コールセンターの着台判定とは? 何を評価するのか

沖本能道

沖本能道

テーマ:経営リスク対策



コールセンターで仕事を始めると、研修やロールプレイを終えたあとに「着台判定」と呼ばれるテストを受けることがあります。

着台判定に合格すれば、実際のお客様からの電話を一人で受ける段階へ進みます。

では、着台判定では、いったい何を評価しているのでしょうか?

「知識を覚えているか」
「スクリプトどおりに話せるか」
「質問に答えられるか」
「お客様とスムーズに会話できるか」

もちろん、こうしたことも評価されるでしょう。

しかし、着台判定について調べていると、単純に「合格するための方法」だけでは説明できない出来事が見えてきます。

今回は、実際に着台判定を経験した人の声や、コールセンター側の考え方を手掛かりに、着台判定で何を評価しているのかを考えてみます。

こんなこと、ありませんか?


コールセンターの研修が終わった。

ところが、なかなか一人でお客様の電話を受けるところまで進めない。

ロールプレイを繰り返す。

もう一度、同じ場面を練習する。

着台判定を再度受ける。

管理者や教育担当者から、できていないところを指摘される。

OJTに進めない。

次第に、自分はコールセンターの仕事に向いていないのではないかと思い始める。

中には、仕事そのものではなく、自分自身を否定されたように感じてしまう人もいるかもしれません。

実際にYahoo!しごとカタログには、着台判定に何度も不合格になり、自己肯定感が下がって辛くなってきたという投稿があります。

その投稿では、業務内容についてはかなり覚えている一方で、圧迫系の場面や台本が長くなる場面で、堂々と、スムーズに、にこやかに話すことができないと悩んでいました。前職でも電話やクレーム対応の経験があったそうです。

また、別の投稿では、着台判定を何度も受けることへの不安や、自宅で録音、文字起こし、トークマニュアルの復習などを行いながら練習している様子も見られます。

では、これらが起きる前に、何が起きたのでしょうか?

これらが起きる前に、何が起きたのでしょうか?


答えは、

「着台判定で不合格になった」

です。

ここで、一度立ち止まって考えてみたいと思います。

着台判定で不合格になった。

それは、その人がコールセンターの仕事に適合していないという意味なのでしょうか?

それとも、

「今の研修内容では、実際の顧客応対を一人で成立させられる状態まで到達していない」

という意味なのでしょうか?

この2つは、似ているようで違います。

コールセンターの着台判定とは?何のために行うのか


着台判定は、研修を終えた人が、実際のお客様を一人で応対できる状態なのかを確認するために行われます。

実際の求人や経験者の投稿を見ると、座学研修、ロールプレイ、OJTなどを経て、着台判定を行い、その後に一人での応対へ進むという流れが確認できます。

つまり、着台判定には重要な役割があります。

お客様を守ることです。

研修を受けたからといって、誰でもすぐに一人で電話を受けられるとは限りません。

もし準備ができていない人を、そのまま一人で受電させれば、お客様への説明がうまくできなかったり、必要な確認ができなかったり、何度も保留してしまったりする可能性があります。

実際に、着台判定を設けていないコールセンターで、未熟な状態のまま受電し、初日にお客様から厳しく叱られたという経験談もあります。

ですから、

「着台判定は必要なのか?」

と問われれば、私は必要だと考えます。

問題は、その次です。

では、着台判定では何を評価しているのでしょうか?


知識でしょうか。

商品やサービスの知識でしょうか。

スクリプトを覚えていることでしょうか。

タイピングでしょうか。

話し方でしょうか。

お客様の質問に答えられることでしょうか。

おそらく、実際の着台判定では、これらを組み合わせて評価しているのでしょう。

しかし、経験者の投稿を見ていると、もう少し複雑です。

ある人は、業務内容はかなり覚えているのに、特定の場面でスムーズに話せず、不合格になっています。

別の人は、着台判定に3回ほど不合格になった後、ようやく合格しています。ところが、OJTを経てデビューしてから半年たっても、他の同期より電話が回ってくる量が少ないという経験を書いています。

また、着台判定に合格した後のOJTで、研修で教えられた内容と実際の仕事のルールとの違いを感じたという経験談もあります。

ここから見えてくるのは、

「着台判定に合格すること」

と

「実際の顧客応対を成立させられること」

は、完全に同じではないということです。

知識があれば、顧客応対はできるのでしょうか?


例えば、商品知識をすべて覚えたとします。

スクリプトも覚えました。

システムの操作も覚えました。

それでも、お客様との会話になると、うまくいかないことがあります。

なぜでしょうか?

電話応対では、単純に正しい答えを知っていればよいわけではありません。

お客様が何を言っているのか。

今、どのような状況なのか。

何を確認しなければならないのか。

その質問は何のためなのか。

次に何を確認するのか。

どの説明を選ぶのか。

このまま説明してよいのか。

もう一段、背景を確認した方がよいのか。

こうしたことを、会話の途中で判断しなければなりません。

つまり、顧客応対で必要なのは、知識だけではありません。

知識を使って、目の前のお客様との会話を進めるための、質問、確認、会話の運び、分岐、選択が必要になります。

なぜ、知識を覚えていても着台判定に不合格になるのでしょうか?


ここで、最初に紹介した経験者の投稿に戻ります。

業務内容はかなり覚えている。

電話対応の経験もある。

それでも、特定の場面になると、堂々と、スムーズに、にこやかに話せない。

この出来事を、

「もっと練習しましょう」

だけで終わらせてよいのでしょうか?

もちろん、練習によって上達することはあります。

しかし、同じところで複数の人がつまずくのであれば、別の問いも必要です。

「なぜ、ここでつまずくのか?」

です。

例えば、

質問する順番が分かりにくい。

どこまで確認すればよいのか分からない。

スクリプトの分岐が足りない。

台本が長く、会話の中で使いにくい。

必要な情報を探す方法が分かりにくい。

お客様の状況に応じた選択基準が明確になっていない。

このようなことがあるかもしれません。

すると、着台判定で見つかった「できなかったこと」は、本人の能力だけを見るための情報ではなくなります。

「人ができないこと」と「応対を成立させる仕組み」は同じなのでしょうか?


ここが、今回一番考えたいところです。

人ができなかった。

だから、その人は不適合だった。

もちろん、その判断が必要な場合もあります。

実際、コールセンターで働いた経験者からは、能力が基準に満たなければデビューできず、そのまま辞めていった同期を多く見たという声もあります。

また、実際の求人では、着台判定の結果が試用期間中の契約更新可否の判断材料になっているケースもあります。

コールセンター側からすれば、基準を満たさない人を着台させない。

これは、お客様を守るための合理的な判断です。

では、その人ができなかったことを、そこで終わらせてしまってよいのでしょうか?

例えば、10人が同じところでつまずいたらどうでしょう。

10人とも能力が足りないのでしょうか。

それとも、10人が同じところでつまずく仕事の仕掛け側にも、改善できるところがあるのでしょうか。

着台判定で見直したいのは、人だけなのでしょうか?


着台判定には、2つの使い方があるのではないでしょうか。

一つ目は、

「人が顧客応対を任せられる状態かを判定する」

ことです。

これは、従来の着台判定が担ってきた役割です。

もう一つは、

「顧客応対を成立させる仕事の仕掛けが成熟しているかを見る」

ことです。

例えば、着台判定で同じ質問に答えられない人が何人もいたとします。

そのとき、

「この人たちは覚えていない」

だけで終わらせるのではなく、

「なぜ、ここを覚えにくいのか?」

「なぜ、ここで判断に迷うのか?」

「なぜ、このスクリプトでは会話が進めにくいのか?」

を見てみる。

すると、スクリプト、業務フロー、教育、確認ポイント、システムなど、仕事の仕掛け側に改善できるところが見つかる可能性があります。

「できる人」がいることで、見えなくなるものがあります


コールセンターには、経験を積むことで自然にできるようになる人がいます。

お客様の言葉を聞いた瞬間に、

「この人は、ここを確認した方がいい」

と感じる。

「このまま説明しても納得してもらえなさそうだ」

と気づく。

「この質問を先にした方がよい」

と判断する。

こうした人がいると、コールセンターは助かります。

しかし、同時に問題もあります。

その人が自然にやっていることが、仕事の仕掛けとして整理されていないと、次の人は同じことができません。

そして、その人自身も、

「経験すれば分かるようになる」

としか説明できないことがあります。

結果として、着台判定では、

「できる人」

と

「できない人」

に分けられる。

しかし、本当はその間に、

「何をどう判断すればよいのかを、仕事としてどこまで整理できているのか」

という問題があるのではないでしょうか。

着台判定の結果を、次の人の応対に活かすには?


ここで、着台判定の役割を少し広げて考えてみます。

着台判定で不合格になった。

そこで、

「この人は適合しなかった」

と記録して終わる。

これが従来の使い方だとします。

これに対して、

「この人は、どこでつまずいたのか?」

「なぜ、そこでつまずいたのか?」

「同じところで他の人もつまずいていないか?」

まで見る。

そして、その原因が仕事の仕掛け側にあるなら、

スクリプトを変える。

確認ポイントを変える。

質問の順番を変える。

分岐を追加する。

選択基準を明確にする。

教育方法を変える。

業務フローを変える。

こうすれば、次に入ってくる人が同じところでつまずく可能性を減らせます。

これは、単純に「不合格者を育成する」という話ではありません。

人が頑張らなくても応対できる構造をつくる

という話です。

人の感覚を、コールセンターのナレッジに変える


私は、ここにコールセンターの大きな可能性があると考えています。

人には、それぞれ違いがあります。

経験も違います。

得意なことも違います。

苦手なことも違います。

だから、

「全員がベテランと同じようにならなければならない」

と考えるより、

「人が違っても顧客応対を成立させられる仕事をつくる」

方が、組織としては再現性を持たせやすくなります。

そのためには、ベテランの感覚を、その人だけの能力にしておかないことです。

「このお客様、何かおかしい」

「ここを確認した方がよさそう」

「このまま説明しても納得してもらえなさそう」

そう感じた瞬間に、何を確認したのか。

なぜ、その質問をしたのか。

その結果、どの分岐を選んだのか。

その経験を、次の人が使えるナレッジに変えていく。

ここで重要になるのが、AIコーチングエンジンです。

AIコーチングエンジンは、着台判定の代わりではありません


AIコーチングエンジンは、不合格になった人を無理に合格させるための仕組みではありません。

また、AIが人に代わって顧客応対の判断をするものでもありません。

考え方は逆です。

着台判定などを通じて見えてきた、

「ここで迷う」

「ここで確認できない」

「この分岐で判断できない」

という問題を、ベテランが行っている質問、確認、会話の運び、分岐、選択基準として整理する。

そして、実際の顧客応対の中で、その人が必要なときに使えるようにする。

判断するのは人です。

意思決定するのも人です。

AIは、人が顧客応対を成立させるために必要な情報や会話の進め方を支援します。

さらに、人が実際の応対の中で感じたことや判断したことを、次のナレッジ更新につなげていく。

つまり、

人が感じる。

人が判断する。

その経験を仕事の仕掛けにする。

次の人が使う。

また応対の中で新しい気づきが生まれる。

そして、仕事の仕掛けを更新する。

この循環をつくることが重要なのです。

着台判定を「人の合否」で終わらせない


ここで、最初の問いに戻ります。

着台判定では、何を評価するのでしょうか?

もちろん、人が顧客応対を任せられる状態かどうかは評価する必要があります。

これは、お客様を守るためにも必要です。

ただし、それだけではありません。

着台判定で人がつまずいた場所には、コールセンターの仕事そのものを成熟させるための情報が含まれている可能性があります。

だから、

「人を判定する」

ことと、

「仕事を成熟させる」

ことは、対立しないのではないでしょうか。

むしろ、

人を適合させるための判定を行いながら、同時に、人が適合しやすい仕事へと成熟させていく。

この二つを両立させることが重要なのだと思います。

そして、コールセンターの改善は、そこで終わりません


仕事の仕掛けが成熟すれば、そこで働く人だけが嬉しいのでしょうか。

私は、それだけではないと考えています。

人が応対しやすくなる。

教育担当者やSVの負荷が変わる。

一人で応対できるまでの時間が短くなる可能性がある。

採用した人材を活かしやすくなる。

そして、顧客応対が安定する。

さらに重要なのが、顧客の声を会社の改善につなげられることです。

例えば、同じ内容の問い合わせが繰り返し発生しているとします。

それを単なる問い合わせ件数として処理するのではなく、「呼種」として捉える。

どの問い合わせが集中しているのかを見る。

パレート分析などを使って改善対象を選ぶ。

そして、その原因を商品、サービス、マニュアル、業務、案内方法などに戻していく。

すると、

顧客の声

から、

コールセンター

へ。

コールセンターから、

会社

へ。

会社から、

改善

へ。

改善されたサービスから、

顧客

へ。

という循環が生まれます。

着台判定をきっかけに、単に「誰を着台させるか」を決めるだけではなく、コールセンターの仕事そのものを成熟させる。

その先に、顧客の声を会社の改善につなげる仕組みまで見えてきます。

顧客期待に応えるために、着台判定から仕事を整える


着台判定は、人を落とすためだけの仕組みではありません。

もちろん、顧客応対を任せられない状態の人を着台させないという役割は必要です。

その安全性を維持したうえで、

「なぜ、この人はできなかったのか?」

「同じところで、他の人もつまずいていないか?」

「それは人の問題なのか?」

「それとも、仕事の仕掛けの問題なのか?」

と問い直してみる。

もし仕事の仕掛けに改善できるところがあるなら、そこを成熟させる。

人に応対の法則を覚え込ませるのではなく、人が自然に感じ取ったことを、組織の応対の仕組みに変えていく。

そうすれば、

「できる人を集めたコールセンター」

から、

「人が違っても顧客応対を成立させられるコールセンター」

へ進める可能性があります。

私は、着台判定そのものをなくすべきだとは考えていません。

むしろ、着台判定を残したまま、その結果をもっと有効に使う。

人を判定する。

そして、その判定から仕事を成熟させる。

その積み重ねが、結果として顧客期待に応えるコールセンターをつくっていくのではないでしょうか。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

沖本能道
専門家

沖本能道(コールセンター運用改善コンサルタント)

株式会社アクティブ・コーチング・システム

クレーム(コールセンター)を基点にして、独自AIと業務改善の実績を融合したサービスを提供し、会社組織横断で課題解決を推進支援します。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

AIを活用しコールセンターの価値を高める専門家

沖本能道プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼