会話データから、必要な情報を検索するなどもでき、作業効率が格段に上がります。』とのことです。

会議や会話の文字起こしは、コロナ禍が開発を加速させた一例と言えると思います。
今時点では、認識精度に課題があるサービスもあるようですが、既にAIはコールセンターで活用実績もありますから、文字起こしAIも実用に耐える認識精度を持つサービスも出てくると考えられます。



3. 議事録とは合意までの議論プロセスを表現したもの

この章では、私が考える議事録、言い換えると私が提案する議事録を説明しましょう。

私が考える議事録とは、議論のプロセスが短時間で理解できるような情報です。合意形成に至った経緯が分かりやすく理解できるような情報です。

1章で定義した会議。「この会議の時間内で◯◯の合意を形成する」という目標に向けて、事前に設計されたアジェンダに沿って進められ、みんなで議論して合意を形成することが求められます。会議においては、こうした合意が成果物となります。会議で一番大切なのは、この成果物です。

私がファシリテーションと出会ってから作成してきた議事録とは、議論のプロセスが短時間で理解できるような情報です。

会社の会議は何かしらの成果物(例えば「誰が何をいつまでに何の役割を持ってやる」というTO DO)をつくる行為です。議論のプロセスがわかりやすく表現されていて、合意に至るまでの議論プロセスが記録されている情報は貴重です。

具体的には、議論のプロセスを見える化します。見える化するために使う手法はファシリテーション・グラフィックです。

会議で言葉だけを使って議論していた方には、ある種のカルチャーショックのように感じられるものかもしれません。議論を見える化するために、言葉に加えて、文字と画像を使います。会議でホワイトボードを活用していた方にとっては、受け入れられやすいのではないかと思います。

議論の見える化については、『会社の会議:会議を活性化する:議論を見える化しよう』というコラムがありますので、詳しいことをお知りになりたい方はご参照ください。

何時何分に誰々が何々を言った、というものを記述したもの、録音から文字起こしをしたようなもの、それは意味があるとは思えません。その文字起こしをする時間があるのなら、他のことに使うべきだと思います。1時間の会議のトランスクリプトがあったとして、誰がそれを読むのか、私は非常に疑問です。

誰が何を言ったのかがわからないと、発言に対する責任の所在が分からなくなる、という懸念があるかもしれません。この懸念を解決するには、合意に至るまでの議論プロセスの見える化のなかに、責任者の名前を書けば良いのです。

会社の会議においては、議事録はその会議に参加していた全員が協働して議論したプロセスを表した成果物であり、全員に責任があります。誰々が何々という発言をしたという個人名はあまり意味を持たせない方が良いのです。個人名は本当に必要な時だけ書き込むようにすべき、というのが私の考えです。

会議で一番大切なのは成果物です。

この章で提案している議論を見える化するという手法に使うツールは、リアルな会議室での会議であれば、ホワイトボードや模造紙(フリップチャート)です。オンライン会議であれば、クラウド上のホワイトボードです。いくつかの会社からクラウド上のホワイトボードが提供されています。

ファシリテーション・グラフィックという手法を使う場合、基本、議事録は会議の終了時点で出来上がります。発言を逐一文字起こししたような議事録を作成した場合、後になって「私は言っていない」などと言われたことはありませんか?会議を終わるときに、議論をファシリテーション・グラフィックで見える化したものを「この合意内容でよいですね。」と確認(念押し)すれば良いのです。

リアルなホワートボードや模造紙であれば、カメラで撮影して画像を参加者と共有します。撮影後にホワイトボードを消せばOKです。模造紙はしばらくの間キープしておくことをお勧めします。

クラウド上のホワイトの場合は、消す必要がありません。ホワイトドードをキャプチャーして、キャプチャーした画像を参加者と共有すればOKです。



最後までお読みいただきありがとうございました。 
 
 
 

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