AHTとは コールセンターの平均処理時間を短縮して生産性を高める方法

沖本能道

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テーマ:経営リスク対策


コールセンターの生産性を考えるとき、「AHT」という言葉がよく使われます。

AHTとは、Average Handling Timeの略で、日本語では「平均処理時間」と呼ばれます。

コールセンターでは、1件の顧客応対を処理するために、平均してどのくらいの時間が掛かっているのかを見る指標です。

一般的には、

AHT = ATT + ACW

と考えます。

ATTは、Average Talk Time。

顧客との通話に掛かる平均時間です。

ACWは、After Call Work。

通話終了後に行う応対履歴の入力など、後処理に掛かる時間です。

つまりAHTは、単に「電話で何分話したか」ではありません。

顧客からの入電を受けてから、その1件の応対処理が完了するまでに掛かる時間を見ています。

そして、AHTを短縮することは、コールセンターの生産性向上につながります。

同じ人数、同じ時間であれば、1件当たりの処理時間が短くなるほど、より多くの顧客からの問い合わせに対応できるからです。

では、AHTを短縮するには、どうすればよいのでしょうか。

ここで、少し考えてみたいことがあります。

AHTを短くするために、何を削るのでしょうか。

AHTを短縮することは、コールセンターの生産性向上になる


まず、AHTを短縮すること自体は、コールセンターの生産性向上につながります。

例えば、1件の応対に10分掛かっていたものを8分にできれば、同じ時間で処理できる件数は増えます。

限られた人数で多くの顧客からの問い合わせに応えるためにも、AHTは重要な指標です。

さらにAHTは、コールセンターのコストを考えるうえでも重要になります。

1件当たりの処理時間が分かれば、

AHT

労働時間

必要な人員

人件費

1件当たりの処理コスト

という形で、時間とコストの関係を見ることができるからです。

だからこそ、AHTを適切に管理することは、コールセンターの生産性管理だけでなく、コスト管理にもつながります。

ただし、ここで一つ注意が必要です。

AHTを短くするために、必要な仕事まで削ってしまってはいけません。

AHT短縮で削ってはいけない時間とは


コールセンターでは、顧客の状況を確認しなければ、適切な回答ができない場合があります。

必要な情報を確認する。

顧客が置かれている状況を理解する。

問題解決に必要な説明を行う。

場合によっては、顧客自身が気付いていなかった問題を確認する。

これらは、顧客が期待する問題解決のために必要な仕事です。

ここを「AHT短縮」という理由だけで削ってしまえば、どうなるでしょうか。

その場では通話時間が短くなっても、

「結局、問題が解決していない」

「もう一度電話しなければならない」

「説明が足りなかった」

といったことが起きる可能性があります。

そのため、AHT短縮で考えるべきなのは、

「どうすれば全部の仕事を急いでできるか」ではありません。

「何を残し、何を減らすのか」

です。

質問に答えるだけでは、問題解決にならないことがある


例えば、顧客から、

「この商品はいつ届きますか?」

と聞かれたとします。

「○日に届きます」

と回答すれば、質問には答えています。

しかし、顧客が電話をしてきた理由が、

「その日に商品が必要だから、間に合うか確認したかった」

ということであれば、到着日を伝えるだけでは、本当に解決したかった問題を解決できていない可能性があります。

さらに、

「もし間に合わなかったら、どうすればよいのか」

という問題が背景にあるかもしれません。

つまり、

顧客が口にした質問と、電話をしてきた動機は、必ずしも同じではありません。

だからこそ、顧客応対では、質問に答えるだけではなく、

「なぜ電話をしてきたのか」

「何が解決すれば納得できるのか」

まで確認することが重要になります。

一見すると、これはAHTを長くするように見えるかもしれません。

しかし、実際には逆になる場合があります。

最初に必要なことを確認できれば、その後のやり取りを手探りで進める必要がなくなるからです。

手探りで積み上げる応対は、ATTもACWも長くなる


顧客の状況を十分に確認しないまま、その場で一つずつ質問を追加していく。

回答を聞いてから次の質問を考える。

また回答を聞いて、次の対応を考える。

このような「手探りで積み上げる応対」では、必要な確認が後ろへ後ろへと続いてしまいます。

結果として、ATTが長くなる可能性があります。

そして、通話が終わった後にも問題が残ります。

「何を確認したのか」

「何を案内したのか」

「顧客は最終的に何に納得したのか」

これらを整理して応対履歴に残さなければなりません。

会話そのものが整理されていなければ、必要な情報と、問題解決には直接関係しない情報が混在することもあります。

つまり、手探りの応対は、

ATTだけではなく、ACWまで長くする可能性があります。

では、どうするのでしょうか。

顧客が期待する問題解決から逆算して会話を運ぶ


ここで、会話の考え方を逆にします。

「顧客から何を聞かれたか」

から始めるのではなく、

「顧客が期待している問題解決は何か」

から逆算します。

問題解決に必要な情報は何か。

その情報を得るためには、何を確認する必要があるのか。

確認した結果によって、どのような説明や提案が必要になるのか。

これをあらかじめ考えておきます。

すると、

問題解決

必要な情報

必要な確認

説明・提案

問題解決

という会話の流れを設計できます。

ここで大切なのは、質問をたくさんすることではありません。

必要な質問を、必要な順番で行うことです。

必要な確認は残す。

必要な説明も残す。

その一方で、問題解決に直接つながらないやり取りは減らしていく。

これなら、顧客理解とコールセンターの効率化を両立させることができます。

顧客期待から逆算した会話運びを、トークスクリプトにする


ここで「トークスクリプト」が役に立ちます。

ただし、ここでいうトークスクリプトは、全員に同じセリフを言わせるための台本ではありません。

再現したいのは、

  • 何を確認するのか
  • その質問は何のためにするのか
  • どの順番で確認するのか
  • 回答によって、次にどこへ進むのか
  • 何を選択基準にするのか
  • どのように問題解決へつなげるのか


という会話運びです。

顧客が期待する問題解決から逆算して、この会話運びを設計します。

すると、毎回オペレーターがゼロからアドリブで会話を組み立てる必要がなくなります。

一度設計した会話運びを、何度も使える。

この「使い捨てではない」ということが、重要です。

同じような問い合わせであれば、一定の会話運びを再現できるため、オペレーターごとのAHTのばらつきを小さくしていくことにもつながります。

AIコーチングエンジンで会話運びを再現可能にする


では、こうした会話運びを、コールセンターでどのように使うのでしょうか。

当社では、AIコーチングエンジンを開発しています。

AIコーチングエンジンは、ベテランが行っている質問、確認、会話の進め方、分岐、選択基準などを構造化し、顧客との会話の状況に応じて、必要な確認や会話の進め方をリアルタイムで支援します。

ここで重要なのは、

AIが顧客応対を判断するわけではない

ということです。

判断するのは人です。

意思決定するのも人です。

AIが支援するのは、

「次に何を確認するのか」

「この状況では何が必要なのか」

「どのような流れで問題解決へ進めるのか」

という会話運びです。

これによって、ベテランの経験だけに頼るのではなく、ベテランが身につけてきた会話運びを、必要なときに使える状態をつくっていきます。

そして、個人のアドリブへの依存を減らせれば、同じような問い合わせに対するAHTのばらつきも小さくしていくことができます。

ACWを減らすことで、AHTをさらに短縮する


AHTを考えるとき、ATTだけを短くしようとするのではなく、ACWにも目を向ける必要があります。

通話が終わった後、オペレーターは応対履歴を作成します。

この作業にも時間が掛かります。

特に、手探りで進めた応対では、会話を思い出しながら、

「何を記録すればよいのか」

を整理する必要があります。

一方、顧客が期待する問題解決から逆算して会話を運んでいれば、何を確認し、何が分かり、どのように問題解決したのかも整理しやすくなります。

さらにAIコーチングエンジンでは、応対内容をまとめた要約を活用できます。

この要約をCRMの応対履歴欄へコピーすることで、応対履歴作成に掛かる作業を大きく削減できます。

運用によっては、ACWの作業時間をほぼゼロに近づけることも可能です。

つまり、

ATTを必要な仕事に絞る。

そして、

ACWをできるだけゼロに近づける。

この両方からAHTを短縮することができます。

AHTを生産性とコストの両面から管理する


ここまで考えると、AHTは単なるコールセンターKPIではなくなってきます。

AHTは時間です。

時間は労働量につながります。

労働量は人件費につながります。

そこで、工業簿記の原価計算の考え方を応用して、

1件の顧客応対に、どれだけの時間とコストを使っているのか

を見ることができます。

例えば、

AHT
→ 1件当たりの時間
→ 必要な労働量
→ 人件費
→ 1件当たりの処理コスト

という関係です。

この視点を持つと、

「AHTを何分にするか」

だけではなく、

「その時間で、どのような仕事をしているのか」

「その仕事に、どれだけのコストが掛かっているのか」

まで考えられるようになります。

同じ8分のAHTでも、

必要な確認と説明を行って問題解決した8分と、

手探りのやり取りを続けた結果として8分掛かった応対では、仕事の中身が違います。

だからこそ、生産性を見るときには、時間だけを見るのではなく、

その時間が何のために使われているのか

を見ることが重要です。

必要な仕事を残し、不要な仕事を減らす


AHT短縮というと、

「早く電話を終わらせる」

ことを想像するかもしれません。

しかし、本当に目指したいのは、それではありません。

必要な確認は残す。

必要な説明も残す。

顧客の問題解決に必要な情報も確認する。

そのうえで、

問題解決に直接つながらないやり取りを減らす。

手探りで積み上げる応対を減らす。

個人のアドリブだけに頼ることを減らす。

応対履歴をまとめるためだけに掛かっていた時間を減らす。

こうして考えると、

AHT短縮とは、必要な仕事を削ることではなく、不要な仕事を減らすこと

だと考えることができます。

そして、そのためには「AHTを何分にするか」だけではなく、

顧客は何を解決するために電話をしてきたのか

から考える必要があります。

顧客が期待する問題解決から会話を設計する。

必要な確認と説明を残す。

不要なやり取りを減らす。

その会話運びを再現できるようにする。

そして、人が適切に仕事を行い、会社として適切にサービスを提供する。

その結果として、生産性が高まり、コストも管理しやすくなる。

最終的に目指したいのは、

会社として顧客期待に応えること。

AHT短縮は、そのための重要な手段の一つです。

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沖本能道
専門家

沖本能道(コールセンター運用改善コンサルタント)

株式会社アクティブ・コーチング・システム

クレーム(コールセンター)を基点にして、独自AIと業務改善の実績を融合したサービスを提供し、会社組織横断で課題解決を推進支援します。

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