コールセンターの着台判定とは? 何を評価するのか
「顧客体験」という言葉を耳にする機会が増えました。
CX(Customer Experience)とも呼ばれ、商品やサービスそのものだけでなく、企業を知ってから購入・利用し、問い合わせやアフターサポートを受けるまでの、さまざまな接点で顧客が経験することを指します。
では、顧客体験を良くするには、何をすればよいのでしょうか。
顧客の声を集める、アンケートを取る、カスタマージャーニーを整理する、FAQを充実させる、顧客応対を改善する……。
さまざまな方法があります。
しかし、これらに取り組んでいるのに、
「顧客が期待していたものと違うと言われる」
「顧客満足度は測っているが、何を変えればよいのか分からない」
「顧客の声はたくさんあるのに、商品やサービスの改善につながらない」
ということもあります。
なぜでしょうか。
この記事では、まず顧客体験(CX)の基本的な意味や顧客満足(CS)との違い、一般的な改善方法を整理します。
そのうえで、市場で語られている「あるある」を整理し、顧客期待に応えるために何が必要なのかを考えてみます。
顧客体験とは?
顧客体験(CX:Customer Experience)とは、顧客が企業やブランドと接するさまざまな場面で経験することを総合したものです。
例えば、次のような場面があります。
- 商品やサービスを知る
- Webサイトで情報を調べる
- SNSや口コミを見る
- 商品を比較・検討する
- 店舗やECサイトで購入する
- 商品やサービスを利用する
- 問い合わせる
- 電話やチャットで相談する
- 返品・交換をする
- アフターサポートを受ける
顧客体験は、商品やサービスを利用している瞬間だけではありません。
購入前から購入後まで、企業とのさまざまな接点で生じる認識や経験が含まれます。IBMもCXを、オンライン・店舗を問わず企業やブランドとのやり取りで生じる顧客の認識を総合したものと説明しています。
例えば、商品自体には満足していても、
「Webサイトで欲しい情報が見つからなかった」
「購入手続きが分かりにくかった」
「問い合わせたら、別の部署に何度も説明することになった」
となれば、企業に対する顧客の印象は変わります。
つまり、顧客体験を考えるときには、
「商品・サービスが良いか」だけでなく、「顧客が企業との接点で何を経験したか」
を見る必要があります。
CXとCS(顧客満足)の違い
CXと一緒に使われる言葉に、CS(Customer Satisfaction=顧客満足)があります。
両者は似ていますが、見る範囲が異なります。
一般的には、
CS=商品やサービスなどに対する顧客の満足度
CX=企業とのさまざまな接点を通じた一連の顧客体験
と考えると分かりやすいでしょう。
例えば、商品を購入した顧客が、
「商品には満足した」
と感じていたとしても、
「購入前の説明が分かりにくかった」
「注文方法が複雑だった」
「問い合わせへの回答に時間がかかった」
という経験をしているかもしれません。
逆に、問い合わせの段階で丁寧に問題を解決してもらい、
「困っていたことが分かってもらえた」
と感じれば、その応対そのものが顧客体験になります。
CXは、購入後のカスタマーサービスだけを指すものではなく、認知から検討、購入、購入後までの顧客との関係全体を見る考え方です。
そのため、
「顧客満足度を上げれば、それだけで顧客体験が良くなる」
とは限りません。
なぜ顧客体験(CX)が重要なのか?
顧客との接点は、以前よりも増えています。
Webサイト、SNS、店舗、ECサイト、電話、メール、チャット、アプリなど、顧客はさまざまなチャネルを使って企業と接します。
しかも、顧客自身が一つのチャネルだけを使うとは限りません。
例えば、
Webサイトで商品を調べる
↓
店舗で確認する
↓
ECサイトで購入する
↓
電話で問い合わせる
↓
メールで手続きをする
ということもあります。
企業側ではそれぞれ別の部署やシステムが担当していても、顧客から見れば同じ「一つの企業」です。
そのため、企業側で部分的にサービスを改善していても、顧客から見ると、
「前の担当者と言っていることが違う」
「別の窓口に移ったら、また最初から説明しなければならない」
ということが起こります。
IBMもCX改善の重要な要素として、部門間の連携、セルフサービス、オムニチャネル、パーソナライズなどを挙げています。
顧客体験を考えるということは、単に「一つの接点を良くする」ことではなく、顧客から見た一連の経験を考えることなのです。
顧客体験を左右するのは「顧客との接点」
顧客体験は、企業が「ここが重要な接点です」と決めた場所だけで生まれるものではありません。
顧客が企業と接する場所すべてが、顧客体験につながります。
例えば、
- 広告を見る
- Webサイトを見る
- 商品を検索する
- 口コミを確認する
- 店舗を訪れる
- 商品を購入する
- 商品を受け取る
- 実際に利用する
- 問い合わせる
- 電話で相談する
- 返品・交換する
- アフターサポートを受ける
などです。
商品やサービスを知った段階から購入後のサポートまで、広範囲の顧客接点で得られる価値をCXとして捉えています。
ここで大切なのは、
顧客は企業の「部署」を体験しているのではなく、企業との「接点」を体験しているということです。
顧客体験を改善する方法
顧客体験を改善する方法には、さまざまなものがあります。
例えば、
顧客の声を集める
アンケート、問い合わせ履歴、レビュー、SNS、コールセンターなどから顧客の声を集めます。
顧客の声を分析する
集めたVOC(Voice of Customer)を分類・分析し、顧客が何に困っているのか、どのような不満や要望があるのかを把握します。
VOCを分析して商品開発やサービス改善に活用する取り組みも行われています。
カスタマージャーニーを整理する
顧客が企業を知ってから購入・利用・サポートを受けるまでの流れを整理し、どこで不便や不満が生じているのかを確認します。
顧客接点を改善する
Webサイト、店舗、電話、チャット、FAQなど、それぞれの接点を改善します。
セルフサービスを充実させる
FAQなどを整備し、顧客が自分で問題を解決できる範囲を広げます。
効果を測定する
CSAT、NPS、CESなどの指標を使い、顧客の反応を確認します。IBMもこれらをCXを測定する代表的な指標として挙げています。
このように、顧客体験を改善するための方法は、すでに数多くあります。
では、それでもなぜ、
「顧客体験を改善しているのに、顧客期待に応えられない」
ということが起きるのでしょうか。
顧客体験を改善しているのに、顧客期待に応えられないのはなぜ?
ここからは、少し見方を変えてみます。
例えば、
- 「顧客の声を集めています」
- 「NPSを測っています」
- 「カスタマージャーニーを作っています」
- 「FAQを整備しています」
- 「顧客応対の品質を評価しています」
- 「AIを導入しています」
という企業があったとします。
一見すると、CX改善に必要なことは一通り行っているように見えます。
それでも、
「顧客が本当に求めているものが分からない」
「顧客の声が改善につながらない」
「問い合わせが減らない」
「担当者によって顧客体験が変わる」
「改善しているのに、同じ問題が繰り返される」
ということがあります。
そこで、実際に市場で語られている「あるある」を並べてみます。
顧客体験の改善で、こんなことは起きていないでしょうか?
① 顧客との接点が増え、対応が分断される
- 顧客との接点が増えている
- Web、店舗、電話、チャット、SNSなど複数のチャネルを行き来する
- チャネルごとに顧客情報が分かれている
- 対応履歴が次の担当者やチャネルに引き継がれない
- 同じことを何度も説明する
- チャネルによって案内が違う
- 部門ごとに顧客を見るため、全体として一貫した対応にならない
- 一つの接点を改善しても、別の接点に問題が残る
② 顧客が何を求めているのか分からない
- アンケートは取っているが、本当の不満が分からない
- NPSや満足度は測れるが、何を変えればよいのか分からない
- 顧客の声は大量にあるが、背景まで読み取れない
- 顧客が言葉にした要望だけを見てしまう
- 顧客がなぜその行動を取ったのか分からない
- 「顧客理解が大切」と言われるが、具体的にどう理解すればよいのか分からない
③ 顧客の声はあるのに、改善に使えない
- 問い合わせやアンケートは大量に集まる
- VOCを収集している
- しかし、部門ごとにデータが分かれている
- 集計・分析するだけで終わってしまう
- FAQの改善には使えても、商品・サービス改善まで届かない
- 顧客の声が担当者個人の対応履歴で止まってしまう
- 経営や商品開発にまで顧客の声が届かない
④ 顧客が自分で解決できない
- FAQを用意しているのに問い合わせが減らない
- FAQを見ても答えが見つからない
- 検索しても欲しい情報にたどり着けない
- FAQに書かれていることと、自分が困っていることが一致しない
- チャットボットを導入しても解決できない
- 結局、電話やチャットで人に聞くことになる
実際、「コールセンター白書2025」の利用者調査では、コールセンターに電話する前にホームページの「よくある質問集」を見た人が約7割とされています。つまり、FAQを見た上で、それでも電話する人が相当数いるということです。
⑤ 実際の顧客応対で体験が変わる
- 同じ問い合わせでも担当者によって対応が違う
- ベテランなら解決できるが、新人では難しい
- マニュアルどおりに答えても顧客が納得しない
- 顧客の意図を汲めず、何度もやり取りする
- 顧客の状況に応じた対応ができない
- 応対品質にばらつきがある
- 評価しているが、評価結果が応対改善につながらない
⑥ 改善しても、改善活動が回らない
- 改善施策を実施しても継続しない
- 一度改善して終わってしまう
- 効果測定をしても次の施策につながらない
- 部門ごとに改善活動が止まる
- 改善すべき問題は分かっても、誰が何を変えるのか決まらない
- データはあるのに、次の行動に結びつかない
- 同じ問題が繰り返される
「あるある」を整理すると、6つの課題が見えてくる
ここまでの「あるある」を整理すると、バラバラに見えていた問題が、次の6つに分類できます。
- 顧客との接点が分断される
- 顧客が何を求めているのか分からない
- 顧客の声はあるのに、改善に使えない
- 顧客が自分で解決できない
- 実際の顧客応対で体験が決まる
- 改善しても、改善活動が回らない
こうして整理すると、
「顧客体験を良くする」
という言葉の中には、かなり多くの問題が含まれていることが分かります。
ところが、ここで一つ気になることがあります。
6つに整理しても、まだ「何か足りない」
6つを眺めてみると、
- 顧客を理解する
- 顧客の声を集める
- 顧客が自分で解決できるようにする
- 顧客応対を良くする
- 改善する
- 改善を継続する
という話は見えてきます。
しかし、
「顧客が求めている価値を、商品やサービスそのものにどう反映するのか?」
という部分は、十分に表現されているでしょうか。
また、
「企業が提供した価値」と「顧客が実際に感じた価値」がズレていないか?
という視点もあります。
さらに、
「顧客満足度やNPSを測った後、具体的に何を変えるのか?」
という問題もあります。
そして、
「顧客に応えるために、社内の複数部門をどうつなぐのか?」
という問題もあります。
そこで、6つの分類に足りない部分を補ってみます。
足りない部分を補うと、4つの「急所候補」が見えてくる
追加すると考えられるのは、次の4つです。
⑦ 顧客が求める価値を商品・サービスに反映できない
顧客の声を集めても、それが商品やサービスの改善までつながらなければ、顧客が求める価値は実現できません。
問い合わせ対応やFAQの改善だけで終わり、商品開発やサービス設計まで届かないケースも考えられます。
⑧ 顧客が感じる価値と、企業が提供する価値がズレる
企業側では、
- 「良いサービスを提供している」
- 「必要な情報を用意している」
- 「十分なサポートをしている」
と考えていても、顧客が実際に感じる価値は違うかもしれません。
大切なのは、
企業が何を提供したかではなく、顧客が何を受け取ったか
という視点です。
⑨ 測っても、何を変えればいいか分からない
満足度、NPS、問い合わせ件数などを測ることはできます。
しかし、
「数字が下がった」
ことと、
「では、どの業務を、誰が、どう変えるのか」
は別の問題です。
測定結果を改善行動へ変換できなければ、測ること自体が目的になってしまいます。
⑩ 顧客に応えるための社内連携ができない
顧客の問題が一つの部署だけで解決できるとは限りません。
営業、商品開発、物流、店舗、カスタマーサポート、コールセンターなど、複数の部門が関係することもあります。
しかし、情報が部門間でつながらなければ、
「自分の部署では対応した」
という部分最適で終わってしまいます。
これら4つを、ここでは**企業が顧客期待に応えるための「急所候補」**と仮定してみます。
まだ「これが正解だ」と断定するものではありません。
しかし、6つの課題にこの4つを加えると、顧客体験を改善するために必要なことが、より全体として見えてきます。
すると、顧客体験を改善する構造が変わって見える
ここまでを整理すると、顧客期待に応えるために企業が行うことは、大きく4つに分けられるのではないでしょうか。
1.顧客を理解する
顧客は何に困っているのか。
何を求めているのか。
なぜ、その行動を取ったのか。
顧客の声や行動から、顧客を理解する。
↓
2.価値を設計・反映する
理解した顧客の期待を、
- 商品
- サービス
- 業務
- 仕組み
- 顧客応対
などに反映する。
↓
3.顧客へ価値を届ける
設計した価値を、実際の顧客接点で届ける。
Webでも、店舗でも、電話でも、チャットでも、顧客が受け取る価値として実現する。
↓
4.結果を捉えて改善する
実際に顧客がどう感じたのか。
問題は解決したのか。
期待に応えられたのか。
その結果を捉え、次の改善につなげる。
つまり、
顧客を理解する
↓
価値を設計・反映する
↓
顧客へ価値を届ける
↓
結果を捉えて改善する
という循環です。
顧客体験を改善するということは、単に「接点を良くする」ことだけではなく、この一連の流れをつなげることなのかもしれません。
この4つを、当社は実際に提供しています
ここまで整理すると、当社が取り組んできたことも、別の見方ができます。
顧客を理解する
顧客の声や顧客応対を通じて、
「顧客は何を求めているのか」
を整理します。
単に問い合わせ件数や発言内容を集計するだけではなく、その背景にある問題や期待まで考えます。
価値を設計・反映する
顧客の期待をもとに、
- サービス
- 業務
- 顧客応対
- 評価
- 運用
などを見直し、顧客期待に応えるための仕組みを設計します。
顧客へ価値を届ける
設計したものを、実際の顧客応対で実現します。
コールセンターは、そのための重要な顧客接点の一つです。
同じマニュアルを読むだけではなく、顧客の状況に応じて必要な応対を実現できることが重要になります。
結果を捉えて改善する
実際の応対や顧客の反応を評価し、改善につなげます。
ここではAIも活用できます。
当社の「AIコーチングエンジン」は、AIが顧客への対応を決める仕組みではありません。
判断はヒト・意思決定はヒト。
人が顧客応対の品質を設計し、その実現と改善のためにAIを活用します。
例えば、顧客との会話で「何を話したか」だけではなく、
- 「その場面でどの選択肢があったのか」
- 「その中から何を選んだのか」
- 「なぜその選択をしたのか」
- 「なぜ他の選択肢を選ばなかったのか」
という、応対の選択過程をナレッジとして残していくことができます。
これによって、個人の経験として終わっていた顧客応対を、組織として学習するための材料に変えていきます。
では、自社(貴社)の顧客体験はどこで詰まっているのでしょうか?
「顧客体験を改善しよう」
と考えたとき、いきなり新しいツールや施策を導入する必要はないかもしれません。
まず、自社のどこで問題が起きているのかを確認することが重要です。
例えば、
顧客を理解できていますか?
顧客の声を集めているだけではなく、顧客が何を求めているのかまで理解できているでしょうか。
顧客が求める価値を、商品・サービスに反映できていますか?
顧客の声が、実際の改善まで届いているでしょうか。
顧客へ価値を届けられていますか?
設計したサービスや応対が、実際の顧客接点で一貫して実現されているでしょうか。
結果を捉えて、次の改善につなげていますか?
評価やデータを集めるだけでなく、「次に何を変えるのか」まで決められているでしょうか。
顧客体験を改善するということは、必ずしも「新しい施策を増やすこと」ではありません。
むしろ、
顧客期待に応えるための流れの、どこが詰まっているのかを見つけること
から始まるのではないでしょうか。
顧客体験の改善で、こんなお悩みはありませんか?
- 顧客の声は集めているが、改善につながらない
- 顧客満足度やNPSを測っているが、何を変えればよいか分からない
- 部門ごとに改善しているが、全体として良くならない
- 顧客応対の品質を改善しても、顧客評価につながらない
- FAQやAIを導入しても、問い合わせが減らない
- 担当者によって顧客体験に差が出てしまう
- 顧客期待に応えられているのか、自社では判断できない
こうした場合は、まず「何を導入するか」ではなく、
現在、顧客期待に応えるためのどこが詰まっているのか
を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。
当社では、現在の顧客応対や顧客の声、業務の状況などを調査・分析し、顧客期待に応えるために必要な対策を整理するところからご支援しています。
現状の調査・分析から必要な対策の整理まで無料で行っています。
顧客体験を改善しているのに、なかなか顧客期待に応えられない。
そんな違和感がある場合は、ぜひ一度、現在の状況を一緒に整理してみませんか。


