雑誌 プレジデント（PRESIDENT）に記事が載りました
◆はじめに
皆さんは毎晩、何時間の睡眠をとっていますか？ 理想は7時間 といわれますが、仕事や家事に追われ、なかなか十分な睡眠時間を確保できないのが現代社会の現実かもしれません。中には、「自分は5時間睡眠でも平気だ」「あの有名人も短時間睡眠者（ショートスリーパー）らしい」といった話を聞き、短時間睡眠で乗り切ろうとしている方もいるでしょう。
しかし、安易に睡眠時間を削るのは非常に危険です。睡眠時間が足りていない状態は 睡眠不足 であり、集中力の低下、免疫力の低下、生活習慣病のリスク増大など、さまざまな健康上の問題を引き起こします。では、 短時間睡眠者（ショートスリーパー） とは、一体どのような人たちを指すのでしょうか？
◆睡眠不足と「真の短時間睡眠者（ショートスリーパー）」の違い
一般的に、成人が健康を維持するために必要な睡眠時間は7～8時間ほどとされています。これに対し、 短時間睡眠者（ショートスリーパー） とは、生まれつき遺伝的要因などにより、 6時間未満の睡眠時間で日中の眠気や健康上の問題がまったく生じない 人々のことを指します。
重要なのは、 日中の眠気がない 、 健康上の問題がない という点です。例えば、「平日は5時間しか眠らないけれど、週末にまとめて寝だめしている」という方は、普段は慢性的な睡眠不足の状態にあると考えるべきです。真の短時間睡眠者（ショートスリーパー）は、週末に寝だめをする必要も感じず、毎日一貫して短い睡眠時間で活発に活動できます。この 真の短時間睡眠者 は、全人口のごく少数、 およそ1%未満 しかいないといわれています。
彼らは、睡眠の質、特に 深い睡眠（徐波睡眠） の効率が非常に高く、短い時間で脳と体を十分に休ませる能力に長けていると考えられています。最近の研究では、特定の遺伝子の変異がこの短時間睡眠の傾向に関わっていることが明らかになってきており、まさに体質、遺伝子レベルで決められた特性なのです。
◆あなたは「短時間睡眠者（ショートスリーパー）」か？見極めのポイント
「自分はショートスリーパーかもしれない」と思っている方も、まずは客観的に以下のポイントを確認してみてください。
・日中の眠気： 午前中や午後の早い時間に強い眠気を感じたり、会議中や運転中にうとうとしたりすることがありませんか？真の短時間睡眠者（ショートスリーパー）は、目覚めてから眠るまで、一日中一貫して高い覚醒度を維持できます。
・睡眠の質の自己評価： 睡眠時間が短くても、目覚めがスッキリしており、「よく眠った」という満足感がありますか？
・健康状態： 短い睡眠時間で何年も過ごしてきて、特に体調不良（風邪を引きやすい、血圧が高い、精神的な落ち込みなど）を感じていませんか？
・週末の睡眠時間： 平日と同じ睡眠時間で満足できますか？週末に普段より2時間以上長く眠ってしまう場合は、平日の睡眠不足を補っている証拠であり、短時間睡眠者（ショートスリーパー）ではありません。
もし一つでも当てはまる項目があるなら、それは 隠れた睡眠不足 のサインです。無理に睡眠時間を削り続けると、パフォーマンスの低下だけでなく、心臓病や糖尿病、うつ病などのリスクを高めることが科学的に証明されています。
◆結論：無理せず自分に必要な睡眠時間を確保する
短時間睡眠者（ショートスリーパー） は、努力してなれるものではなく、 生まれ持った特別な体質 です。もしあなたが前述の見極めポイントに当てはまらないのであれば、無理に睡眠時間を削ることは避けてください。大切なのは、誰かの真似をすることではなく、 あなた自身の体が必要としている睡眠時間を知り、それを確保する ことです。
もし、生活習慣を見直してもなお、日中の眠気が強い、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めるなどの症状がある場合は、睡眠障害の専門医に相談することをお勧めします。健康的な生活は、質の高い睡眠から始まります。自分に合った適切な睡眠時間を確保し、毎日を最高のコンディションで過ごしましょう。
雨晴クリニックでは、睡眠障害の検査・治療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。
