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鈴木寛彦

不妊で悩む女性の思いに応える漢方薬の薬剤師

鈴木寛彦(すずきひろひこ)

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コラム

月経前症候群(PMS)と不妊症薬草「柴胡」の話

2019年1月30日 公開 / 2019年2月15日更新

テーマ:妊活と不妊症(薬局の現場から)




皆さん、三島柴胡はご存じですか。
 漢方の世界では、高麗人参と同じくらい有名な薬草です。三島柴胡と言うだけあって静岡県の三島が本場の産地。只今では野生のものは殆どありません。その柴胡は、私にとって一番の思い出深い生薬なのです。なぜなら薬草栽培で初めて育てた生薬だからです。その当時を思い出してみました。





柴胡栽培

春の彼岸過ぎに蒔いた三島柴胡の種は、1ヶ月後に漸く2本の可愛らしい葉を出しました。5月になると気温も上がり、畑は芍薬、牡丹の花でにぎやかになります。野良仕事は専ら成長が遅い柴胡を助けるため雑草引きとなります。枯れてしまう柴胡が出てくるのもこの時期で、その原因は土の中にあります。雨が少ないこの時期、植物たちは水を求めるため根をのばします。そのため地上部の成長速度を緩め、地下での水の争奪戦に力を集中します。元来、根が短い柴胡の形勢は不利で、雑草に覆われてしまうと負け戦さになります。この畑の様子は「傷寒論」で言う少陽病期に似ています。病気の進行が表面上は(植物の地上部)微少に見えますが、実は体内(地下部)で進行している(少壮;さかん)ものが少陽病期です。(少陽病の「少」の意味は、微少、少壮の意味となります。)
柴胡は繊細な植物で、栽培に苦しみます。理由は根が小さい事で、いつも乾燥を怖がっているように見えます。柴胡が油を多く含むのは、この恐怖から身を守る爲であり、そしてこの精油が人の肝臓を含む胸隔内に溜った汚れた油を溶かし消化器官へ排出してくれるのです。少陽病期とは病邪との戦いの場所が胸郭内に移り、その結果、胸苦しさ、微熱、口苦、咽乾、めまいなどの症状が現れます。病邪の侵入を脇膈内まで許してしまった状況を立て直すため、油と共に病邪を速やかに腸管に流し、次の治療に繋げるのが柴胡の役割なのです。 
食養生に「身土不二」という言葉があります。その土地で採れた物を食べると健康になるという事ですが、まさに柴胡で有名な静岡では、柴胡剤で救われる方が多い気がします。また柴胡がよく育つ山々では、温かい海風と、富士山から吹き降ろされる冷たい風が交差します。柴胡が治す熱風邪の状態は、寒さ暑さが交互に来るような状態です。あたかも育った環境に影響されているような感じですね。この状態を専門的には「往来寒熱」と言います。





月経前症候群(PMS)と不妊症

Sさんは、お子さんを考えて2年になります。3年前の流産で精神的に大きなショックを受けてしまい、いつも鬱々してしまいがち。手の平がほてり、冷えのぼせがあり、疲れやすい。血圧は100、50と低血圧気味。小便は日に6回、大便は2−3日に1回。めまいがあり、唇は乾燥していました。冷たい物を欲しがり、肩の凝りがひどく腰が冷え、生理は28日周期で順調。甘いものを多く食べてしまう。温経湯を服用して1ヶ月、手の平のほてりが解消し、何もしないのに体重が1.5kg減りました。さらに1ヶ月でお腹が温まり皮膚がツルツルしてきました。体調が大変よくなってきた矢先、生理前に寒さを感じたと思ったら突然顔が熱くなり、ドキドキして汗が出てきたそうです。頭痛、肩こり、首筋のこりもひどい。Sさんは、流産後の神経症状が悪化してきたのだと不安になっていました。この症状は「往来寒熱」です。「柴胡」が主薬の柴胡桂枝湯に変更しました。その後すぐに症状は消え生理がきました。ご懐妊の報告を受けたのはその1ヶ月後でした。
                       ・・・・・・次回につづく

この記事を書いたプロ

鈴木寛彦

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