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孤独死が起きた部屋は事故物件になる? 賃貸住宅の告知義務は何年続くのか

花輪隆俊

花輪隆俊

テーマ:特殊清掃

第5弾


「孤独死が起きた部屋は、すべて事故物件になるのでしょうか?」
「一度でも人が亡くなったら、ずっと告知しなければなりませんか?」
「特殊清掃と消臭が終われば、告知しなくてもよいですか?」
賃貸住宅で孤独死が発生した大家さんや管理会社から、このような質問を受けることがあります。
孤独死が発生すると、室内の特殊清掃や残置物の整理だけではなく、次の入居者へどのように説明するのかという問題が出てきます。
告知しなければ、後から入居者とのトラブルになるのではないか。
告知すれば、誰も部屋を借りてくれないのではないか。
何年間告知すればよいのか分からない。
このような不安から、再募集を始められない物件もあります。
しかし、室内で人が亡くなったという理由だけで、すべての部屋が同じように扱われるわけではありません。
死因、発見までの状況、特殊清掃の有無、事件性、周囲への影響などによって、告知の考え方は異なります。
今回は、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」をもとに、賃貸住宅で孤独死が発生した場合の告知について説明します。
そもそも事故物件とは何ですか?
「事故物件」という言葉は、インターネットやテレビなどで広く使われています。
一般的には、過去に自死、他殺、孤独死などが発生し、次の入居者が契約するかどうかを判断する際に、心理的な抵抗を感じる可能性がある物件を指す言葉として使われています。
しかし、人が亡くなった住宅が、すべて同じ条件の事故物件になるわけではありません。
病気による自然死。
老衰による死亡。
入浴中の事故。
階段からの転落。
自死。
他殺。
長期間発見されなかった孤独死。
これらは、人が亡くなったという点では同じでも、次の入居者への告知の考え方は同じではありません。
大切なのは、「事故物件」という呼び方だけで判断しないことです。
実際に何が起き、どのような対応が必要だったのかを確認する必要があります。
自然死は原則として告知不要です
国土交通省のガイドラインでは、対象となる住宅で自然死が発生した場合、原則として告知しなくてもよいとされています。
自然死には、老衰や持病による病死などが含まれます。
人が生活する住宅では、病気や老衰によって亡くなることは当然に起こり得ることだからです。
また、日常生活の中で起きた不慮の事故による死亡についても、原則として告知しなくてもよいとされています。
例えば、次のような事故です。
自宅の階段から転落した。
入浴中に溺れた。
室内で転倒した。
食事中に誤嚥した。
このような自然死や日常生活上の不慮の死について、特殊清掃などが行われていない場合は、経過した期間にかかわらず、賃貸募集時に原則として告知不要とされています。
つまり、
「室内で人が亡くなったら、必ず3年間は告知する」
という理解は正確ではありません。
自然死で特殊清掃が行われていない場合は、原則として告知不要です。
孤独死という言葉だけでは判断できません
孤独死は、一人暮らしの方が誰にもみとられずに亡くなることを表す言葉として使われています。
しかし、「孤独死」という言葉だけでは、死因や発見までの状況が分かりません。
亡くなった翌日に発見された病死。
亡くなってから長期間発見されなかった病死。
室内で発生した自死。
事件による死亡。
これらが、すべて孤独死と呼ばれる場合があります。
告知の要否を判断するときに必要なのは、孤独死という呼び方ではありません。
次の内容を確認することが大切です。
死因は自然死か。
日常生活上の不慮の事故か。
自死や他殺などに該当するか。
いつ亡くなったのか。
いつ発見されたのか。
どこで亡くなったのか。
特殊清掃が行われたか。
大規模なリフォームが必要だったか。
事件性や周知性が高い事案か。
死因が分からない場合は、分からないことを前提に慎重に判断する必要があります。
自然死でも特殊清掃を行った場合は扱いが変わります
自然死であれば、どのような場合でも告知不要というわけではありません。
病死や老衰であっても、亡くなってから長期間発見されず、特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合は、次の入居者の判断に重要な影響を与える可能性があります。
国土交通省のガイドラインでは、自然死や日常生活上の不慮の死であっても、長期間にわたって発見されなかったことなどにより、特殊清掃などが行われた場合は、一定期間の告知が必要になるという考え方が示されています。
ここでいう特殊清掃には、孤独死などが発生した住宅で、原状回復のために行う消臭、消毒、清掃などが含まれます。
死因だけを見るのではありません。
発見までの状況と、室内を戻すためにどのような作業が必要になったのかも判断材料になります。
賃貸住宅の告知期間は原則としておおむね3年
賃貸住宅で、自死や他殺など自然死以外の死亡が発生した場合は、原則として告知の対象になります。
自然死や日常生活上の不慮の死であっても、発見の遅れなどによって特殊清掃が行われた場合は、原則として告知の対象になります。
国土交通省のガイドラインでは、賃貸住宅について、特段の事情がない場合、次の時点からおおむね3年が経過した後は、原則として告知しなくてもよいとされています。
自然死以外の死亡については、その死亡が発生した時点。
自然死などで特殊清掃が行われた場合は、その死亡が発見された時点。
ここで重要なのは、「必ず3年間だけ告知すればよい」という意味ではないことです。
ガイドラインは、おおむね3年という一般的な目安を示しています。
事件性が高い。
多くの人に知られている。
報道された。
社会へ与えた影響が大きい。
このような特段の事情がある場合は、3年を経過していても告知が必要になる可能性があります。
反対に、自然死で特殊清掃が行われていない場合は、3年間告知するというルールではありません。
「すべての死亡事故は3年」という覚え方をしないことが大切です。
3年以内に一度誰かが住めば告知不要になるのか
「事故後に一度だけ誰かに住んでもらえば、その次から告知しなくてもよい」
という話を聞くことがあります。
しかし、国土交通省のガイドラインでは、
「誰かが一度入居すれば告知義務がなくなる」
という基準は示されていません。
告知の要否は、間に何人が入居したかだけで決まるものではありません。
事案の内容。
発生からの期間。
特殊清掃の有無。
事件性。
周知性。
社会へ与えた影響。
入居希望者から質問されたか。
これらを踏まえて判断します。
短期間だけ別の人を入居させ、告知を避けようとするような対応は、後から大きなトラブルにつながる可能性があります。
再募集を急ぐ場合でも、事実を隠すことを前提にした対応は避けなければなりません。
入居希望者から質問された場合はどうするのか
告知期間のおおむね3年が経過している場合でも、入居希望者から、
「この部屋で過去に人が亡くなったことはありますか?」
「特殊清掃をしたことはありますか?」
と質問されることがあります。
国土交通省のガイドラインでは、買主や借主から人の死に関する事案の有無を質問された場合は、経過した期間や死因にかかわらず、調査によって分かった事実を告げる必要があるとされています。
3年を過ぎたから、質問されても答えなくてよいという意味ではありません。
分かっている事実は正確に伝えます。
分からない部分については、推測で説明せず、
「確認できていません」
「死因は不明です」
と伝えます。
事実を小さく見せたり、反対に必要以上に大きく伝えたりせず、確認できた内容を説明することが重要です。
告知するときに伝える内容
人の死に関する事案を告知する場合、何でも詳しく話せばよいわけではありません。
国土交通省のガイドラインでは、調査によって分かった次のような内容を告げる考え方が示されています。
事案が発生した時期。
特殊清掃が行われた場合は、死亡が発見された時期。
事案が発生した場所。
死因。
死因が分からない場合は、不明であること。
特殊清掃などが行われたこと。
一方で、亡くなった方やご遺族のプライバシーへ配慮する必要があります。
亡くなった方の氏名。
年齢。
詳しい住所。
家族構成。
具体的な亡くなり方。
発見時の詳しい状況。
これらを告げる必要はないとされています。
告知は、興味本位で事故の詳細を伝えるものではありません。
入居希望者が契約するかどうかを判断するために必要な事実を、プライバシーへ配慮しながら伝えるものです。
口頭だけでなく書面に残す
告知が必要な場合は、担当者が口頭で説明するだけではなく、書面に残すことが望ましいとされています。
口頭だけの説明では、後になって、
「説明を受けていない」
「そのような内容だとは聞いていない」
「特殊清掃をしたとは知らなかった」
というトラブルになる可能性があります。
書面には、確認できた範囲で次の内容を記録します。
発生または発見した時期。
発生した場所。
確認できた死因。
死因が不明な場合は不明であること。
特殊清掃の有無。
説明を行った日。
説明を受けた人。
説明を行った担当者。
告知書などを交付した場合は、大家さん、管理会社、入居者がそれぞれ保管できるようにします。
大家さんと管理会社が事故発生時に記録すること
孤独死が発生した直後は、特殊清掃やご家族への連絡に追われ、告知に必要な記録が後回しになることがあります。
しかし、数年後に再募集するとき、当時の担当者が退職していたり、管理会社が変わっていたりすることがあります。
そのときに記録が残っていなければ、何をどこまで告知するべきか判断できません。
事故発生時には、次の内容を記録します。
警察へ連絡した日。
死亡が確認された日。
死亡が発見された日。
死亡場所。
確認できた死因。
死因が不明な場合は不明と記録する。
特殊清掃を依頼した日。
特殊清掃の作業内容。
消臭作業の内容。
原状回復工事の内容。
作業前と作業後の写真。
臭い戻りの確認結果。
管理会社へ部屋を引き渡した日。
記録する際は、事実と推測を分けることが大切です。
正確な死亡日が分からなければ、推測した日を確定した事実として記載してはいけません。
「発見日」と「死亡したと考えられる期間」を分けて記録します。
完全消臭できても告知の問題は別に残ります
全花連の花輪式完全消臭では、臭いの発生源を特定し、極力壁や床を壊さず、臭いの原因へ対応します。
施工後は臭い戻りがないかを確認し、施工内容に応じて完全消臭施工証明書を発行します。
完全消臭によって、再び人が暮らせる室内へ戻すことを目指します。
しかし、
「臭いが完全に消えたから告知しなくてもよい」
ということにはなりません。
完全消臭は、室内の物理的な状態を回復するための作業です。
告知は、次の入居者が契約するかどうかを判断するための情報提供です。
この二つは別の問題です。
反対に、告知期間中だからといって、臭いが残った状態で貸し出してよいわけでもありません。
必要な特殊清掃と完全消臭を行う。
作業内容と結果を記録する。
告知が必要な場合は適切に説明する。
そのうえで、次の入居者が納得して契約できる状態を整えることが大切です。
完全消臭施工証明書は何を証明するのか
全花連が施工内容に応じて発行する完全消臭施工証明書は、花輪式完全消臭による施工を行い、臭い戻りがないことを確認した状態を、書面で示すものです。
これは、事故がなかったことを証明する書類ではありません。
告知義務がなくなったことを証明する書類でもありません。
また、事故物件ではないと法的に認定する書類でもありません。
事故後にどのような消臭施工を行い、どのような状態で引き渡したのかを確認するための書類です。
大家さんや管理会社が次の入居者へ説明する際にも、
「特殊清掃をしただけです」
ではなく、
「臭いの発生源を確認し、完全消臭施工を行い、施工後の状態を確認しています」
と、作業内容を説明しやすくなります。
告知を物件の欠点だけにしない
事故について告知すると、入居希望者が不安を感じる可能性があります。
しかし、事実を伝えるだけで説明を終えてしまうと、その部屋がどのように回復されたのかが伝わりません。
告知が必要な場合は、事実とあわせて次の内容を説明します。
残置物の整理が完了していること。
汚染箇所の特殊清掃を行ったこと。
消毒や除菌を行ったこと。
臭いの発生源へ対応したこと。
完全消臭後に臭い戻りを確認したこと。
必要な原状回復が完了していること。
施工内容に応じた証明書があること。
もちろん、不安を打ち消すために事実を隠したり、必ず問題がないと断定したりしてはいけません。
確認できた事実と、事故後に行った対応を正確に説明します。
入居希望者が十分な情報を得たうえで判断できるようにすることが、後のトラブルを防ぎます。
告知があるから高齢者へ貸せないわけではありません
大家さんが単身高齢者の入居を断る理由の一つに、
「室内で亡くなったら事故物件になり、ずっと告知しなければならない」
という不安があります。
しかし、国土交通省のガイドラインでは、自然死で特殊清掃などが行われていない場合は、原則として告知不要です。
室内で人が亡くなった事実を、すべて無期限に告知しなければならないわけではありません。
もちろん、発見が遅れれば特殊清掃が必要になり、一定期間の告知が必要になる可能性があります。
だからこそ、単身高齢者の入居を断ることだけを考えるのではなく、次の備えを組み合わせることが大切です。
見守りによる早期発見。
残置物処分費用への保険の備え。
特殊清掃、消臭、原状回復費用への保険の備え。
死後事務委任に関する契約。
事故発生時の連絡先。
対応する特殊清掃業者。
作業と告知に必要な記録。
事故が起きる可能性をゼロにすることはできません。
しかし、発見の遅れと事故後の混乱を減らす準備はできます。
全花連安心サービスは再募集までの停滞を減らします
全花連安心サービスでは、入居者が元気なうちに死後事務委任に関する契約を結び、万が一の際に必要となる手続きの道筋を準備します。
賃貸借契約の終了に関する手続き。
残置物の確認と整理。
特殊清掃。
完全消臭。
必要な原状回復。
管理会社への鍵の返却。
事故発生後に、誰へ連絡すればよいか分からない。
相続人と連絡が取れない。
残置物へ手を付けられない。
特殊清掃業者が見つからない。
消臭しても臭いが戻る。
部屋を返却できない。
このような停滞を減らし、再募集へ向けた対応を進めるための仕組みです。
ただし、全花連安心サービスを導入すれば、告知が不要になるという意味ではありません。
告知の要否については、発生した事案と国土交通省のガイドラインなどをもとに、個別に判断する必要があります。
全花連が担うのは、事故後の手続きを事前に準備し、部屋を再び貸せる状態へ戻すための支援です。
今回のまとめ
孤独死が起きた部屋が、すべて同じ条件の事故物件になるわけではありません。
告知について確認したいポイントは次のとおりです。
自然死や日常生活上の不慮の死は、原則として告知不要。
自然死でも、発見の遅れによって特殊清掃が行われた場合は、告知が必要になることがある。
賃貸住宅では、対象となる死亡事故や特殊清掃を伴った自然死について、原則としておおむね3年が一つの目安。
事件性、周知性、社会的影響が特に高い場合は、3年を過ぎても告知が必要になる可能性がある。
入居希望者から質問された場合は、経過期間や死因にかかわらず、確認できた事実を伝える。
一度別の入居者が住めば告知不要になるという基準はない。
告知する場合も、亡くなった方の氏名や詳しい発見状況まで伝える必要はない。
完全消臭できたことと、告知が不要になることは別の問題。
作業内容と告知内容を、それぞれ書面で残す。
孤独死が発生したら、部屋をきれいにするだけではなく、再募集時の説明まで考えて対応する必要があります。
特殊清掃をする。
臭いの元から完全消臭する。
作業内容を記録する。
告知が必要な場合は、確認できた事実を適切に伝える。
入居希望者が納得したうえで契約できる環境を整える。
それが、事故後の部屋を再び誰かが安心して暮らせる住まいへ戻すことにつながります。
孤独死の特殊清掃費用と保険については、第四弾のコラム「孤独死の特殊清掃費用は保険で払える?家財保険で必ず確認したい2つの補償」をご覧ください。
孤独死後の残置物については、第三弾のコラム「孤独死した入居者の荷物は勝手に処分できる?大家さんが知っておきたい残置物と相続の基本」をご覧ください。
孤独死発生直後の対応については、第二弾のコラム「孤独死が起きたら大家さんと管理会社は何をする?賃貸住宅で最初に確認したい7つのこと」をご覧ください。
特殊清掃の費用については、第一弾のコラム「孤独死の特殊清掃費用はいくら?全花連の1DK約32万円の実例と料金が決まる仕組み」をご覧ください。
告知の要否は、死因、発見状況、特殊清掃の有無、事件性、周知性、社会的影響、取引の内容などによって異なります。判断が難しい場合は、宅地建物取引業者、弁護士などの専門家へご相談ください。

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花輪隆俊
専門家

花輪隆俊(特殊清掃業)

一般社団法人全日本花輪式完全消臭連盟

孤独死現場の特殊清掃・残置物撤去、特許取得の花輪式完全消臭で対応。死後事務委任を備えた「全花連安心サービス」でオーナーの負担を抑え、高齢者や身寄りのない方の安心入居を支えます。

花輪隆俊プロは青森放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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