死別ステップファミリーだからこそ大切にしたいこと⑤
「好きな人」と「子どもを安心して任せられる人」は、同じとは限らない
先日、横浜市で、交際相手の2歳の男の子に暴行を加えたとして36歳の男性が逮捕され、男の子がその後亡くなるという、大変痛ましい事件が報じられました。
報道によれば、男性は男の子の頬を殴り、肩をつかんで起こし、体を揺さぶったことを認めているとされています。
交際相手の2歳長男の顔など殴った疑いで男逮捕
理由として語られているのが、
「部屋の壁をたたいたので注意した」
「寝たふりをしたので腹を立てた」
というものです。
2歳です。
まだ自分の感情を言葉で十分に説明することも、大人の要求通りに感情や行動をコントロールすることも難しい年齢です。
その幼い子どもが命を失ったことを思うと、子連れ再婚やステップファミリーを長く支援してきた一人として、言葉にならない思いがあります。
そして今回の事件から、どうしても伝えたいことがあります。
「あなたに優しい人」と「あなたの子どもにとって安全な人」は、必ずしも同じではありません。
恋人として好きになることと、「親になれること」は別です
子連れで恋愛をするとき、大人同士の関係だけを見てしまうことがあります。
「私を大切にしてくれる」
「子どものこともかわいいと言ってくれる」
「一緒に暮らそうと言ってくれた」
「自分が父親になると言ってくれた」
そう言われたら、これまで一人で子育てを頑張ってきた人ほど、うれしく感じることもあるでしょう。
「やっと家族になれるかもしれない」
そんな希望を抱くことも決して不自然ではありません。
しかし、恋人として魅力的な人であることと、子どもと安全に暮らせる大人であることは、まったく別の問題です。
子どもは泣きます。
言うことを聞かないこともあります。
何度注意しても同じことをします。
食事をこぼします。
夜中に起きます。
親の思い通りには動きません。
特に2歳前後は、大人の言うことを理解していても、その通りに自分をコントロールできるとは限りません。
そのとき相手がどうなるのか。
イライラするのか。
怒鳴るのか。
無視するのか。
力で従わせようとするのか。
それとも、
「まだ2歳だからね」
と受け止められるのか。
子連れ恋愛では、楽しいデートのときの姿以上に、思い通りにならないときの相手の姿を見ることが重要です。
「子ども好き」という言葉だけでは分からない
私は、子連れ恋愛や再婚を考えている方に、ぜひ見てほしいポイントがあります。
相手は、自分より弱い立場の人にどう接しているでしょうか。
店員さんへの態度。
高齢者への態度。
動物への接し方。
自分の意見に従わない人への態度。
そして何より、子どもが自分の思い通りにならなかったときの態度です。
普段どれほど優しくても、ストレスがかかった瞬間に人を威圧したり、物に当たったり、「言うことを聞かせる」ことに執着したりする人であれば、注意が必要です。
「怒ると怖いけれど普段は優しい」
これは安心材料にはなりません。
むしろ家庭生活では、「怒ったときに何をする人なのか」が非常に重要です。
子連れ恋愛では「同居を急がない」ことも子どもを守る方法
報道によると、今回の事件では、母親と子どもたちが男性宅に来てから非常に短い期間で事件が起きています。
もちろん、同居までの期間だけで事件の原因を説明することはできません。
しかし、子連れ恋愛を支援してきた立場から言えば、
新しいパートナーとの同居は、慎重すぎるくらいでいい
と私は考えています。
大人にとっては大好きな恋人でも、子どもにとっては「突然生活の中に入ってきた知らない大人」です。
さらに同居すると、大人同士にも現実が押し寄せます。
生活習慣の違い。
お金の問題。
家事。
仕事。
子どもの騒音。
しつけ。
嫉妬。
実親と継親の役割。
恋愛中には見えなかったものが、一気に表面化します。
だからこそ、
「好きだから一緒に暮らす」
だけではなく、「この人と子どもが同じ家で生活して、本当に安全だろうか」
という視点が必要なのです。
最初から「親」にならなくていい
ステップファミリーでは、新しいパートナーが張り切って「父親になろう」「母親になろう」とすることがあります。
しかし私は、最初から親になろうとしなくていいと思っています。
むしろ最初に必要なのは、
子どもにとって安心できる大人になること。
しつけや教育を急いで担う必要はありません。
特に関係ができていない段階で継親や交際相手が強く叱ったり、子どもをコントロールしようとしたりすると、双方のストレスが高まることがあります。
実親と同じ権限があるわけでも、子どもから実親と同じ信頼を得ているわけでもありません。
家族になるには時間が必要なのです。
そして、母親だけを責めて終わらせないでほしい
このような事件が起きると、
「なぜそんな男と付き合ったのか」
「なぜ子どもを置いて外出したのか」
「母親なら分かったはずだ」
という声が必ず出てきます。
もちろん、子どもの安全を守る責任について考えることは必要です。
しかし、事件の詳細がすべて明らかになっていない段階で母親を一方的に責めても、次の子どもを救うことにはつながりません。
考えるべきなのは、
どうすれば、同じことを繰り返さない社会にできるのか。
ということです。
子連れ恋愛をする親が、交際や再婚について安心して相談できる場所はあるでしょうか。
「この人と一緒に暮らして大丈夫かな」
そんな段階で相談できるでしょうか。
多くの場合、問題が深刻になってから初めて支援につながります。
でも本当は、そのもっと前から支援が必要なのです。
子連れ恋愛には「大人の幸せ」と「子どもの安全」の両方が必要
私は、子どもがいる人が恋愛することを否定したくありません。
離婚や死別を経験しても、誰かを好きになっていい。
もう一度幸せになりたいと思っていい。
新しい家庭を築きたいと思っていい。
ただし、その恋愛の中に子どもが入るとき、忘れてはいけないことがあります。
子どもは、その相手を自分で選んだわけではありません。
大人は恋人を選べます。
嫌なら別れることもできます。
しかし幼い子どもは、自分の生活環境を選ぶことができません。
だからこそ大人には、
「私はこの人が好きか」
だけではなく、
「この人のそばで、私の子どもは安心して子どもでいられるか」
を何度でも問い直してほしいのです。
泣いてもいい。
失敗してもいい。
言うことを聞けない日があってもいい。
甘えてもいい。
そんな当たり前の子どもらしさを受け止められる家庭であること。
それが、再婚よりも、家族という形をつくることよりも、先に守られなければならないものだと私は思います。
今回亡くなった2歳のお子さんのご冥福を、心よりお祈りいたします。
そして、この痛ましい出来事を「ひどい事件だった」で終わらせず、子連れ恋愛や再婚を考えているすべての大人が、子どもの安全について立ち止まって考えるきっかけになることを願っています。
恋愛を急がなくていい。
再婚を急がなくていい。
家族になることを急がなくていい。
子どもと新しいパートナーとの関係は、時間をかけて育てていいのです。
子どもの命と安心より、急がなければならない恋愛はありません。
――
NPO法人M-STEP
理事長・カウンセラー
ひらたえり


