動悸、息切れ、胸が苦しい
手にはたくさんのツボがあります。最近手を洗うことが多いですが、嵐の手洗いソングで楽しく洗っている方も多いかもしれません。すりすり(手のひら側)、のびのび(手の甲側)、ごしごし(指先・爪の間)、にぎにぎ(指の間)、ねじねじ(親指を手のひらで)、くるくる(手首)とありますが、にぎにぎの時に少し力を入れたり、ねじねじの時に「合(ごう)谷(こく)」を押したり、くるくるの時に「神(しん)門(もん)」を押すと、ツボ刺激の効果もプラスされます。免疫力をあげるために「風(ふう)府(ふ)」「風(ふう)池(ち)」を押し、「豊(ほう)隆(りゅう)」刺激してください。正座(正座が難しかったら、椅子に座って片足ずつでも正座のようにして)をして少し上半身を左右に動かすと、胃経が走っているすねがマッサージされ、「豊隆」も刺激されます。そのあとすねがだるいところがあったらトントンと叩いてください。「神門」「風池」「豊隆」の組み合わせは不眠にいいので、ぐっすり眠って元気に過ごしましょう。
「風府」は首を軽く後ろに倒し、後頭部の髪の生え際の中央から後頭部に向かって撫で上げたとき、指が止まるところ。「風池」は「風府」と同じ高さで僧帽筋という太い筋肉の外側をわずかに離れたくぼみにあります。
下の文章は、少し難しいので、興味がございましたらお読みください。
むつごろう薬局は、江戸時代に日本で盛んに行なわれた古方漢方(こほうかんぽう)を行なっています。 古方とは、古い薬方という意味で、漢方の原典を勉強します。その1つの傷寒論の序文には、自分の一族の大半が建安元年から十年もたたないうちに傷寒にかかって死んだことに発憤して、古くからある医方、薬術を集成して傷寒論を作ったことが書いてあります。ここでいう傷寒は伝染性の流行病で、しかも重篤な疾患であったらしく、おそらくは腸チフスではなかったかと思われています。今の大変な時と重なりますね。
傷寒論では病を6つの病期に分けています。太陽病は疾病の初発の時期です。そして少陽病、陽明病と進みます。傷寒論の書き下し文ではなく返り点がついた漢字だけのテキストを久しぶりに開いてみました。「風池」「風府」というツボにマーカーがひいてあります。尺寸俱浮太陽受病也當一二日發以其脈上連風府故頭項痛腰脊強という条文と太陽病初桂枝湯反煩不解者先刺風池風府却與桂枝湯則愈という条文です。
太陽病にみられる頭痛とうなじの強ばりは太陽膀胱経に沿って現れます。太陽経はよつんばいになった時に日光がよくあたるところです。「風府」の府は集まるところを指し、風邪の侵入する位置にある経穴の意。「風府」は太陽膀胱経ではなく督脈のツボです。上の条文にも太陽経が風府と連なっていることが書いてありますが、奇経八脈考に足の太陽と督脈、陽維の会とあるそうで、膀胱経の流れをよくしてくれるようです。「風池」は甲乙経に足の少陽と陽維の会となっていて、少陽胆経のツボです。紫雲膏を創製した浅田宗伯は後人の追加として先刺風池風府の6字を削ることを提唱しているそうですが、風邪などの場合、先に後頭部や肩背を押したあと桂枝湯を与えると速やかに治ります。
そしてもう1文これには鍼というところのマーカーでした。太陽病頭痛至七日巳上自愈者以行其經盡故也若欲作再經者鍼足陽明使經不傳則愈。昔書いたメモには邪が太陽経から1日ずつ6経をめぐり7日に回復すると書いてあり、そのあとのメモがありませんが、足の陽明経に鍼をして伝えないようにすれば治るということでしょう。足の陽明経とは足の陽明胃経のことで、ツボが書いていないのですが、有名な「足三里」の主治には頭痛が載っていなく、「豊隆」の主治に頭痛があり、喘息・咳嗽もあります。「豊隆」は豊かに隆起した部分の経穴の意。また古代中国で雷神は豊隆と呼ばれ、頭がかすんで雲霧に覆われたかのような陰翳を消すため、雷雨後に空が晴れるように効果のある経穴ともいわれるそうです。
中国鍼灸学会は「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン」を作成しているそうです。鍼灸介入は、医学観察期、臨床治療期、回復期の3つの病期に分けて行うそうです。症状があるようでしたら、そちらを参考にしてください。