「私を見て、私を認めて」が強すぎる人 ―自己顕示欲の奥にある心―

平田えり

平田えり

テーマ:人間関係




職場や人間関係の中で、
「なぜ、この人はいつも自分の話ばかりするんだろう」
「人が褒められると、必ず否定する」
「誰かの失敗は大きく言うのに、自分の成果は必要以上にアピールする」
そんな人に出会ったことはありませんか?

こうした行動の背景には、いわゆる「自己顕示欲」が関係していることがあります。

でも私は、カウンセリングの視点から考えるとき、
「自己顕示欲が強い=性格が悪い」
とは考えません。

むしろ、その人の心の中にある

「私を見てほしい」
「私には価値があると思ってほしい」
「誰かに負けたくない」


という気持ちが、少し強く表に出ている状態なのではないかと思っています。

自己顕示欲は誰にでもある

そもそも、
「認められたい」
「評価されたい」
「自分の頑張りに気づいてほしい」
という気持ちは、決して特別なものではありません。
私たちは誰でも持っています。

仕事を頑張ったら、
「頑張ったね」
と言ってほしい。

誰かの役に立ったら、
「ありがとう」
と言ってもらえたら嬉しい。

これは、とても自然な感情です。

問題になるのは、
「自分の価値を感じるために、他人からの評価がどうしても必要になる」
という状態です。

「自分を上げる」だけでは足りなくなる

自己顕示欲が強くなってくると、
「私はこれだけ頑張った」
「私にはこんな実績がある」
「私のほうが仕事ができる」
と、自分をアピールするだけでは満足できなくなることがあります。

すると、
「○○さんは仕事ができない」
「私がやらないと何も進まない」
「○○さんのせいで大変だった」
と、誰かを下げることで、自分の価値を確認しようとすることがあります。

ここが人間関係を壊してしまうポイントです。

自分の価値を高めるために、誰かの価値を下げる必要はありません。

ところが本人の中では、
「相手が評価される=自分の評価が下がる」
という感覚になってしまうことがあります。

なぜ、そこまで認められたいのでしょう

自己顕示欲が強い人を見ると、
「ものすごく自信のある人」
に見えることがあります。

でも、実際には逆の場合があります。

自分自身で、
「私はこれでいい」
「私は私なりに頑張っている」
と思えない。

だから外から評価を補充し続けなければならないのです。

褒められている間は安心できます。

でも、別の人が評価されると不安になる。

誰かが自分より活躍すると焦る。

その不安を消すために、また自分をアピールする。

場合によっては、相手の欠点を探し始めます。

つまり、
自信があるから自分を大きく見せているのではなく、自信を保つために大きく見せ続けなければならない
ということもあるのです。

「承認欲求」と「自己顕示欲」は少し違う

「認めてもらいたい」という承認欲求そのものは、悪いものではありません。

誰かから認められることで、
「もう少し頑張ってみよう」
と思えることもあります。

ところが、
「私を見て」
「私を評価して」
「私が一番でなければ嫌」
という気持ちが強くなりすぎると、人間関係のバランスが崩れていきます。

会話をしていても、相手の話を聞くより自分の話。

誰かの成功を一緒に喜ぶより、
「でも私だって……」
と自分の話へ戻してしまう。

誰かに教えてもらうことを「負け」のように感じてしまう。

こうなると、本人も苦しくなっていきます。

職場では「仕事ができる人」に見えることもある

ここは少し注意が必要です。
自己顕示欲が強い人は、最初は非常に仕事熱心に見えることがあります。

積極的に仕事を引き受ける。
前に出る。
発言する。
成果をアピールする。
困っている人の仕事まで引き受ける。

そのため、
「あの人は仕事ができる」
と評価されることもあります。

ところが、
「私がやった」
「私が助けた」
「私がいなければできなかった」
という気持ちが強くなると、少しずつ周囲との関係が変わってきます。

人に仕事を任せられない。
人のやり方が気になる。
人の仕事に介入する。

そして最終的には、
「結局、私ばかり仕事をしている」
となってしまう。

以前のコラムでも触れましたが、
仕事は集まっているけれど、信頼は集まっていない。
そんな状態になることもあります。

「私ばかり仕事をしている」と愚痴る人ほど、人の仕事を奪っている?その心理と対処法

自己顕示欲の強い人に振り回されないために

相手を変えようとすると、とても疲れます。

ですから大切なのは、
「相手の承認欲求を、自分が満たす役割にならないこと」
です。

自慢話を全部聞かなくてもいい。
競争を仕掛けられても、競争しなくていい。

誰かの悪口を聞かされても、
「そうなんですね」
程度で止めていい。

特に、
「○○さんって仕事できないと思わない?」
と同意を求められたときには注意してください。

見ていないことに同意する必要はありません。

「私はその場を見ていないので分からないです」
で十分です。

悪口の証人にならないこと。
これは職場で自分を守るためにも、とても大切です。

本当に自信のある人は、人を下げなくてもいい

私は、人の本当の強さはここに表れると思っています。

自信のある人は、「あなたはすごいね」と言えます。

人に仕事を任せられます。

分からないことを「教えてください」と言えます。

失敗したら、「ごめんなさい」と言えます。

そして、「あの人がいてくれたからできた」と言えます。

なぜなら、誰かを認めても、自分の価値がなくなるわけではないと分かっているからです。
誰かを下げなくても、自分の価値は下がりません。

ここに、本当の自己肯定感があります。

もし「これ、私かもしれない」と思ったら

ここまで読んで、
「もしかすると私にもあるかもしれない」
と思った方もいるでしょう。

それは悪いことではありません。

むしろ、自分の心の動きに気づけたということです。

人が褒められたとき、モヤッとする。

評価されないと腹が立つ。

「私ばかり頑張っている」と思う。

誰かの欠点を話したくなる。

そんなとき、
「私は今、何が欲しいんだろう?」
と少し考えてみてください。

もしかすると、
「認めてほしい」
「頑張ったねと言ってほしい」
「私にも価値があると思いたい」
という気持ちが隠れているかもしれません。

だとしたら必要なのは、誰かを下げることではありません。
まず、自分自身が自分の頑張りを認めてあげることです。

「認めてほしい」の奥にある気持ちを見つける

人間関係の悩みでは、
「相手がおかしい」
「私が悪い」
という二択になってしまうことがあります。

でも、その間にはたくさんの感情があります。

寂しさ。
不安。
劣等感。
悔しさ。
認めてもらえなかった悲しさ。

自分でも言葉にできない気持ちが、攻撃や競争、自慢、嫉妬という形で表れていることもあります。

だからこそ私は、
行動だけを見るのではなく、その行動の奥にある気持ちを見ることを大切にしています。

そして同時に、相手の事情を理解することと、相手の言動を我慢し続けることは別です。

職場や家庭、人間関係の中で、
「なぜかこの人といると自信をなくす」
「いつも比較されて疲れる」
「悪口や競争に巻き込まれてしまう」
そんな状態が続いているなら、一人で整理しなくても大丈夫です。

相手を変える方法を探す前に、
自分がどこまで関わるのか。
どこから距離を取るのか。
何を受け取り、何を受け取らないのか。
一緒に整理していくことも、私の役割だと思っています。

「相手の問題」だと思っていたのに、自分が疲れていませんか?

自己顕示欲や承認欲求の強い人との関係では、知らないうちにこちらが疲れてしまうことがあります。
「また何か言われるかもしれない」
「私が悪いのかな」
「どうして私にだけこんな態度を取るんだろう」
「距離を取りたいけれど、職場だから離れられない」

そんなことを考え続けていると、本来なら仕事や家庭に使えるはずの心のエネルギーまで奪われてしまいます。

カウンセリングでは、相手を「悪い人」と決めつけたり、無理に相手を変えようとしたりすることだけが目的ではありません。

大切なのは、
なぜ自分はこんなに苦しくなっているのか。
相手との間で何が起きているのか。
どこまで受け入れ、どこから断っていいのか。
自分を守りながら、どう関わっていけばいいのか。
これらを一つずつ整理していくことです。

人間関係の悩みは、出来事そのものよりも、
「私の受け取り方がおかしいのかな」
「これくらい我慢するべきなのかな」
と、一人で考え続けることで苦しさが大きくなることがあります。

職場の人間関係、夫婦関係、家族関係、パートナーとの関係など、
「この人との関係に、なぜこんなに疲れてしまうんだろう」
と思ったときは、一度お話を聞かせてくださいね。

相手を変えることより先に、
あなた自身が振り回されないための方法を一緒に見つけていきましょう。

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平田えり
専門家

平田えり(カウンセラー)

NPO法人M-STEP

自身もステップファミリーやシングルマザー当事者であるカウンセラーが、「100日間カウンセリング」を実施。自信を持って自分の行動を選べる人になれるようサポートをします。不登校の悩みにも対応しています。

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