体の病気と不眠：それぞれの対処法
夜中に何度も目が覚めてしまう。寝つきが悪く、ベッドに入ってもなかなか眠れない。そんな不眠の悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。不眠の原因はストレスや生活習慣の乱れなどさまざまですが、もしかすると、今飲んでいる薬が原因かもしれません。
私たちが処方される多くの薬は、病気の症状を和らげたり、体を治療したりするために役立ちます。しかし、薬には主作用だけでなく、眠気や吐き気、めまいなど、さまざまな副作用が起こる可能性があります。その中には、不眠症を引き起こすものも少なくありません。
◆どんな薬が不眠症を引き起こすの？
不眠を引き起こす可能性のある薬は多岐にわたります。いくつか代表的なものを挙げてみましょう。
・ 喘息やアレルギーの薬
喘息の治療薬としてよく使われる気管支拡張薬には、交感神経を刺激する作用があります。この作用は、気道を広げて呼吸を楽にする一方で、心拍数を上げたり、興奮作用をもたらしたりするため、眠りを妨げてしまうことがあります。
・血圧の薬
高血圧の治療に使われる降圧剤の一部も、不眠の原因となることがあります。特に、ベータ遮断薬は、心臓の働きを抑える一方で、中枢神経系に作用して不眠や悪夢を引き起こすことがあります。また、利尿薬は、夜間のトイレの回数を増やしてしまうため、睡眠を中断させる原因となります。
・精神疾患の薬
抗うつ薬や抗精神病薬の一部は、副作用として不眠を引き起こすことがあります。特に、新しいタイプの抗うつ薬（SSRIなど）は、覚醒作用を持つため、服用初期に不眠を訴える患者さんもいます。
風邪薬・痛み止め
市販の風邪薬や痛み止めにも注意が必要です。一部の薬にはカフェインやエフェドリンなど、交感神経を刺激する成分が含まれていることがあります。これらは、日中の眠気を抑える効果がある一方で、夜間に服用すると眠りを妨げてしまう可能性があります。
その他
その他にも、甲状腺ホルモン剤や抗がん剤、ステロイド、漢方薬の一部なども不眠を引き起こすことが知られています。また、アルコールやニコチンも睡眠の質を大きく低下させる要因となります。
◆薬剤性不眠症かも？ と思ったら
もし、薬を飲み始めてから不眠の症状が出てきた場合、まずは薬剤性不眠症を疑ってみることが大切です。そのときは、処方してくれた医師や薬剤師に相談しましょう。専門家は、あなたの不眠の症状と服用中の薬の関係を詳しく評価してくれます。薬の種類や服用時間、量を変更したり、別の薬に切り替えたりすることで、不眠の症状が改善することが多くあります。
また、不眠症の専門家である睡眠専門医に相談することも有効です。睡眠専門医は、不眠の原因を多角的に分析し、薬による治療だけでなく、生活習慣の改善や睡眠環境の整備など、あなたに合った包括的な治療プランを提案してくれます。
◆質の良い睡眠を取り戻すために
薬剤性不眠症の治療と並行して、日々の生活でできることもあります。
・薬の服用時間を工夫する：薬によっては、服用時間を朝や昼に変更することで、夜間の不眠を防げることがあります。医師や薬剤師に相談してみましょう。
・規則正しい生活を送る：毎日同じ時刻に眠って、同じ時刻に起きる規則正しい生活は、体内時計を整え、質の良い睡眠を促します。
・眠る前のリラックスタイムを作る：ぬるめのお風呂に入ったり、リラックス効果のある音楽を聴いたり、読書をしたりなど、自分なりのリラックス方法を見つけましょう。
眠る前のカフェイン・アルコールを控える：夜遅い時刻のカフェインやアルコールは、睡眠の質を著しく低下させます。
不眠は、日中の集中力低下や倦怠感など、日常生活に大きな影響を及ぼします。しかし、原因がはっきりすれば、適切な対策をとれます。一人で悩まず、まずは専門家に相談してください。質の良い睡眠を取り戻すことで、日々の生活をより豊かにしていきましょう。
雨晴クリニックでは、薬剤性不眠症の診療を行っています。どうぞお気軽にご相談ください。
