東京の不動産は、バブルなのか?
本日は、【大地震発生時のリスクと街の安全性から考える居住エリア】というテーマでお送りいたします。
『街の安全性』も住まい選びの選択肢に
この数十年の間に大規模な地震が発生しました。地震は場所や時間を予測することができず、建物の倒壊や人々の命を奪い慣れ親しんだ街を一瞬で破壊してしまいます。
大地震のような不測の事態に備えて予め準備しておくのはもちろんのことですが、居住エリアそのものが地震の影響を受けやすいのかどうか、大地震発生時に避難がしやすいかどうかなど、街の安全性も考えておかなければなりません。
ここ数年の東京23区の人口動向を見れば、2011年3月に発生した東日本大震災の影響を受けていることがわかります。
大地震発生が実際に起こってしまった2011年3月以降、人口動向や居住エリアにこれまでと違う変化がみられました。
まず10人に1人の外国人が住む新宿区では、2011年にこれまでの増加から一転して減少となりました。これは外国人の東京脱出が多かったためですが、2014年はほぼ震災前の水準に回復しました。
また東北地方に近い東京東部3区、足立区、葛飾区、江戸川区においては、震災前の人口にまだ戻っていません。このような人の動きを見れば、人々の住まい選びの1つの基準に街の安全性が含まれていることがよくわかります。
ここでは、大地震発生時に考えられるリスクや街の安全性など、居住エリアについて考えてみます。
あなたの街の安全性は?23区大地震発生時被害予測
大地震発生の場合、その被害状況は場所によって変わります。東京のように高層ビルが立ち並び、地下街が発達した都会と山々に囲まれた地方では、同じ規模の地震でも、建物被害や負傷者数、死亡者数には大きな違いが出ます。
東京都が発表した「首都直下地震等による東京の被害想定」調査によると、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が、冬の18時、毎秒8mの風速下で発生した場合の被害予測は次のようになっています。あなたの街の安全性を、ぜひ確認してみてください。
大地震発生時建物全壊率(23区平均値:6.1%)
1位 荒川区(18.7%)
2位 墨田区(17.1%)
3位 江東区(15.4%)
4位 台東区(14.9%)
5位 中央区(10.2%)
大地震発生時建物焼失率(23区平均値:10.7%)
1位 品川区(28.3%)
2位 大田区(22.3%)
3位 杉並区(18.7%)
4位 目黒区(17.4%)
5位 墨田区(16.1%)
大地震発生時死者発生密度(23区平均:15.1人/㎢)
1位 墨田区(48.4%)
2位 台東区(47.8%)
3位 荒川区(41.4%)
4位 品川区(34.3%)
5位 千代田区(23.5%)
荒川区、墨田区といった隅田川沿いで京浜東北線と荒川にはさまれたエリアは、大地震発生時建物全壊のリスクが高いと予測されています。逆に街の安全性が高いと思われるエリアは、23区の北西部にある板橋区や練馬区です。
大地震発生時に火事で建物が焼失する可能性が高い場所は、品川、大田の環七沿いです。この付近は木造建築物が多いエリアです。死者数についても建物被害と同様で、墨田区や台東区、荒川区、品川区が上位にランクインしています。
以上のデータから、大地震発生時には東京湾沿いや東京東部地域に大きな被害が出るリスクがあることがわかります。
「東京23区」特有の大地震被害について
東京23区のような大都市では、中心部に近いエリアは近代化された高層ビルが立ち並び、地下鉄や地下街も網の目のように発達しています。このように建造物や交通インフラが過度に集中した場所では、一度大地震が発生すれば、都市機能はマヒし郊外の住宅地や地方では起こりえない被害も多く発生します。
まず23区、特に中央区、千代田区、港区では6階以上の住居に住む人たちの割合が4割以上と非常に高くなっています (23区平均は15%)。
高層マンションが受ける被害には、停電や断水があります。23区内では、停電復旧に約1週間、水道復旧には1カ月以上かかると試算されています。エレベーターや水洗トイレが使えなくなり、自宅に戻ることができなくなります。
そして東京湾沿いの海抜0メートルエリアでは、東京で大地震発生時には津波が発生し、水没や冠水の被害が広範囲にわたって出るリスクがあります。「江東デルタ」と称される0メートルエリア地域は、墨田区、江東区の全域および江戸川区の一部ですが、このエリアでは2~4メートル水没すると予測されています。
港区、品川区、大田区、川崎、横浜に続く京浜運河一体でも1~2メートル水没すると予測されています。
これらの地域は、化学プラントが密集しており石油備蓄タンクや高圧ガスタンクもたくさんあるため、大地震発生時に1カ所でも火災が出ればまたたく間に広がり多数の死傷者が出ると想定されています。
街の安全性を高める取り組み
23区では大地震発生や地震の揺れに伴う二次災害など甚大な被害が発生することが予測されていますが、それぞれの自治体では被害の拡大を可能な限り食い止めるべく、街の安全性を高める様々な対策や行動が取られています。
例えば葛飾区では、2006年度の震災被害想定では、建物焼失率が23区でワースト1、面積あたりの死者発生密度が3位だったのが、2012年度には、建物焼失率10位、死者発生密度13位と大幅に改善されています。
葛飾区の新小岩地区では、「新小岩北地区ゼロメートル市街地協議会」を結成し、大規模水害への対策検討勉強会を開催するなど、街の安全性を高めるだけでなく地域住民の防災意識向上を働きかける取り組みも行っています。
同協議会では防災学習アプリも開発し、これらの対応策や取り組みが評価され、総務消防庁主催の「第18回防災まちづくり大賞」で総務大臣賞を受賞しました。
【大地震発生時のリスクと街の安全性から考える居住エリア】についてご紹介しました。
不動産投資をご検討中であれば、「街の安全性はどうか」「街の安全性を高める取り組みが行われているかどうか」をご確認いただいたうえで物件選びをしていただければと思います。
今回のコラムは、ここまでです。最後までお付き合い頂きましてありがとうございます。次回のコラムもお楽しみに!
和不動産 仲宗根和徳
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