弁護士の登録番号・所属弁護士会の調べ方|懲戒歴は確認できるか
裁判所の名前が入った封筒が届くと、多くの方が中身を読む前に手が止まります。心当たりがある場合でも、まったく身に覚えがない場合でも、動揺したまま何かを決めてしまうと、あとから戻しにくい状態になることがあります。
ここでお伝えしたいのは、「すぐに正しい反論を組み立てる方法」ではありません。弁護士に相談するまでの数日間に、しなくてよいこと・しないほうがよいことを整理しておくだけで、その後に選べる手段はかなり変わります。分野を問わず共通する範囲でまとめました。
最初に確かめるのは「中身の当否」ではなく「種類と期限」
届いた書類を前にすると、「この請求は正しいのか」「自分に落ち度があったのか」という点にまず意識が向きます。ただ、その判断は資料をそろえたうえで行うもので、届いた当日に結論を出す必要はありません。
先に確かめておきたいのは、次の3点です。
- どの裁判所の、どの手続の書類か(封筒と表題、事件番号・事件名)
- いつ受け取ったか(郵便職員から手渡された日)
- 何を、いつまでに提出するよう書かれているか
裁判所から訴状や支払督促などが送られるときは、「特別送達」という郵便が使われます(郵便法49条)。法務省の説明によれば、特別送達には、「特別送達」と記載された裁判所名入りの封書であること、郵便職員が名宛人に手渡すのが原則で郵便受けに投函されないこと、受け取る際に「郵便送達報告書」への署名または押印を求められること、裁判所が付した事件番号・事件名が記載されていることといった特徴があります。はがきや普通郵便、電子メールで送付されることはないとされています。
なお、受け取るときに署名や押印をしたことは、「書類を受け取った」という事実の記録であって、書かれている請求の内容を認めたことにはなりません。ここを誤解して、受け取り自体をためらう方が少なくありません。
いっぽう、相手方の弁護士名義の通知書や内容証明郵便は、裁判所から届く書類ではありません。手続の期限の考え方が変わるため、封筒の差出人が裁判所かどうかは、最初に確認しておくとよいところです。
裁判所から届く主な書類と、動いている期限
「裁判所から書類が届いた」といっても、手続は一つではありません。種類によって、意識すべき期限がまったく違います。
| 書類の種類 | どのような手続か | 意識しておきたい期限 |
|---|---|---|
| 訴状・口頭弁論期日呼出状・答弁書催告状 | 民事訴訟が起こされた状態 | 答弁書の提出期限(催告状に記載)と第1回期日 |
| 支払督促 | 簡易裁判所の書記官が、相手の言い分を聞かずに発する手続 | 送達を受けた日から2週間以内の督促異議の申立て |
| 少額訴訟の訴状・呼出状 | 60万円以下の金銭請求について、原則1回の期日で終える手続 | 通常の訴訟での審理を求めるのは、最初の期日で言い分を述べるまでの間 |
| 民事調停・家事調停の呼出状 | 裁判所での話し合いの手続 | 指定された期日(正当な事由のない不出頭には過料の定めがあります) |
| 労働審判手続期日呼出状・答弁書催告書 | 原則3回以内の期日で結論を出す手続 | 答弁書の提出期限(第1回期日の1〜2週間前に設定されることが多い) |
| 債権差押命令 | 判決などに基づく強制執行の手続 | 送達の日から1週間(給料などは原則4週間)で取立てが可能になります |
このうち支払督促は、債権者の申立てだけで発せられる仕組みです(民事訴訟法386条1項)。送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てれば、その支払督促は効力を失います(同法386条2項)。この期間内に異議がないと、債権者の申立てにより仮執行宣言が付され(同法391条1項)、これにも2週間以内の異議がないまま経過すると、確定判決と同一の効力を持つことになります(同法396条)。
労働審判は、申立ての日から40日以内に第1回期日を指定するのが原則とされており(労働審判規則13条)、答弁書の提出期限もその前に設定されます。準備できる時間が短い手続だという点は、押さえておきたいところです。
やってはいけないこと① 時間に関すること
開封しないまま置いておく
最も影響が大きいのがこれです。訴訟で答弁書を提出せず期日にも出頭しないと、相手の主張する事実を争わなかったものとして扱われ(民事訴訟法159条1項・3項)、相手の言い分どおりの判決が出ることがあります。請求に理由がない場合でも、こちらが何も述べなければ、その点は審理の対象になりません。
支払督促も同じ構造です。裁判所は、支払督促や少額訴訟の書類を送る段階では、その請求に理由があるかどうかを判断していません。法務省も、請求の当否は異議や答弁書を待って判断する仕組みであると説明しています。「身に覚えがないから放っておいてよい」とはなりにくいのは、このためです。
受け取りを避ける
不在にして受け取らない、受領を断るという対応を考える方もいます。しかし、送達には、就業場所への送達や、書留郵便に付する送達(民事訴訟法107条)、公示送達(同法110条)といった方法が用意されています。受け取らなかったことで手続が止まるとは限らず、こちらの言い分を出す機会だけが失われることになりかねません。
封筒や同封物を捨てる
封筒には消印が、書類には事件番号が記載されています。受け取った日は期限の起算点になるため、封筒も含めて一式を保管しておいてください。同封されている説明書や、支払督促異議申立書・答弁書の用紙も、あとで使う場面があります。書き損じたものも、そのまま残しておくほうが確認しやすくなります。
期日を無断で欠席する
仕事や家庭の事情で期日に行けないことはあります。その場合でも、無断で欠席するのではなく、記載されている裁判所書記官に連絡するという選択肢があります。訴訟では、期日の変更を申し立てられる場合がありますし(民事訴訟法93条3項)、最初の期日については、提出済みの答弁書に書いた内容を陳述したものとして扱う扱いもあります(同法158条)。ただし、これは最初の期日についての取扱いであり、その後も同じように考えることはできません。
調停については、呼出しを受けた関係人が正当な事由なく出頭しないときは、5万円以下の過料に処するとの定めがあります(民事調停法34条。家事調停については家事事件手続法258条1項が準用する51条3項)。労働審判にも同様の定めがあります(労働審判法31条)。
やってはいけないこと② 相手方や書面の連絡先への接触
相手方に直接電話して話をつけようとする
「誤解を解けば取り下げてもらえるのではないか」と考えて、原告や相手方本人に連絡する方がいます。しかし、この段階でのやり取りは、記録として残る前提で考えておいたほうが安全です。感情的な言葉、こちらの落ち度を認めるような言い回し、事実関係のあいまいな記憶に基づく説明は、後日、こちらの不利に働くことがあります。
相手方に弁護士がついている場合は、窓口はその弁護士になります。本人同士で結論を出そうとするより、まず自分の側の見通しを立てるほうが、結果的に早く落ち着くことが多いといえます。
一部でも支払う、「払います」と答える
その場を収めたい気持ちから、少額を入金したり、「分割でなら払います」と伝えたりすることがあります。ただ、こうした対応は、債務の承認として時効の更新の理由になり得ます(民法152条1項)。時効は、期間が過ぎれば自動的に消えるものではなく、当事者が援用して初めて効果が生じます(民法145条)。援用できたはずの場面で、承認と評価される行動を先に取ってしまうと、その主張が難しくなることがあります。
支払うべきものを支払うこと自体は、当然に問題のある行動ではありません。問題は、金額や支払義務の有無をまだ検討していない段階で、先に態度だけを決めてしまうことにあります。
書面に書かれた番号に電話する・振り込む
裁判所の手続を装った架空請求が続いています。法務省の説明では、本当の支払督促に金銭を振り込む預金口座が記載されることはなく、名目を問わず、裁判所から「お金を振り込むように」という連絡が来ることもないとされています。振込先の口座が書かれていれば、それは支払督促ではないという判断ができます。
発送元が本当の裁判所かどうかを確かめるときは、届いた書面に書かれた連絡先ではなく、別途調べた裁判所の番号に問い合わせるのが確実です。裁判所の所在地・電話番号は、裁判所のウェブサイトで公開されています。
やってはいけないこと③ 書面と記録の扱い
偽物だと決めつけて捨てる
架空請求への警戒は必要ですが、逆方向の誤りもあります。本物の支払督促や訴状を「詐欺だろう」と判断して捨ててしまうと、異議や答弁の機会を使わないまま手続が進むことがあります。前述した特別送達の特徴や事件番号を手がかりに、判断がつかないときは裁判所に確認するという順序をおすすめします。
内容を確かめないまま用紙を埋めて返送する
同封されている答弁書や督促異議申立書の用紙は、こちらの言い分を記録に残す書面です。早く済ませたいという気持ちから、内容を検討せずに認める趣旨の記載をして返送すると、その後で言い分を変えることが難しくなる場合があります。
反対に、事実関係と関係のない事情や感情的な記述だけを書いて提出しても、争点として扱われないことがあります。何を認め、何を争うのかという整理は、法的な判断を含む作業です。
異議を出して、それで終わりにする
支払督促に督促異議を申し立てると、手続は通常の訴訟に移行します。ここで注意したいのは、異議を出した後に何も主張せず、期日にも出頭しない場合、相手の主張どおりの判決がされることがあるという点です。法務省も同様の説明をしています。異議は入口であって、それ自体が結論ではありません。
記録を消す、作り直す、投稿する
やり取りのメッセージ、契約書、写真、入出金の記録は、自分に不利に見えるものも含めて、そのまま残しておいてください。都合の悪い部分だけを削除すると、残った記録の信用性にも影響します。日付をさかのぼって書面を作り直すことも避けてください。
また、事件の内容をSNSや口コミに書き込むことは、別の紛争を生むことがあります。相手方の目に触れる前提で考えておいたほうが無難です。
無視ではない、最小限の対応
「弁護士に相談するまで何もしないほうがよい」という意味ではありません。相談前でもできる、負担の小さい行動があります。
- 受け取った日、事件番号、裁判所名、担当部と書記官名を控える
- 提出期限と期日を、カレンダーに書き出して逆算する
- 封筒・書類・同封の用紙を一式そろえて保管する
- 出来事を日付順に並べたメモを作る(あいまいな点は「あいまい」と書く)
- 期日に出られない事情があるときは、記載されている書記官に連絡して取り扱いを確認する
- 相談の予約時に、書類の種類と期限を先に伝える
期限が近いほど、選べる手段は限られます。書類の種類と期限を伝えておけば、事務所の側でも相談日の調整をしやすくなります。
期限を過ぎてしまった場合に残る手段
期限を過ぎたからといって、そこで打ち切りになるとは限りません。手続の段階に応じて、次のような手段が残っている場合があります。
- 最初の支払督促に異議を出さなかった場合でも、仮執行宣言付支払督促の送達を受けた日から2週間以内であれば、督促異議の申立てができます
- 支払督促が確定した後でも、請求異議の訴え(民事執行法35条1項)とあわせて強制執行停止の申立てをする方法があります
- 債権差押命令が届いた場合、執行抗告の期間は1週間です(民事執行法10条2項)。給料などは原則として4分の3が差押えの対象外とされており(同法152条1項)、生活状況に応じて差押禁止債権の範囲変更を申し立てる制度もあります(同法153条)
- 少額訴訟の判決に不服がある場合は、判決またはその調書の送達を受けた日から2週間以内に、その簡易裁判所に異議を申し立てることができます
- 判決が出た後でも、支払方法について相手方と協議して解決に至る例はあります
いずれも期間が短く、手続の選び方によって結果が変わります。期限を過ぎてしまった場合こそ、自己流で動く前に相談したほうが、残っている手段を確認しやすくなります。
相談のときに持っていくもの
持ち物は多くありません。届いた書類一式を封筒ごと、関連する契約書ややり取りの記録、そして日付順のメモがあれば、初回の相談は進みます。資料がそろっていないことを理由に相談を先延ばしにすると、期限だけが進んでしまいます。
相談の場では、次の点を確認しておくと、その後の判断がしやすくなります。
- この書類で何が求められていて、いつまでに何をする必要があるか
- 争う余地があるか、あるとすればどの部分か
- 自分で対応する場合と依頼する場合で、何がどう変わるか
- 費用の見込みと、その内訳
まとめ
裁判所からの書類が届いたときにやってはいけないことを、あらためて整理します。
| やってしまいがちなこと | 起こり得ること |
|---|---|
| 開封せずに置いておく | 答弁や異議の機会を使わないまま手続が進むことがあります |
| 受け取りを避ける | 送達の方法が変わるだけで、手続は進むことがあります |
| 封筒や同封物を捨てる | 受領日や事件番号がわからなくなり、期限の確認が難しくなります |
| 相手方に直接連絡して話をつけようとする | やり取りの内容が記録として残り、後の主張に影響することがあります |
| 一部を支払う、支払うと答える | 債務の承認と評価され、時効の主張が難しくなることがあります |
| 書面記載の番号に電話する・振り込む | 架空請求だった場合、被害が広がるおそれがあります |
| 偽物と決めつけて捨てる | 本物であった場合、争う機会を失うことがあります |
| 内容を確かめずに用紙を返送する | 認めた内容を後から変えることが難しくなる場合があります |
| 異議を出しただけで放置する | 移行後の訴訟で、相手の主張どおりの判断がされることがあります |
| 記録を消す・作り直す | 残った記録の信用性にも影響することがあります |
届いた書類の種類と期限を確かめ、封筒ごと保管し、期限を逆算する。相談までにやっておくのは、この3つで足ります。そのうえで、争うのか、話し合いで解決するのか、支払う方向で条件を詰めるのかを、資料に基づいて決めていくことになります。
書類が届いた段階では、まだ選べる手段が残っていることが少なくありません。判断に迷う点があれば、期限が動いているうちにご相談ください。


