体の病気と不眠:それぞれの対処法
◆貧血と不眠症の意外な関係
「眠りが浅い」「寝つきが悪い」といった睡眠の悩みを抱えていませんか? その原因は、もしかしたら貧血にあるかもしれません。不眠症というとストレスや生活習慣が思い浮かびがちですが、実は貧血も深い関係があるのです。
◆貧血が睡眠の質を下げるメカニズム
貧血とは、血液中のヘモグロビンが不足し、体内の組織に十分な酸素が行き渡らなくなる状態です。ヘモグロビンは赤血球に含まれるタンパク質で、酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
貧血になると、脳や筋肉、内臓など全身が酸欠状態になります。この状態は、私たちの睡眠にさまざまな悪影響を及ぼします。
・脳の興奮と覚醒:脳が酸欠状態になると、体は「もっと酸素を!」と警告を発します。この警告が交感神経を刺激し、脳を興奮させてしまうため、なかなか寝つけなくなったり、夜中に何度も目が覚めたりする原因になります。
・レストレスレッグス症候群(RLS):貧血、特に鉄欠乏性貧血は、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)と強く関連しています。この症候群は、じっとしていると脚に不快感やむずむず感が生じ、脚を動かさずにはいられないという症状を特徴とします。夜間に症状が悪化することが多いため、深い眠りを妨げ、睡眠の質を著しく低下させます。
・慢性的な疲労感:貧血は常に体がだるく、疲れやすい状態を引き起こします。この疲労感は睡眠不足によるものと混同されがちですが、貧血が原因の場合、いくら眠っても疲れが取れません。
◆貧血のサイン、見逃していませんか?
自分が貧血かどうかは、血液検査をしないと正確にはわかりません。しかし、日常生活の中で貧血の兆候に気づくことはできます。
・顔色が青白い
・立ちくらみやめまいが多い
・息切れしやすい
・疲れやすい、体がだるい
・手足が冷えやすい
・爪が反ったり、割れやすかったりする
・髪の毛が抜けやすい
これらの症状に心当たりがある人は、一度貧血を疑ってみるべきかもしれません。特に女性は月経やダイエットの影響で、貧血になりやすい傾向があります。
◆貧血を改善して、ぐっすり眠るために
もし貧血の可能性があるなら、まずはかかりつけ医に相談して血液検査を受けましょう。貧血と診断された場合は、原因に応じた適切な治療が必要です。自己判断で市販の鉄剤を服用する人もいますが、過剰摂取は体に悪影響を及ぼす可能性があります。必ず医師の指導のもとで治療を進めてください。
日常生活でできる貧血対策は以下の通りです。
・鉄分を多く含む食品を摂取する:赤身の肉や魚介類(特にカツオ、マグロ)、レバー、ほうれん草、小松菜、ひじき、大豆製品などを積極的に摂りましょう。
・鉄分の吸収を助ける栄養素を摂る:ビタミンCは鉄分の吸収を促進します。柑橘類やイチゴ、パプリカなどと一緒に摂ると効果的です。
・鉄分の吸収を妨げる食品を避ける:コーヒーや紅茶に含まれるタンニンは鉄分の吸収を妨げます。食事中や食後すぐに飲むのは避け、時間を空けるようにしましょう。
食事だけで十分な鉄分を補うのが難しい場合は、サプリメントの活用も有効ですが、こちらも医師や薬剤師に相談して、適切な量を摂るようにしてください。
◆睡眠の専門家からのメッセージ
睡眠の悩みは人それぞれですが、その原因はひとつではありません。ストレスや生活習慣だけでなく、体の状態、特に貧血のような隠れた病気が影響していることも多いのです。
「眠れないのは仕方ない」と諦めずに、まずはご自身の体を見つめ直してみてください。貧血が改善されれば、睡眠の質が向上し、日中のパフォーマンスもきっと高まります。もし、貧血の疑いや睡眠に関するお悩みがあれば、専門家への相談を検討してください。健康的な体と良質な睡眠は、充実した毎日を送るための大切な土台です。
雨晴クリニックでは、貧血による不眠症の検査・治療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。




