会社の会議:会議の変革:今ファシリテーターが注目されている理由
このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。
多様性という言葉を、最近よく聞きます。よく聞くということは、今必要な大切なものだからだと思います。また、多様性は大切なものである一方で、まだ広まっていないので良く聞くということもあると思います。
このコラムでは「ビジネスパーソンにとって多様性とは何なのか」を考えてみたいと思います。
このコラムは次の3つの章で構成します。3分程度で読める内容です。
私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。
ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。
ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。
1. 多様性の意味と最近よく聞く背景
「多様」を辞書で引くと下記だそうです。(出所:スーパー大辞林)
- いろいろなものがあること
- 変化に飛んでいること
- さまざま
例としては、「多様な人材」とか「多様な価値観」が挙げられると思います。
多様性という言葉をよく聞くようになったと同時に、ダイバーシティ(diversity)やインクルージョン(inclusion)という言葉もよく聞くようになった、と私は感じています。
ダイバーシティやインクルージョンに関して、私の意見とほとんど同じ意見の記事に出会いました。アメリカのガートナー(Gartner)という企業のアナリストの記事です。記事のタイトルは『職場におけるダイバーシティとインクルージョンの違いーなぜそれが大切なのか』という感じでしょうか。(出所:"The difference between diversity and inclusion in the workplace – and why it matters")
記事では、ダイバーシティーとインクルージョンは下記のように違うと言っています。
- ダイバーシティ:多様であることに焦点を当てる。
- インクルージョン:チームの結束に力点を置く。多様な人々をチームに迎え入れようとする前向きな考え方。
職場においては、インクルージョンを大切にすべきだ、と私は思います。
チームの結束なくして、ビジネス目標を達成することは無理だと思いますし、何より、結束のないチームにいるのは楽しくないと思うからです。チームの個々のメンバーの良いところを引き出すことができれば、一人では到底達成することのできないようなことも、達成できるはずです。
2. 多様なことは自然(多様なことに対して無意識の偏見を持つのも自然)
職場をみたとき、自分と同じ人はいませんよね。自分のコピーのような人がいたら気持ち悪いでしょう。職場には、いろいろな人がいるのが自然だと私は思います。
前出のガートナーの記事は、もう一つ大切なことを言っています。
『多様なことに対して、無意識のうちに偏見を持つのは自然だ』というのです。「自分は人種差別主義者ではない」とか「性差別主義者ではない」などと自分で自分に言い聞かすよりも、「無意識のうちに偏見を持ってしまうかもしれない」ことを認めた方が良い、と言っています。
私は自転車とクルマを運転します。どちらも重大な事故を起こす危険性のある乗り物です。この危険性を認識しているから、私は事故を起こしてしまうかもしれないから、注意して運転します。
同じように、「自分には無意識のうちに偏見を持ってしまう危険性がある」と認めた方が良い、と私は思っています。人間というのはそういう危険性を持った生物だと認める。だから、そうしないように気をつける。職場で偏見を持っても(互いに偏見を持ち合っても)何も良いことはないですから。ひとつの選択肢として、私のような考えもあって良いのではないか、と思っています。
広く世の中から偏見を無くそう、というと壮大なスケールで大変なことになるかもしれません。
一方、職場の数人のチーム内であれば「偏見を持つ危険性を少なくしよう」と意識すれば、できることだと私は思います。
3. 多様な人たちと議論し合意形成する
前出のガートナーの記事に『インクルージョンはチームの結束に力点を置く。多様な人々をチームに迎え入れようとする前向きな考え方である。』と書かれていました。
チームの結束をより強くするためには、多様なメンバーが協働して、チームとして何かを成し遂げること、これを体験すること、これが一番効く、と私は思います。インクルージョンが大切だと何回も聞かされるよりも、成功体験は効きます。百聞は一見に如かず。そして、百見は一体験に如かずなのです。小さい成功体験の積み重ねを体験することは素晴らしいと思います。
議論し合意形成するという場面では、ファシリテーションが役立ちます。
また、合意が形成された後に、合意事項を実施し、適宜振り返り、より良くするために必要な対応を話し合い合意を形成する、というサイクルを回していくコグニティブな場面では、ファシリタティブなリーダーシップが活躍します。
コグニティブとは、自ら状況を理解し、どうすべきかを考え、やってみて、やった結果を振り返る。この一連のサイクルから学び、さらに今の状況を理解し、今の状況からどうすべきかを考え、考えたことをやってみて、その結果を振り返り、そこから学びを得て次につなげる。このサイクルをやり続ける。こんな感じの概念です。(参照:『コグニティブって知ってる?AIとは違うIBMの目指す世界とは』)
リーダーシップとは、職場のチームで目標に向かって協働し、目標を達成することを成し遂げる力です。目標を達成するよう働きかける力とも言えます。このコラムではリーダーシップをこのように定義します。
リーダーシップは、リーダーの職責を担う人だけに求められる能力ではなく、チームの目標を達成するために活動している従業員一人ひとりに必要な力といえます。
ファシリタティブ(facilitative)という言葉があります。ファシリタティブは、「物事の進行などを促進する」という意味の形容詞です。ファシリタティブなリーダーシップとは、ファシリテーションを中核に置きながら、チームに働きかけチームを目指す目標に到達するようリードするリーダーシップです。
職場で嫌な思いをしたという経験をお持ちの方々は多いと思います。そのことで悩んだご体験をお持ちの方々もいらっしゃると思います。そんな嫌な思いは、できるだけ少なくしたい。自分なりに職場のチームに貢献したい。自分なりの貢献を認めてもらえたら嬉しい。
このような気持ちは日本だけではありません。万国共通です。だから、欧米ではこの辺りの研究が盛んに行われています。盛んに研究されているということは、この辺りに課題が多くあり、解決されなくてはならない・解決したいということの証左と言えると思います。今よりもっと良くしたいという強い思いなのでしょう。
私は、ファシリタティブなリーダーシップを持った方が増え、多様な人たちが集まった職場のチームを目標に向けて引っ張っていけるようになっていただきたいと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。