自分の思い通りにさせようとする人への対応のコツ
「私のこと、疑ってるの?」
夫婦や恋人、親子関係の中で、こんな言葉が出ることがあります。
疑われた側は「信じてもらえていない」と傷つき、疑った側は「ただ確認したかっただけなのに」と戸惑う。
実はここには、「疑うこと」と「否定すること」の混同があります。
この二つは似ているようで、心理的には少し違うものです。
「疑う」とは、まだ答えを決めていないこと
疑うとは、
「本当にそうなのかな?」
「私の理解で合っているのかな?」
「何か別の事情があるのでは?」
と、すぐに結論を出さずに確かめようとすることです。
つまり、本来の「疑う」には、まだ相手の話を受け入れる余地があります。
たとえば、
「昨日、私のことを無視していた?」
と尋ねることは、確認です。
そこで相手の説明を聞き、
「そうだったんだ。私は無視されたように感じてしまった」
と話せるのであれば、お互いの認識の違いについて話し合うことができます。
「否定する」とは、相手の答えを受け取らないこと
一方で否定とは、
「それは違う」
「そんなはずはない」
「あなたがおかしい」
「考えすぎだよ」
など、自分の中ですでに答えを決めてしまうことです。
たとえば、
「昨日、あなたに無視されたように感じて悲しかった」
と言われたとき、
「無視なんかしてないよ。考えすぎ」
と返してしまう。
本人に「無視する意図」がなかったことと、相手が「無視されたように感じた」ことは、実は両立します。
ところが、
「そんなことで悲しくなるなんておかしい」
となってしまうと、出来事についての認識だけではなく、相手の感情まで否定することになります。
「事実を疑うこと」と「感情を否定すること」は違う
ここは、人間関係においてとても大切なポイントです。
出来事については、お互いの記憶や認識が違うことがあります。
「私はそんなつもりではなかった」
「私はそうは言っていないと思う」
ということもあるでしょう。
だから、事実について確認することは必要です。
しかし、
「悲しかった」
「怖かった」
「寂しかった」
「傷ついた」
という感情は、その人の中で実際に起きたものです。
自分には理解できなくても、
「そんなふうに感じるはずがない」
と他人が決めることはできません。
事実には意見の違いがあっても、感情にはその人なりの理由がある。
この区別ができるだけでも、夫婦や親子のコミュニケーションは大きく変わります。
疑いが「否定」に変わってしまうとき
ただし、「私は疑っているだけだから」と言えば、何をしてもよいわけではありません。
「本当に?」
「嘘じゃない?」
「でも、おかしくない?」
「絶対何か隠しているでしょう?」
相手が説明しても、何度も何度も疑い続ける。
これは形式上は質問でも、相手からすると、
「あなたの言うことは信用しない」
というメッセージとして伝わってしまいます。
そのため、疑っている本人には「確認」のつもりでも、相手には「否定」として受け取られることがあります。
特に夫婦や恋人など距離の近い関係では、この積み重ねが、
「何を言っても信じてもらえない」
「説明しても無駄」
「もう話したくない」
という気持ちにつながることがあります。
「同意しない」と「受け入れない」も違う
人間関係では、相手の話を受け止めることを、
「相手の言うことに同意しなければならない」
と考えてしまうことがあります。
でも、同意と受容は違います。
たとえば、
「私は少し違う受け取り方をしている。でも、あなたにはそう感じられたんだね」
と言うことができます。
これは、
「あなたが正しい。私が間違っている」
という意味ではありません。
「私は私の考えを持ったまま、あなたの感じ方も尊重します」
という姿勢です。
人間関係では、どちらが正しいかを決めること以上に、この姿勢が大切になることがあります。
疑問を持つこと自体が、人間関係を壊すわけではありません。
大切なのは、その疑問をどう扱うかです。
大切なのは「疑わないこと」ではありません
人を疑ってしまうことはあります。
過去に裏切られた経験があれば、不安になることもあるでしょう。
相手の言動に矛盾を感じれば、「本当なのかな」と思うことも自然です。
だから、
「疑ってはいけない」
と自分を責める必要はありません。
大切なのは、
疑問を持ったとき、相手を否定せずに確認できるかどうか。
「私はこう感じたんだけど、あなたはどうだった?」
「私の受け取り方と違うかもしれないから、聞かせてほしい」
そんな言葉に変えるだけで、コミュニケーションは変わります。
疑うことと、否定することは同じではありません。
そして、
相手を理解することと、相手に同意することも同じではありません。
「私はそうは思わない。でも、あなたがそう感じたことは分かった」
お互いが違う人間だからこそ、この言葉を持てる関係が大切です。


