ドーパミンは「快楽物質」ではありません 前編
仕事、家事、育児に追われる40代の女性から、「食事を減らしているのに痩せない」「寝不足なのは分かっているけれど、睡眠時間を増やせない」という相談を受けることがあります。
子どもの支度、仕事、夕食、片付け、明日の準備。すべてが終わったころには、もう夜遅い。そこから少しだけ自分の時間を取り、気づけば睡眠時間が短くなっている。そんな毎日を過ごしている方も多いのではないでしょうか。
40代のダイエットでは、食事や運動だけでなく、睡眠の質がとても大切です。
ここで言う睡眠の質とは、ただ長く寝ることではありません。寝つき、眠りの深さ、途中で目が覚めにくいこと、朝の回復感、日中の眠気の少なさなどを含めた「体と脳がきちんと休めているか」という状態のことです。
この記事では、睡眠中の脳の働きに関する研究をもとに、40代の働く女性が痩せやすい体づくりのために知っておきたい睡眠の質について解説します。
睡眠の質とは何か
「睡眠の質が大切」とよく言われますが、何をもって質がよいと言えるのでしょうか。
睡眠の質がよい状態とは、次のような状態です。
・寝つきが比較的よい
・夜中に何度も目が覚めない
・目が覚めても再び眠りやすい
・朝起きたときに疲れが少しでも抜けている
・日中に強い眠気やだるさが続かない
・夜になると自然に眠気がくる
反対に、睡眠時間を確保していても、夜中に何度も目が覚める、夢ばかり見て寝た気がしない、朝から体が重い、昼間に甘いものが欲しくなるという場合は、睡眠の質が落ちている可能性があります。
つまり、睡眠の質とは「何時間寝たか」だけではなく、「その睡眠で体と脳が回復できたか」ということです。
睡眠中、脳は本当に休んでいるのか
睡眠中の脳は、ただ止まっているわけではありません。
ボストン大学の研究では、深い睡眠中に脳波、血流、脳脊髄液の動きが連動している様子が観察されました。脳脊髄液とは、脳や脊髄のまわりを満たしている透明な液体です。研究では、深いノンレム睡眠のときに、この液体が波のように動く様子が確認されています。
このことから、深い睡眠は脳の休息だけでなく、脳内環境の整理や老廃物処理に関わっている可能性があると考えられています。
ただし、「深く眠れば病気を完全に防げる」という意味ではありません。研究が示しているのは、睡眠中の脳の液体循環が、脳のメンテナンスに関係している可能性が高いということです。
大切なのは、睡眠を単なる休憩時間ではなく、脳と体を整える大切な時間として考えることです。
睡眠不足が続くと、なぜ痩せにくくなるのか
睡眠不足は、脳だけでなくダイエットにも大きく関係します。
40代の働く女性が睡眠不足になると、次のようなことが起こりやすくなります。
・甘いものが欲しくなる
・夕方から夜に食欲が強くなる
・疲れて動く量が減る
・ストレス食いが増える
・血糖値が乱れやすくなる
・筋肉の回復が追いつきにくくなる
・朝食を抜いて夜に多く食べやすくなる
睡眠時間が短いと、体は「疲れているのに休めていない状態」になります。その結果、脳は手早くエネルギーになるものを欲しがり、甘いものや脂っこいものに手が伸びやすくなります。
また、寝不足の日は意志の力も落ちやすくなります。夕食後に少しだけ食べるつもりが止まらない、子どもが寝たあとにお菓子を食べてしまう、夜遅くに味の濃いものが欲しくなる。こうした行動は、単なる我慢不足ではなく、睡眠不足による体の反応として起こることがあります。
40代のダイエットで睡眠が大切なのは、寝ている間に体重が急に落ちるからではありません。睡眠が整うことで、食欲、代謝、ストレス、活動量が整いやすくなるからです。
睡眠時間が短い人ほど「最初の深い眠り」が大切
忙しい女性にとって、毎日8時間眠ることは簡単ではありません。
だからこそ、睡眠時間を増やせない方ほど、眠りはじめの質を大切にしたいところです。深いノンレム睡眠は、眠りの前半に出やすいとされています。寝る直前までスマホを見る、夜遅くに重い食事をする、寝酒を飲む、考え事をしたまま布団に入ると、この深い眠りが妨げられやすくなります。
睡眠時間を一気に増やせなくても、眠る前の過ごし方を変えることで、睡眠の質は整えやすくなります。
たとえば、次のような小さな工夫です。
・寝る30分前はスマホを見る時間を減らす
・夜遅いカフェインを控える
・夕食は脂っこいものを控えめにする
・お風呂はぬるめで体をゆるめる
・寝る前に仕事や家事の段取りを考えすぎない
・部屋を暗めにして、体に「夜」を知らせる
完璧にできなくても大丈夫です。まずは、眠る前の10分だけでも体を休む方向に向けることが大切です。
中医学で考える睡眠の質
中医学では、睡眠は「気血を養う時間」と考えます。
日中、私たちは仕事、家事、育児、人間関係、考え事によって気や血を消耗します。夜にしっかり眠ることで、その消耗を回復し、心身のバランスを整えていきます。
睡眠不足が続くと、気血が十分に補われず、疲れやすい、イライラしやすい、集中できない、甘いものが欲しい、むくみやすい、痩せにくいといった状態につながりやすくなります。
中医学では、眠りには主に「心」「肝」「腎」が関わると考えます。
心は、精神活動や眠りの安定に関わります。考え事が止まらない、不安で眠れない、夢が多い方は、心の疲れが関係していることがあります。
肝は、ストレスや自律的な調整に関わります。イライラしやすい、夜になると頭がさえる、目が疲れる、肩や首がこわばる方は、肝の負担が関係していることがあります。
腎は、年齢や生命力の土台に関わると考えます。40代以降、眠りが浅くなった、夜中に目が覚める、疲れが抜けにくいという方は、腎の弱りという見方をすることがあります。
同じ「眠れない」でも、原因は一つではありません。だからこそ、自分の眠りのタイプを知ることが大切です。
40代の働く女性に多い眠りのタイプ
1. 頭が休まらないタイプ
寝る直前まで仕事や家事のことを考えている。布団に入っても明日の予定が気になる。スマホを見ているうちに眠る時間が遅くなる。
このタイプは、体は疲れているのに、脳だけが働き続けている状態です。ストレスや情報の入れすぎで眠りが浅くなりやすく、夜の間食にもつながりやすくなります。
まずは、寝る前に情報を減らすことが大切です。スマホを完全にやめられなくても、画面を見る時間を10分短くするだけでも始められます。
2. 疲れすぎて眠りが浅いタイプ
一日中動き続けているのに、夜になると深く眠れない。朝起きても疲れが残っている。休日に寝だめしても回復しない。
このタイプは、体の消耗が強く、眠る力そのものが落ちていることがあります。夜に無理をして運動したり、遅い時間まで家事を詰め込んだりすると、さらに回復が追いつきにくくなります。
まずは、夜の予定を一つ減らすことから考えてみましょう。完璧な家事より、翌日の自分の体を守ることも大切です。
3. 夜遅く食べて眠りが重くなるタイプ
朝は忙しくて食べられず、昼は簡単に済ませ、夜にしっかり食べる。子どもが寝たあとにお菓子やお酒で一息つく。
このタイプは、胃腸が休まらず、眠りが浅くなりやすい状態です。寝る直前の重い食事や飲酒は、寝つきをよく感じさせることがあっても、睡眠の質を下げることがあります。
夜に食べすぎてしまう方は、夕方にたんぱく質を含む軽い補食を入れる、夕食の主菜を先に食べる、寝る前のお菓子を毎日から週数回にするなど、無理のない調整がおすすめです。
短い睡眠でも質を上げるために今日からできること
睡眠時間を大きく増やせない方でも、睡眠の質を整えるためにできることはあります。
・朝、起きたら光を浴びる
・朝食か昼食にたんぱく質を入れる
・夕方以降のカフェインを控える
・寝る直前の重い食事を避ける
・寝る前のスマホ時間を少し減らす
・ぬるめのお風呂で体をゆるめる
・寝室を暗く、静かに、少し涼しくする
・休日の寝だめを極端にしすぎない
どれか一つで十分です。毎日完璧に整えようとすると、それ自体がストレスになります。
大切なのは、短い睡眠時間の中でも、体が回復しやすい条件を少しずつ増やすことです。
睡眠の質を整えることは、痩せやすい体づくりの土台
40代のダイエットでは、食事制限だけで体重を落とそうとすると、疲れやすくなったり、筋肉量が落ちたり、リバウンドしやすくなったりすることがあります。
睡眠の質を整えることは、直接的なダイエット方法に見えないかもしれません。しかし、睡眠が整うと、食欲が安定しやすくなり、夜の間食が減り、日中に動く力も戻りやすくなります。
つまり、睡眠は「痩せるために我慢する時間」ではなく、「痩せやすい体をつくるための回復時間」です。
くすりの厚生会では、忙しくて睡眠時間が短くなりがちな方にも、生活リズムや体質に合わせたダイエットの考え方をお伝えしています。
食事を減らしても痩せない、疲れているのに眠りが浅い、夜になると食欲が止まらない。そんな方は、まず睡眠の質から見直してみることも大切です。
まとめ
睡眠の質とは、ただ長く寝ることではなく、体と脳がきちんと回復できる眠りのことです。
深い睡眠中には、脳脊髄液の動きが活発になることが研究で観察されており、睡眠は脳のメンテナンスにも関わっている可能性があります。
40代の働く女性は、仕事、家事、育児によって睡眠時間が短くなりがちです。その状態が続くと、甘いものが欲しくなる、夜に食べすぎる、疲れて動けない、代謝が落ちやすいといった痩せにくさにつながることがあります。
だからこそ、睡眠を削って頑張るより、短い睡眠でも質を整える工夫が必要です。
寝る前のスマホを少し減らす。夜遅い食事を軽くする。朝に光を浴びる。たんぱく質を意識する。こうした小さな習慣が、痩せやすい体づくりの土台になります。
よく眠ることは、怠けることではありません。
睡眠は、脳を守り、体を整え、40代からのダイエットを支える大切な時間です。


